《月憑きの人間嫌い》
今日から連載します。良ければブックマークお願いします!
すべての人間は死にゆくもの 月だけが生まれ変わる
月翔、もしも父さんの身に何かあったときはこれで鍵を開けるんだ。これが地球と月を繋ぐ架け橋になるんだ……
俺はそう言って父さんからペンダントをかけられた。その時の俺は欣喜していた。父さんから初めてもらったプレゼントだったから……まさか、それが形見になるなんて思っていなかった……
月からの贈り物がやってきたのはこの日、月が我々を狂わせてしまったのもこの日である。
「見てください、月がこんなにも我々の近くにまで迫っています。まるでこのまま月が落ちてきそうな位、大きな月が出ています」
テレビのニュースキャスターがそう言ってレポートしている。
「月翔! ご飯よ!」
俺の名が呼ばれる。母さんが呼んでいるのだ。
「今行く……」
「父さん、今日はきっと一睡もできないでしょうね……」
「そうだね、しばらく研究所から帰ってこれないね。まあ、いつものことか……」
父さんは月を専門に研究している研究者だ。太陽光が脚光を浴びて幾年、その一方で月の光を陰で研究し続けていた父さんが学会で成果を出した。研究が認められてからは、父さんが家に帰って来ることはめっきり少なくなった。
――俺は、父さんを離してやまない月が嫌いだった。
「父さん、帰ってきても月の話ばっかりだから嫌になるよ」
「仕方ないじゃない、あの人ずっと月のことばかり考えてるんだもの」
「深月は?」
「今日は塾に行って遅くなるって」
「ふーん」
俺はそう言いながら夕飯を口の中に掻き込む。
「ごはっつがはッ……」
俺は食道に掻き込んだご飯を噴き出した。
「なんだ……これ……」
さっきまで中継していたレポーターが突然、気でも狂ったかのように暴れ出していた。
まるで狼男のように、月の光の影響を受けて、満月を見て血気盛んになっていた。
途端、中継はさし止めをくらい、一瞬にして放送が断絶される。
「先ほど、画面に不適切な映像が流れましたことを……」
テレビでそう謝罪がなされている。
《月狂い(ルーニー)》と呼ばれる未知の現象で町が覆いつくされるのもそう時間はかからなかった。
簡単なことだ。月を見たものは、月に侵食される。自我を失い、まるで月に支配されたかのように周りの人間を襲う。それは、《月憑きの人間嫌い(ルナシィ・ミザンスロピー)》と呼ばれた。
父さんは月に殺された。
――だから俺はやっぱり月が嫌いだ。
――父さんを奪ったこの月が、のうのうと地球の周りを回っている、この月が。
――絶対に許さない。憎き月、絶対に許すものか。