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第二十五話 元最強戦士と青春ドラマ

「てめえら、俺のことを囮に使いやがったのか! ふざけやがって!」

「それはちがうわジェラード君、先生達の話を聞いて」

「うるせえっ! ちきしょう、てめえら大人はいつもそうだ! 自分達のやることは全て正しいと思い込んでやがる身勝手な奴ばかりだ!」


 声を荒げ怒りを露わにするカイルを、ミランダは宥めようとするが聞く耳をもたない。

 そんなカイルのことを、ジェイクは険しい表情で見ていた。


「てめえらは全員クズだ……」

「ああ、そうだな。それは否定しない」

「開き直りかよ」


 不満そうに舌打ちするカイルのもとへ、ジェイクは無言のまま近寄って行く。

 その圧力にカイルが身構えようとした瞬間、ジェイクはカイルの顔面を殴り飛ばした。


「ロ、ローレンスさん! 暴力は」

「うるせえ、女は引っ込んでろ。ここからは男同士の話だ」


 ミランダは一瞬、ムっとするも。今ここでジェンダー論で口論しても意味がないし、ジェイクが冷静に見えたので、事の成り行きを見守ることにした。


 引き下がったミランダを見てジェイクは、カイルに向き直ると続ける。


「どうした? やり返してこないのか腰抜け」


 殴られた頬をおさえながら地面に座り込み不貞腐れるカイル。


「おいおい、嫌いな大人にやりたいようにやられても、まだダンマリを決め込むのかよ?」

「てめえにやり返したところでなにが変るってんだよ」

「ほぉ、なにかを変えたいのか?」


 カイルは答えない。俯いたまま黙り込んでしまった。

 ジェイクは呆れ顔で大きく溜息を吐くと、言って聞かせるように話し始めた。


「まあ、お前の言う通り。結果、囮みたいになっちまったのは事実だ」

「結果だと?」

「ああそうだ。おまえの携帯に、追跡アプリを仕込んだのが誰だかわかるか?」

「あぁ? どうせエリックを捕まえる為に警察と結託してやったんだろ」

「半分正解だが、半分外れだ」


 もったいぶるジェイクにカイルは苛立ち始める。


「この話を持ちかえてきたのは警察の方なのは事実だ。マフィアのガキが再びてめえとコンタクトを取る可能性があったからな」

「やっぱりてめえら大人は、自分の都合で子供を犠牲にしてもなんとも思わないんだな」


 その言葉にミランダが表情を曇らせる。

 しかしジェイクは鼻で笑って答えた。


「おまえはそんな大人をクズだと言ったな」

「ああそうだ、てめえらは皆クズだ」

「だとしたら、おまえもクズだよ」

「ああっ!? 囮に使われたのは俺だぞ!」


 ジェイクはカイルの眼前でしゃがみ同じ目線の高さになる。

 そして、真剣な眼差しでカイルの目を見据えた。


「おまえは、大人たちは身勝手で自分の事しか考えていないと言ったな?」

「ああ、その通りだろうが」

「だったらおまえのその言い分、考え方は身勝手なものじゃないって言えるのか?」


 ジェイクの問いに答えることができず、カイルは視線を逸らす。


「警察の提案を持ちかけられて、それを承諾したのはおまえの親父だ」

「ほらな、それと引き換えに今回のことはなかったことにしようとしたんだろ」

「おまえは本当に物事を一方的な面からしか見ることができないだな」

「さっきからてめえはなんなんだよっ! なにが言いたいんだよ!」


 ジェイクは再び立ち上がるとカイルを見下ろして言い放つ。


「物事には色んな見方があるってことだよ。それこそ今回みたいな場合はそれが顕著に現れる。警察の思惑とおまえの親父の思惑、俺やミランダ、ラルフの野郎の思惑もある、そして、おまえのもな」


 ジェイクの回りくどい言い方に、カイルは苛立ちを抑えながら黙って聞いていた。


「警察署の前でおまえの親父さんと会ったよな。おまえが行っちまった後、全部おまえの親父さんが話してくれた。そして最後にこう言った。警察は犯人を捕まえることしか考えていない、だから勇者マッコイにお願いしたい、息子のことを守ってくれ。と」


 ジェイクの言葉に顔を上げ唖然とするカイル。

 まさかあの父親が、自分のことを守ってくれと言うなんて思ってもいなかったのだろう。


「だったら……だったらなんで、直接俺にそう言わないんだよ」

「父親には父親の面子ってもんがあるんだよ。息子の前で頭を下げるとこなんか見せたくなかったんだろう」

「ふざけやがって、やっぱりてめえの面子が大事なんじゃねえか」

「ああそうだ。そう言う意味ではおまえの親父は身勝手かもしれないな」


 ジェイクは笑いながら言った。


「おまえは大人と言う生き物に完璧さを求めすぎてるんだよ。大人なんてな、歳を重ねただけの、おまえらガキとなにも変わらねえんだ。でもな、おまえらと違って怒って泣いて我儘を言っても誰も助けちゃくれねえ。それが通用するのはガキの間だけだ。大人なんてもんになっても、碌なことなんかねえんだぜ?」

「じゃあ……じゃあ俺はどうすればいいんだよ。もうわけがわからねえんだよっ! なにもできない! なにも変えられない! ムシャクシャするだけで、なにも出来ねえんだよ俺はっ!」


 ジェイクは、涙を流しながらそう言うカイルの胸倉を掴んで立ち上がらせた。


「そういう時は昔っからな……こうやるんだよっ!」


 そしてまたカイルのことを殴り飛ばす。


「かかってこいガキっ! 痛えだろ! ムカつくだろ! やり返せ! ムシャクシャする気持ちにいちいち理由を探すんじゃねえ!」


 煽ってくるジェイクに、カイルは立ち上げると大声で叫ぶ。


「くっそがああああああああっ!」


 殴りかかるが足を掛けられてカイルは地面を転がる。立ち上がれと煽られて、再びカイルはジェイクに殴りかかるがまた地面を転がる。その繰り返しだ。

 しかし、次第にジェイクの息が上がり始める。中年のおっさんと十代の若者、スタミナに差が出始めた。

 そして動きの鈍くなったジェイクの顔面に、遂にカイルの拳がヒットした。

 ジェイクは口元に笑みを浮かべると、やったなと言わんばかりにカイルを殴り返した。




 目の前で繰り広げられる殴り合いの喧嘩に呆れ果てていたのだが、いつしか笑みを浮かべてミランダは、それを見つめているのであった。


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