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企画「ひだまり童話館」参加作品

ダイニングテーブル

作者: 奈月ねこ

『ひだまり童話館』『開館4周年記念祭』『4の話』

「一郎、二郎、三郎、四郎! 整列!」


私の声に四人の男どもがバタバタと並ぶ。


「番号!」


「一!」

「二!」

「三!」

「よん!」


 私の四人の子どもたちだ。何故最初の子どもに「一郎」と名付けたのか……。そして二人目は「二郎」。もう三人目は「三郎」に決まっている。そして「四郎」。最初だから一を付けたかったのはわかる。でも二人目を二郎にすることはないと思う。

 二郎が産まれた時、夫と名前でもめたことがある。「二郎」はあまりにも安易ではないかと。でも夫も譲らなかった。二番目なんだから、「二」を付けたいと。私は出産で疲れて、夫の意見を受け入れてしまった。そして、そのあとは……何も言うまい。


 こんな話ではなかった。何故か産まれたのは男四人。ムサイ。しかしそこは自分の子。可愛いことに変わりはない。

 だが、この四人、兄弟だからか、似たり寄ったりのことをする。


 一郎は中学二年生。

「一郎、あなた国語の辞書を忘れたわね。しかも三回も! 担任から電話がかかってきたわよ!」

 二郎は小学六年生。

「二郎、あなた宿題をするのを忘れたわね。しかもそれを隠したわね!」

 三郎は小学三年生。

「三郎、あなた算数のドリルをやってなかったわね!」

 四郎は保育園。

「四郎、あなたはいつもきちんとお弁当を残さず食べて偉いわね」


 四郎の時だけはトーンダウンする私。


「四郎ばっかりずるい!」

「あなたたちは叱られることをしたでしょ! これからはきちんとすること! 以上、解散!」


 ばらばらと散っていく子どもたち。

 子どもは可愛い。可愛いが、手がかかる。どこの家でも苦労しているそうだが、とにかくうちの子どもたちは物忘れがひどい。だからいつもこうして全員一緒に叱るのだ。一緒でないと、不公平だと後から言われて、なおかつ嫌味を言われる。四人から言われると、私もさすがに凹む。


 でも、一郎はもう中学生。成長したなあ。と感慨にふける暇もなく、朝からお弁当作り。しかも食べ盛りの男四人。その量たるや、物凄いことになる。朝ごはんと昼ごはんのお弁当だけで疲れはて、自分のお弁当を……と思ったら、子どもたちに全て食べられてしまったあと。結局はコンビニで買っていくことになる。


 そして仕事中に電話がかかってきた。一郎からだった。


『お腹空いた』


 私は仕事中だ! という気持ちをこらえ、私は言った。


「おやつにお菓子を買ってあるでしょ」

『もう食べた』

「冷蔵庫に肉まんがあるでしょ」

『食べた』

「冷凍庫に焼おにぎりが……」

『食べた。冷凍庫のアイス食べてもいい?』

「それは私のだからダメ!」


 全く、男四人の食欲は年々増しているようだ。私がいない時用に色々準備はしているのだが、四人で食べると、あっという間のようだ。


 仕事、子育て。やっぱり疲れる。子供の成長は嬉しいし、優しい子供たちに癒されてもいる。だが、体は持たなかった。私は倒れてしまったのである。

 病院では過労だと言われた。病院に一泊すると、家へ帰ってもいいとのことなので、夫の車で家へ帰った。そんな私を出迎えてくれたのは、四人の子どもたち。


「お帰りなさい!」


 四人の言葉に嬉しさが心の中に広がる。

 そして家の中へ入ると、いい匂いがする。


「四人で作ってくれたんだよ」


 夫が言った。


 ダイニングのテーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。


「皆……」


 私の中で熱いものがこみ上げてきた。


「さあ、早く食べよう」


 夫の声とともに、席につく皆。うちは四角いテーブルの四人用。いつも夫が帰ってくるのが遅かったりと、家族全員で食卓を囲むことも少ない。けれど今日は違う。子どもたちが四人テーブルの席に座り、両方の誕生日席に夫と私が座る。子どもが多くても少なくても、この配置にはならない。子どもが四人ならではの光景かもしれない。そんな暖かな光景に、私は嬉しくなる。


「いただきます」


 皆で食べ始めた。


「お母さん、どう?美味しい?」


 聞いてきたのは四郎。


「とっても美味しいわ」


 私の言葉にほっとする皆。

 食事も終わって、片付けも終わった。

 そして私は皆を呼んだ。


「一郎、二郎、三郎、四郎、整列!」


 子どもたちはあたふたと一列に並んだ。


「番号!」


「一!」

「二!」

「三!」

「よん!」


 私は子どもたちの顔を見回した。


「ありがとう」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 「整列!」「解散!」 なところが、さすが男4人兄弟のお母さんって感じですね。 ていうか、ねこさんってこういう感じですよねw そうなのよ。 男の子はね、特に中学生くらいになると家にあるもの…
[良い点] 拝読しました。 確かに四人兄弟の母は想像を絶するほどの大変さが想像されますね。 私は弟がいますが、子どもの頃はよく喧嘩して家の中の物品を壊してましたし……。 そんなお母さんが倒れてしまっ…
[良い点] さすが男の子4人のお母さん。たくましいですね。 気力はあっても体力が追いつかなくもなりますよねぇ。 でもいい家族なので、子供たちも大きくなったら頼りになりそう!
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