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月攻緋翔セイアッド  作者: 阿礼 泣素
5/11

《地球の未来》

「俺だけが動かせるんだぞ! この《セイアッド》は! なのに! こんなことがあっていいはずがない! 断じてだ!」

 一か八かの賭け、さっきは理想的な自決シーンを演じることが叶わなかった俺に、奇跡が起きた。

「案外、何事も挑戦してみるもんだ」

 俺の《セイアッド》はあの憎き兎の刃を真剣白刃取りしていた。実際のところ、突き刺そうとしていたのはサーベルだし、真正面から突き出してきていたので定義から外れるのかもしれない。

「だが! そんなこと些事だ些事! 細かいことなんてどうだっていい!」

 俺は奴を殺す、壊す、砕く! それだけなんだよ!

「なかなかやるなーとか言って欲しそうな顔してる、まあ顔見えないんだけど。全力でやってますって感じがして見苦しいよね、そういうの。どうして半分の力でできるのに全力を出しちゃうかな。そういうのってさ、余裕があるからカッコイイんじゃん。そんな必死に殺そうとしないでよ、そんな懸命に壊そうとしないでよ、そんな一心に壊そうとしないでよ」

――そうされるとさ、こっちもさ、殺さないといけなくなるじゃんか。

 《ルシーン》の鎧がガタリと音を立てて崩れる。まるでリストウエィトとアンクルウェイトを外すかの如く、堅牢堅固な鎧をパージした。

「ようやく、こっから本気ってことかよ」

――って速すぎ。

 刹那、奴は俺の眼前に迫る。

「多分さ、おそらくなんだけどさ、この《ガイナリッター》さえ倒せば地球人って終わりだよね。これ以上強いのって来ないよね、きっと」

 そう、地球には《セイアッド》を超える機体は存在しない。だからこそ、ソロスの言う通り、《セイアッド》さえ、倒してしまえば地球を侵略することは容易い。

「ここらで終わって、地球も終了っと」

 ソロスがそう言って、また《セイアッド》を突き刺した。先ほどのスピードとは比べ物にならない速さで突撃する刃は《セイアッド》の装甲を簡単に貫いて粉砕する。刺さった部分の周辺は瓦解し、中の駆動部が露になる。

「ここまできたら俺はさ、こいつをやれそうだなーって思うわけ。どれだけやられててもいけそう、いけそうって思うわけ。ってかやらないと地球が終わっちゃうし」

――おらッ! これでどうだ! 隠し玉ってのはとっておくもんなんだよ!

 焦りすぎて武器があることを失念していた俺は、腰の部分からぶら下げていた三節棍を取り出して奴の首を絞めつける。

「効かないね、そんな柔な攻撃じゃこの《ルシーン》に傷をつけることも出来ない」

――じゃ、ばいばい、地球人さん。

「超カッコ悪いじゃんか、俺の死に様、ざまあねえなって。まだ、負けねえ。負けてねえんだ……」

 《セイアッド》は最期の最期まで《ルシーン》に臆することはなかった。月翔の奮闘ぶりは誰もが認めるものだった。

――だけど、結局は負けた。敗北には何も残らない。


――もちろん地球の未来も。

 こうして地球の《セイアッド》と月の《ルシーン》の戦いの結果は月側の圧倒的勝利に終わった。そして、地球の命運も尽きてしまった。




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