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楯無明人/地下迷宮区第八層~vsタイラント・レックス~①

 地下迷宮区の第八階層に足を踏み入れると『ティラノサウルス』に酷似した巨大な魔物が俺たちを待ち構えていた。



『ジガァアアアア!!』



 地を震わすほどの雄たけびを挙げたあいつの名称は『タイラント・レックス』。


 今まで地下迷宮区で相対してきた魔物の中でもとりわけ大きい。頭の先から尾の先まで、全長で三十メートルほどあるだろうか。


 加えて、全身に張り巡らされた堅そうな鱗と筋骨隆々な体躯。強敵であるのは間違いなかった。



「ここに来て肉食恐竜!? いやそれよりもアリシアは!?」


「あそこにいるっす!」


「死ぃねぇえええええッ!!!」



 アリシアは目にも止まらぬ速さでタイラント・レックスに接近し、すれ違い様に炎を纏った魔剣グラムで斬りかかった。


 見るからに硬そうな躰に、グラムの剣先がズブリとめり込んだ。



「殺してやる……お前をッ!! せぁああああっ!」



 アリシアが力任せに剣を薙ぎ払うと、鱗がバラバラに弾け飛び、黒い血液が噴き出した。


 それなりのダメージは入っているはずだが、タイラント・レックスは意に介していない。



「効いてない……? いや、あの恐竜、体力の量がヤバすぎるだろ」

 


 タイラント・レックスは今までのどの魔物よりも耐久力、即ち、HPが高い。その耐久力の高さたるや、あの黒龍グリヴァースをも超越している。


 親父が抜剣して言う。



「総員に告ぐ! アリシアを援護するぞ!!」


「「了解!!」」



 俺も幻影剣を出現させて戦線に加わり、炎剣を構えているアリシアの横に並んだ。



「おい落ち着け! 突出するな!」


「マモノ殺すッ! 殺さなければならないんだぁああああっ!!」


「アリシア!!」



 アリシアは尾の横払いや顎での噛み付き攻撃を躱しながらタイラント・レックスの両脚の間に飛び込み、切っ先を頭上の腹に向けて構えた。



「死ねぇッ!!!」



 剣の切っ先を上に向けたまま勢いよく飛び上がったアリシアの一撃が、タイラント・レックスの厚い腹の鱗を貫いた。



『ジガッ!?』


はらわたをぶちまけて朽ち果てろ!!」



 腹部は大事なもんが山ほど詰まってる生物の弱点のうちのひとつ。アリシアはそこを容赦なくグラムで切り刻み、そのまま背中まで突き破ってしまった。


 これには、さすがのタイラント・レックスもぐらりとぐらついて雄たけびをあげた。



「あいつ、つえぇー……」



 正気を失っていて型は雑だが、剣速は最速の剣技を誇るシズクさんにも匹敵し得るものだった。


 だが、周りがちっとも見えてない。あんなんじゃ、いつ反撃を受けてもおかしくない。



「死ねっ! 死ねッ! 私の全てを奪った魔物は!! 死ねぇッ!!」


「くそっ、一体アリシアに何が……」



 その直後、ダダダンッ! と後衛組の魔術と弓矢と弾丸がタイラント・レックスに直撃し、よろめいた。


 母さんが叫ぶように言う。



「アキト! アリスをお願い! あの子危なっかしいから!」


「分かってる! とっ捕まえて説教だな!」



 と言いつつも、親父を含めた前衛組は接近できずにいた。怒り状態のタイラント・レックスが鋭い突起の生えた尾を連続で高速に薙ぎ払って来るためである。


 親父が俺に言う。



「くっ、近づけないか……アキト、アリシアに何が起きているか【慧眼】で分かるか?」


「さっきからやってる。オリジナルスキルがアリシアの強い憎しみに反応して暴走してるみたいだ」


「あれが、アリシアのクロノスの力……【獣心覚醒】か。字の如く『獣』じゃないか、あれでは」



 俺は中距離用の幻影剣、桜花一刀『ススキニツキ』で牽制を行いながら、タイラント・レックスの背中にしがみ付いているアリシアに向かって叫ぶ。



「おいアリシア! 冷静になれ!! 憎しみに囚われるな!!」


「コロス! 殺すッ! 殺す! コロスッ!! 殺すっ!!!」



 アリシアは一心不乱にタイラント・レックスの背中に魔剣グラムを突き刺し続けている。


 ダメージはしっかり通っている。一撃一撃の攻撃力も凄まじく、このままアリシアだけでも討伐で来てしまうのではと錯覚する程だった。


 だが、『あの場所は良くない』――――直感でそう思った。


 そしてそのフラグは瞬く間に回収されてしまう。


 タイラント・レックスの背中ある鶏冠とさかの様な部位が硬質化してアリシアを取り囲む様にして襲い掛かったのだ。


 アリシアは攻撃に夢中でその反撃に気付いてすらいない。



「ちっ、世話の焼ける妹さまだ!!」



 俺は振われる尻尾の一瞬の合間を縫って、『高速化』の能力で一気にタイラントレックスの背中へと接近し、アリシアを突き飛ばした。


 が――――。


 ――ブチブチッ!!!


 アリスを助けた際に、硬質化した鶏冠の一部が俺の左脇腹を深々と抉り取り、大量の血が飛び散った。



「ぐはっ!?」


「「「アキト!?」」」



 俺は吹き飛びそうになる意識の中で腕に抱くアリシアの名を呼ぶ。



「アリシア!」


「――――はっ!? 私は一体なにを……」


「正気に、戻ったか? あんまり世話、焼かせるんじゃ……ねぇよ」


「えっ――――あっ、兄上……?」



 そのまま墜落するように乱暴に地面に叩きつけられた俺とアリシア。


 地面に仰向けに転がった俺にアリシアが駆け寄る。



「兄上! 兄上っ!! そんなっ……私のせいで……」


「アリシアっ……怪我、は?」


「わ、私は……ですが兄上が!!」


「アリスさん! そこをどいて下さい!」



 アリシアを横に押し退ける様にイリスさんが俺の横でしゃがんだ。



「アキトさん! お気を確かに! ただちに治癒致します!! この者を癒せ! テラセイヴァー!!」



 俺に呼びかけるイリスさんの美人な顔が歪んで見える。


 あぁ、これ結構まずいぞ……。


 脇腹に感じる痛みは即座に引いたものの、歪んで見える景色は変わらない。


 血を……流し過ぎたっ……ぽいな。



「アキトさん! アキトさん!! 目を閉じてはダメです!!」


「……っ……あぁそうだな……やっぱ……そうしよう」



 こんな時になんだよって感じだが……。


 俺は、薄れゆく意識の中で『桜花七刀』の能力を決めた。

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