秋元編集長と真昼の雑談その1
時は平成。
動物も人のように話し仕事もするそんな時代である。
季節は、春。桜が散り出したある土曜日の話。
雑誌の編集作業をひと段落させて仕事場の近くにある喫茶店に狸と人間がいた。
自称「この世に一人の真の変人」である。何を考えているのかよくわからない狸の秋元都市伝説(名前)とヘタレでいつも秋元にこき使われているカメラマンの真昼博人は喫茶店でコーヒを飲んでいた。淹れたてのコーヒーは香りが立ち込める。
秋元編集長は、コーヒーを口に含み一息つくと向かいの席に座る真昼にある話題を振ってきた。
「ところで、真昼君。」
「何ですか、編集長」
猫舌の真昼はメニュー表を見ながら淹れたてのコーヒが少し冷めるのを待っていた。
「よく少女漫画なんかである物語の冒頭に主人公が寝坊して食パンを咥わえて走ってると道を曲がったときにイケメンとぶつかる場面ってあるじゃないかい」
「あー、ありますね。今はもう古典って感じがしますけどね」
「あれってさよくよく考えてみるとすごく怖いことにならないかい」
「なんでですか?」
「例えばだよ、イケメンを真昼君と過程しよう。真昼君は毎日同じところをきっと通学で通るよね」
「そうですね。通学通勤で毎回別なところを通るような人は普段いませんね」
「あれってさぁ。もし現実でかんがえたら主人公の少女にとっては思いもしない展開で驚きと同時にばったりイケメンと接点をもつことが出来るラッキーな展開だと思うよ。大体の場合はイケメンは自分好みの顔やスタイルって展開だよね。でも、仮に毎日君が通る道路に毎日同じ時間になるとパンを咥えて君にぶつかろうと走ってくる女子がいたらどう思う。毎日違う子がね」
「毎日違う子が来たらそれこそ少年漫画であるようなハーレムものみたいな展開だなと僕なら思ういますけどね。それこそ美少女たちと知り合えてラッキーだと思いますけど」
「そう思うのが普通だとは思うよ。でもさぁ、真昼君は毎日その角を曲がるたびに知らない女の子とぶつからないといけないんだよ。きっと10日間も耐えられなくなるよ。」
「どうしてですか」
「必ずだよ。しかも毎日必ず同じ時間に。きっとそこの角を通るたびに無意識にそこでは怪我をする可能性が高いって記憶してきっとその角が恐怖になるだろうねぇ。人間って不思議なもので原因がわからないと勝手に理由をつけたがる性質だからね。ポジティブに考えれば縁結びの角になる。そのうちその角は(イケメン)真昼君がネガティブに考えれば自分を狙う刺客が毎日襲ってくる負の角。今回は必ず怪我をする、ようはその時の心理状態に左右されるものだよ」
「はぁ・・」
「ようするにその主人公に対してイケメン真昼君はロールプレイングゲームにおける村人となり毎日新たに来る刺客の主人公にタックルを噛まされるモブとなるのさ」
秋元はコーヒーを啜った。
「よくわかりませんが、編集長が僕をモブ扱いしたいということはわかりました」
完