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エピローグ

 さぁ、物語はここでお終いだ。

 おや? なんだい、その苦虫を噛み潰したような渋い表情は。

 え? ハッピーエンドじゃないって?

 そりゃあそうさ。物語全てがハッピーエンドだとしたら、この世界には幸福な人で満ち溢れているよ。

 よく周りを見渡してみなよ。すべてハッピーエンドかい? そうじゃないよね。

 むしろ、現実はバットエンドの方が多いかもしれない。

 そうだろ?


 とまぁ、そんなことは置いておいてだ。

 君はこの物語を読んでどう思ったかな? 

 少年がかわいそうだと思ったかい? 少女がかわいそうだと思ったかい?

 もしくは、世の中をしっかりと少年に教えなかった王様が悪いって? 魔王がやっぱりすべての元凶じゃないかだって?

 それともこうかな。こんな物語を考えた人が悪い。そう思うのかな。

 少年と少女を救おうと思えばどうやってでも出来たはずだと、そう言いたいのかな。うんうん。

 分かるよその気持ちは。

 だけど、それは全て少年と少女が決めること。

 そして君も知っている通り、残念なことに少年は最終的に考えるのをやめ、教わった通り魔物が悪だとして少女を魔物だと判断し殺そうとした。

 少女のまた、少年の言葉に耳を傾けることをせずに、教わった通り自分は魔物で、人間は悪として少年を殺そうとし、実際に殺してしまった。結局、その選択が自分を殺すとも知らずにね。

 物語の中で旅人が言っていたね。

『自分で考える力』が足りなかったって。ちょっと考えれば、少年も少女も自分の危うさに気づいたはずだ。

 どちらかが考えていたら、こんな悲しい結末にはならなかったのかもしれない。

 その点、少年は惜しいところまでいっていた。あとちょっとだったというのに、諦めてしまったのは残念だよ。

 逆に少女の方は救いようがないという意見もあると思う。魔王に利用され記憶をいじられていたのだから。それでも、少女には気づくタイミングは何度もあった。

 しかし、少女はそれを考えることなく違うという一言で放棄してしまった。


 結局のところ、これは人間だから起こりえた問題だ。

 少年も少女もちゃんと正しいことを教えてくれる人が周りにいなかったから、このような結末になってしまった。少しの、ほんのちょっとの違いで、人間は善にも悪にも染まってしまう。そんな危うい生物だ。

 これを読んでいる君達はどうかな?

 善人かい? それもとも悪人?

 まぁ、僕にとってはどちらでも構わない。それが自分で考えたことなら、何か言うつもりはないね。

 だけど、一つだけ肝に銘じておいて。

 人間は総じて弱い。すぐに周りを見失う。そして、悪に染まりやすい。

 でもね、悪に染まりやすいっていることは、善にも染まりやすいっていうことさ。

 さぁ、君達はどちらを選ぶ。善か悪か。

 君達の進む未来は、少なくとも自分で考えて作り出す未来だ。

 自分で考え、判断し、二人の歩んだ悲しい未来にならないことを切に願うよ。

 そんな君達の未来に幸あらん事を。


 長々と話してきたけど、ここまで読んでくれた人にはもう予想ついてるよね。

 僕の正体は物語に出てきた旅人さ。

 哀れな魂を救う旅人。

 救世主でもあり魔王でもある。人間でもあり魔物でもある。

 僕は君達と出会わないことを祈ってるよ。哀れな魂でないことを祈っている。

 それじゃあ、またどこかで。

 まぁ、本職は気ままな旅人さ。出会わないのが一番だが、もしどこかで会った時は仲良くしてやってほしい。

 ただ、僕が目の前に現れたことがどういった意味なのかは、よく考えてね。


 じゃあ本当にこれでお別れだ。

 ああそうそう。

 ハッピーエンドがご所望というのなら、今回は特別にあの物語の続きをちょっとだけ語ろうか。

 

 哀れな少年と少女の魂は無事天国へと召された。

 そして、その数年先の未来、ある家庭に双子の赤ちゃんが誕生する。

 男の子と女の子の赤ちゃんだ。

 それがその少年と少女の魂なのかは定かじゃない。

 ただ、その双子はまるでもう互いを離さないかのように、手をぎゅっと握って産まれてきたそうだ。感情豊かな子供だってね。


 それじゃあお話はここまで。

 本当の本当にお別れだ。

 ここまで読んでくれてありがとう。

 きっと、少年と少女も喜んでいると思う。

 では、さようなら。良い未来を。

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