5. アンタレス
恒星というのは、自分で燃焼し続け、光を放つ星のことだ。
と、星一君から教えてもらった。
あれ以来、星に興味があることを彼から告げられて、それで星の王子さまも気になったんだって言われて驚いた。
動物が好きで動物の図鑑を買うなら分かるけれども、動物が好きだから動物の出てくるお話を読んでみようとはあまり思わないだろう。
もしかしたら私が思っているだけで、猫が好きだから長靴を履いた猫を読んでみようとなった人も少なからずいるのかもしれない。
でも、彼は星が好きだから星に関することを全て知ろうとする人だった。
色々と星に関することを彼から教わった。
星がどうやって出来たか、この地球がどうやってできたのか。
太陽がどれくらいの間光り続けているのか。またそれがいつ寿命を迎えるのか。
何から何まで私の知らないことばかりで、聞いているだけでもわくわくした。元々、空に輝く星を見るのは好きだったから。
そこで私は、星座占いのことについて聞いてみた。
「私、さそり座なんだけれども星一君は何座なの?」
「僕は11月23日生まれだから、いて座だよ。」
「え、すごい!私11月22日生まれのさそり座!」
「一日違いだったのか、すごいな…」
これも何かの縁だぞ、と神様…いや、星が言ってくれたようだった。
「私のほうが年上だね。」
「一日違いだろ!」
そんな他愛も無い会話ばかりしていた。
星一君と幼馴染の白鳥君もたまに会話に入ってきて、3人で仲良く中学1年生の春を過ごした。
夏になると、宿泊研修の計画立てがホームルームで始まった。
そんな中でクラスで一つ合同で何か同じことをする、という何とも曖昧な計画をしなければならないことを担任から告げられた。
そこでもちろん星一君は星座鑑賞会をしようと提案したのだが、クラスの陽気な子達がそんな根暗なことしないで派手にキャンプファイヤーとかやったらどうだ、と言った。
まるで鶴の一声のようにクラスが賛同し、担任は星空も綺麗だと思うけどな、と苦しめのフォローを入れてくれたのだがその願いは叶わなかった。
スクールカースト、というものは昔から私たちに多大な影響力を与えていた。
「星座、見たかったな。」
「月見里も賛同してくれれば良かったじゃないか。」
「む、無理だよ私なんて…」
「お前、声小さいもんなー」
「白鳥君まで!」
私がすぐに賛同していれば、事は良いほうに進んだかもしれないのだがそれがクラスにとって良いほうかどうかは別だ。
どちらかといえば、キャンプファイヤーを取り囲んでみんなで踊ったりわいわいやったほうがコミュニケーションはとりやすいし、断然その方が思春期の生徒たちにはプラスになる。
しかし、私たちには大きなマイナスであることには違いなかった。
少し考えた後に白鳥君が口を開く。
「…星座、見たいか?」
「…え?うん…。」
「じゃあさ、俺に考えがある。」
白鳥君は星一君に耳打ちをする。それを聞くと星一君の顔から笑みがこぼれてくるのが分かった。
「え、なになに…?」
「よし、月見里。お前も共犯だ。」
共犯、と聞いて彼らが何を企んでいるのかすぐに分かった。
でも臆病な私は計画も聞いていないのに否定する。
「ダメだよ、グループ抜け出して外の湖に行こうとしてるんでしょ。見つかっちゃうよ」
「どうしてそこまで分かるんだ。」
「そこまで分かってるなら話は早いな。どうせお前も同じ事考えてたんだろ。」
「む…」
「決まりだ。修学旅行の当日、旅館裏に集合だ。見つかるなよ月見里!」
屈託の無い笑顔でそういいきられると、断りきれない性格の私はただただうなずくしかなかった。
でも、心の中では爛々と星が輝いていたんだ。
赤く燃える、アンタレスのように。




