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楯無明人/神の再訪~宿敵~

「サイナス!?」



 その姿を見て何人かの仲間が身構えたが、サイナスは降伏のポーズよろしく両手を挙げながら言った。



「落ち着きたまえ。今の俺は魔力を持たない。ヤーパンの少年に確認すればよかろう。どうかな?」



 俺は【慧眼】でサイナスを注意深く観察した。


 確かに魔力を少しも感じない。それどころか『スキル』を一つも覚えていない。



「どういうことだ? あの反則スキルはどこいった?」


「【デウス・エクス・マキナ】のことかな? あれは略奪者の洗脳あってこその力だ。今の俺は人の身体に擬態した力無き神に過ぎない」



 俺は身構えていた仲間たちに警戒を解く様に合図をし、サイナスに言う。



「その力無き神様が下界に来て何の用だ?」


「先ほども言っただろう? この世界の未来の為に話をしに来たのだよ」



 するとサイナスはいのいちにアリシアに視線を向けた。



「――――ほう、その娘が、未来よりの使者か……」



 俺はアリシアの前に立つ。



「俺の妹に手を出すつもりなら覚悟をして貰うぜ」


「覚悟、とな?」


「最弱にぼっこぼこにされる覚悟をだ。俺が手加減得意じゃねぇの知ってるだろ? 俺の仲間、家族に手を出したら許さない。絶対にだ」


「「…………」」



 俺とサイナスのにらめっこが始まった。


 で、そのにらめっこに負けたのはサイナスだった。



「ふっ、ふあっはっはは!! やはり貴様は面白いな、ヤーパンの少年よ。勘違いしないで貰いたい。俺はその未来よりの使者に手出しはしない。今回の件に関して意見を交わしたいだけだ」



 背後のアリシアが俺の服を引っ張った。



「兄上。あの人、嘘は言っていないと思います。うまく言えないのですが、邪気を感じませんから」


「……アリシアがそう言うなら」



 俺が矛を収めると、サイナスは親父と向かい合う様に椅子に腰かけた。



「シグルド・オーレリア。よもや貴様とこの様な場で対面するとはな」


「ふんっ、勝手に上がってきたのはそっちだろう。それで、話というのは?」


「その前に、この場にいる全員に聞きたいことがある」



 サイナスはぐるりと全員を見渡してこう言う。



「――地下迷宮区とはなんだ? 情報が欲しい」


「はぁ?」



 こいつなに言っちゃってんの? この世界を創ったのはお前とレミューリア様だろうが。


 俺が内心思った事を言葉にして聞いたのはリサさんだった。



「状況が読めないわ。グリヴァースはあなたとレミューリア様が創造した世界。あの地下迷宮区もあなたが創造したのではないの?」


「いいや、心当たりがない」



 アルトさんがそれに続く。



「長生きし過ぎてボケたんじゃねぇのか?」


「ふむ、確かにその可能性も……いやいや、それは無い」



 神様のノリ突っ込み頂きました。この神様もキャラ変ですか。


 サイナスは言う。



「貴様らとの最終決戦の折り見かけたあの鏡――八咫鏡やたのかがみの素材の入手場所として『地下迷宮区』と言っていたな。俺はその様な場所は知らぬ。が、あの鏡の素材として適しているのはメルタル希少鉱石。この時代には無い代物だ。察するに、地下迷宮区には過去の文明に存在していた魔物がいるのだと推察できる。違うかな?」


「……どうやら、ボケてはいねぇらしいな」



 アルトさんは親父に視線を送り、親父は頷いた。



「サイナス。貴様がここに来た目的は地下迷宮区の事を聞くため……つまり、今回の一件にはやはりあの場所が関係しているということだな?」


「俺はそう見ている。そして――その黒幕の正体にも既に目星がついている」


「っ!?」



 驚く俺たちを余所にアリシアが勢いよく立ち上がる。



「誰なのですか!? 私の平穏を奪ったのは! 言えっ! 私の殺すべき敵は誰だっ!!!!」



 フー、フーとまるで餓えた野生の狼の様に荒ぶるアリシア。その両頬には獣の髭にも見える『二本の線』が入っていた。


 初登場時の荒っぽさといい、こいつにとって黒幕であるそいつは最も憎むべき敵なんだよな。



「まぁまぁ落ち着けよ、アリシア。な?」



 俺の一言でフーフーと鼻息荒くしていたアリシアは正気を取り戻し、それと共に頬の線もふっと消えた。



「申し訳御座いません……兄上。私としたことが、取り乱してしまいました」


「良いって。あんまり怒ってると、その可愛い顔が台無しだぜ?」



 俺はアリシアの頭に手を添えて撫でた。



「兄上……」



 ご満悦なアリシアを横目に、とある二名の眼差しが痛い。


 こいつは妹だからそういうのじゃないっての――というニュアンスの眼差しを送ると二人は理解してくれた。


 やっぱ迂闊に女の子の頭なんて撫でるもんじゃねぇ。



「妹が済まなかった。話を戻そうぜ、サイナス。今回の一件の黒幕は誰なんだ?」


「ふふっ、率いる者としてだけではなく、兄としての器も持ち合わせるか。『光るものすべてが金とは限らない』。つくづく面白き男だ。生まれた場所、時代が異なれば、友になれたやもしれぬな」


「光るものうんたらってのはドイツのことわざで『人は見かけによらない』って意味だったか? 酷いな。そんな酷いことを言う奴は友達になってやらねぇよ」


「くっふふっ。さて、地下迷宮区の話を詳細に聞こう。黒幕の話はその後だ」



 俺たちが地下迷宮区について洗いざらい話し終えると、サイナスは腕を組んで考える素振りを見せた。



「ミノタウロスにクリスタルベアラー。好戦的なミミックに機械の巨兵(ウェポンガーディアン)か。なるほどな――レミィの読みは正しい様だ。おっと、そろそろ黒幕の話をしようか」



 サイナスは一呼吸置くと、ある人物の名前を出した。



「――ノアという名前に聞き覚えはあるかな?」

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