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 日が昇る。

 砂漠に熱気が迫りつつある時、少年は立ち上がった。


「おや。もう行くのかい?」

「ああ」

「考えはまとまった?」

「さぁ、分からん。でも、とにかく魔王に会ってみることにした」

「そうか」


 旅人はうつむくと、沈黙した。

 少年の頭ではここまでが限界だった。

 結局のところ、会ってみないと分からないという結論にはたどり着いたが、その先が全くと言っていいほど思いつかなかったのだ。


「……初めてにしては上出来、かもな」


 旅人は少年には聞こえない小さな声で呟いたのち、ある方向を指さした。


「魔王はこの先、まっすぐ行った火山にいるよ。会うとしたらそこに行くしかない」

「分かった。なにからなにまで世話になったな」

「いいんだ。僕は旅人。誰かのアドバイスをするのもされるのもある、気ままな旅人さ」

「よく分からない人だ」

「はは。そう言われるのは慣れっこさ。僕はここで見届けさせてもらうよ。君と少女の運命を」


 旅人は達観したような口調でそう言った。

 少年はそう言う旅人を置いて、魔王を待つ火山へと向かい歩を進める。

 旅人はなにからなにまで知っていた。

 魔王の場所も、魔王の正体も。少年の過去のことも、本人よりも詳しく知っていた。

 普通であるなら、旅人が何者なのか気になるだろうが、旅人はそんなこと聞けるような雰囲気を発していなかったし、少年は考えるのに必死で、疑問に思う余地などなかった。これも自分の事を探らせない旅人の作戦だ。

 そうしてしばらく歩いた後、魔王が住まう場所だという火山へとたどり着いた。

 ふもとに洞窟が見える。

 禍々しいオーラのようなものが、これまでよりも桁違いに強かった。

 確実にこの中になにかがいる。

 それだけは確かだった。少年は自分を奮い立たせると、救世主として最後の戦いに挑むことにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 少女は玉座に座りながら、剣を振るい、次々と配下の魔物を倒していく救世主という少年を笑いながら見ていた。

 この場所を見つけたことは、誉めてやろう。しかし、単独で来るなど私のなめられたものだ。

 少女は配下の魔物を少年の下に移動させた。

 多くの魔物が少年を殺そうと躍起になって少年に飛びかかった。

 最初の方は、少女は少年が傷ついて行くのを見て満足そうに笑っていた。しかし、何度も何度も魔物を向かわせても少年が死なないことに、徐々に少女の顔にも余裕がなくなっていく。

 確実に少年は少女のいる場所に近づいていた。

 このままでは、自分があの少年と対峙するのは時間の問題だ。

 少女は焦るように魔物を少年に向かわせる。

 何でもいいから少年を止めようと必死になった。

 それと同時に、少女は自分が分からなくなる。

 なぜそこまでして少年と会うことを望まないのか。なぜこんなにも自分は焦っているのか。まるで分からなかった。

 それでも、本能が告げていた。少年には会ってはいけないと。会えば自分は何かを失うと。そんな警鐘を、少女の頭は鳴らしていた。

 しかし、それもここまでのようだった。

 配下の魔物はすでにほとんどが倒され、洞窟にいる魔物は少女ただ一人となってしまったのだ。

 少女は決意した。

 自分の手で少年を殺そうと。そして、この世界を人間どもから救おうと。

 少女は玉座から立ち上がり、その時を待った。

 そうして、少女の視線の先で、これまで少女を外の世界から隔離してきた壁が壊され、少年が現れる。

 少女と少年の目がぶつかり合った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 少年は目の合った少女を見て、あまりのことに動きを止めた。

 旅人が言っていたように、そこには少年と同じ頃の少女の姿があったのだ。体にまとった邪悪なオーラは、すでに人間とは思えないほど歪んで真っ黒だった。


「ようこそ。救世主よ。私のお城へようこそ」


 少女は高らかに宣言する。


「君が……魔王なのか」

「魔王? なにを言っているのかしら。私はあなたと同じ。この世界を救う者よ」


 少女の目に迷いなどない。

 自分がまるで救世主であるかのような口ぶりだ。

 この瞬間少年は理解した。

 少女は自分が魔王であると認識していないと。この世界を混沌に陥れたことなど、まるで理解していないと。

 そして、自分が人間であるということも忘れてしまっていると、少年にははっきりと理解できた。

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