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STELLAR PLACE  作者: 如月十六夜
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9. ノーザンクロスの陥落

不気味に色がなくなった世界を歩き、辿り着いたホテルの様子は変わり果てたものだった。

ガラスは案の定吹き飛び、脆かった柱は折れまるで廃墟だ。

これではろくに休めるかも怪しい。


「…ゴーストタウンかよ」


「中の人たちは大丈夫かな…」


しかし、中に人はおらずどこを探しても人の気配すらない。

ロビーでつけっぱなしのテレビに砂嵐が不気味に映っているだけだった。


ここで星一君が目を覚ます。



「…白鳥か、すまない。」


「気にすんな。」


「夢の中か幻惑なのかわからないけれど、恐ろしい夢を見た…。」


「どんな?」


「空一面が美しいオーロラに覆われて、そこで世界が終わる。」


「こんな時になんて夢見てるんだ…」


「しかも、今回みたいに…その…」


「なんだよ?」


「さそり座のアンタレスが、明るく光っていた…」


3人は沈黙する。そこへ沈黙を破るかのように担任の先生がやってきた。



「お前ら!!無事だったのか!!」


ゴリラみたいな熱血教師が目に涙を浮かべて、私たちの帰還を喜ぶ。

しかし、即座に教師としての行動に翻す。



「夜に女子を連れ出して何をしていた!?無事だったから良いものの、全員でやるキャンプファイヤーを抜け出して、どういうつもりだ!」



業を煮やす。それもそうだ。

あまり目立たない私たちがいないことに気づいたのは、きっとあの爆発が起こってからだとは思うが、それでも担任は生徒の命を最優先する。

点呼を取っていないことに気がついたのだろう。



「ごめんなさい、私が二人を呼び出したんです!あまりにも星が綺麗だったから!」


「おい月見里!」


「…本当なのか?」



先生は白鳥君に疑いの目を向ける。

私は白鳥君に強い眼差しを向ける。白鳥君は察してくれたようだ。



「…はい。ですが僕らが彼女と星を見に行ったこともまた事実です。

 配慮に欠けていました。」



しばらく先生は沈黙して、無言で後ろを向いた。


「…お前ら3人が立ち入り禁止の屋上で天体観測を度々やっていたことは俺も知っている。星が好きなんだろう?しかし、校則を破った事はともかく、クラス全員で決めたことに参加しないのは同意でき兼ねんな。」


「…はい。すみませんでした。」


反省の言葉を聞いて、先生は振り返って笑顔で言った。



「星は、綺麗だったか?」




その日は、ボロボロになったホテルで先生と一晩を明かした。

他の生徒たちは、別の場所にいると先生は言ってたけれどその



僕らと一緒になって、先生も別の先生に怒られた。


教頭先生は担任のことを庇っていたけれど、同僚の先生たちには物凄く怒られていて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




当然、修学旅行は中止。

しかし、僕らが乗ってきたバスの窓は爆風の衝撃で粉々に割られ、しばらくの間はこの廃墟と化したホテルで過ごすこととなってしまった。


そこまではまだよかったんだ。




この日から、あの爆発をまともに受けてしまった人間は次々と原因不明の死で数を減らしてしまうこととなる。


白鳥も、その一人だった。


爆発から3日後。ついに政府が動いたようで、災害派遣救助隊のおかげで僕らは地元へ帰れることとなった。


その途中で、次々と生徒たちが力尽きていったのだ。


目の前で、突然。眠るように。


予兆も何もなく、朝起きると、共に横になっていたクラスメイトが何人も目を覚まさなかった。


白鳥をはじめとした6人が同じクラスでそのまま息絶えてしまった。


帰れると分かったその日の1日前、突然白鳥は昏睡状態に陥って、目を覚まさなくなった。

先生と僕は一日中そばにいて、灯も傍で泣きじゃくっていたけれど、ノーザンクロスは陥落した。

あまりにも突然の出来事だった。




その原因不明の大量死に僕は完全に心を破壊され、現在に至る。


後に分かったことだが、この原因不明の突然死は地球上であの爆発を観測した国全てで起きている現象で、なんらかの放射性物質等が影響しているだろうという見解だった。


そして、その5年後に地球全てを飲み込む大きな超新星爆発が再度起きることが分かった。




突然白鳥を失い、さらに20歳になる前にこの命が尽きてしまうという現実に耐えられるような精神はあいにく持ち合わせてはいなかった。





その日から、僕は星としての輝きを失ってしまった。


星が好きで好きでたまらない人間は、星に親友を奪われ、星に殺される。


あまりにも皮肉めいた出来事だった。



一方で、ずっとそばで見向きもされずにひっそり輝いていた星は、輝きを増して行く。



そのことにも気づけなかったんだ。当時の僕は。



全てを失う直前になって、ようやく気付くんだ。

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