副会長対副委員長
ただ単に今回はネタ回に近いです。
久々に月夜の来た時の奏多は授業中、月夜につきっきりで授業を教える。
「ここの構文は後ろから訳すんだ。ほらやってみて」
「え、あ、『私は最近、新しい自転車を母に買ってもらったばかりだ。』かな?」
「うん、あってるあってる。次は・・・」
懇切丁寧に今の授業に追いつく為フルスピードで月夜に教えていた。
「いいな、十六夜さん、奏多君につきっきりで教えてもらえるなんて・・・」
「奏多君が家庭教師って・・・なんか似合う。」
メガネに黒スーツを着用した姿が浮かぶ。
家庭教師の彼は今生徒の部屋で二人っきり
『よく出来たね、ほらご褒美さ・・・』
「って、私たちを・・・キャー!!」
会話に混じった女子がきゃーっと声を上げる
奏多は首を傾げ、引き続き月夜に英語を教える。
「うーあー!ゲームしたーい!!」
早くも飽きて来たのか、月夜はペンを耳に挟み、つまらなそうにしていた。
「じゃあ、全部終わったら放課後一緒にゲームの対戦を1時間してあげるよ。」
すると耳にかけていたペンを手に持ち眼帯に手をかざし決めポーズをした。
「契約はここに決まった!さぁ、盟友早く我に試練を!試練を!」
奏多は微笑みながら山のように積もったプリントの束を月夜に渡した。
その瞬間、月夜の顔は真っ青になった。
◇
月夜が束の半分を終わらせたところで昼休みになった。
「昼餉の時間だ!盟友よ円卓に行くぞ!!」
ちなみに彼女の言う円卓とは生徒会室である。
生徒会室に着くと生徒会メンバーが揃っていた。
「風紀委員の会長は?」
「草薙ちゃん?確か今日は相撲部とラグビー部との購買のパン争奪戦があるから遅れるって。」
なるほどと手を叩き月夜と席に着く。
奏多の座る右隣に案の定、零がスウスウ寝ていた。
「本当によく寝るよ。」
寝ている零に目覚めの所作をするとパチリと目を覚ました。
「奏多・・・zzzz」
だがすぐさま奏多の膝を枕の様にして寝てしまった
「珍しいですねこんなに眠いだなんて。」
「なんでも幸村ちゃん昨日の昼休みに眠れなかったから今日は倍眠いって」
奏多は昨日の音楽室の事だと分かりせめてもの罪滅ぼしとして膝枕のままにしてあげた。
「ところで月夜ちゃん、どう久々の学校は?」
「NO,problem.我が盟友のサポートにより我の知力は格段に上がった!」
決めポーズをしっかり決めるがみんな苦笑いだった。
「靫空君、大丈夫なの?授業受けなくて?」
その言葉を聞いて月夜がマジマジとこちらをみて来る。
「まぁ、高3レベルの内容までなら正直勉強しなくても大丈夫だから特に問題は無いですね。」
奏多の衝撃発言に生徒会室は凍りついた。
「靫空、お前人生でとった最低点は何点だ?」
曙の質問に少し頭を悩ませたが、手をポンと叩き答えた。
「確か、98点です!」
再びフリーズ
人生でとった最低点が98点という怪物っぷりに生徒会室にいるメンバーは驚きの顔を隠せなかった。
「あ・・・み、皆さん!ご飯、ご飯食べましょう!」
みんなハッとし各自弁当を出し始めた。
「あれ?みんな今日は弁当なんですね。」
そこを指摘した途端何故か会長と曙はおどおどした。
「あ、えーと気分で・・・」
「右に同じく!」
「我は何時も手作りだ!」
すると膝上で寝ていた零も起き弁当を出した。
「零もか・・・意外だな。」
だが月夜と零の弁当以外は中身が残念なものだった。
だが、見た目だけで中身は美味しいケースはいくらでもある・・・
「あ、あの・・・もし良かったら僕の弁当のおかず交換しませんか?」
奏多は自分のタンドリーチキンと月夜の揚げ出し豆腐、零のハンバーグ、飛鳥と曙のドス黒い何かをそれぞれ一口分に分け交換した。
「では、いただきます。」
―パクッ
「う・・・こ、これは予想以上に・・・」
まず最初に飛鳥と曙の一品を口に入れると苦味、酸味、辛味、刺激のオンパレードが奏多の口を襲った。
「ど、どう?私の卵焼き」
「私の唐揚げもどうだ?」
原型とは程遠い料理名を言われ驚いたがここは傷つけないために・・・
「は、はい、火の通しすぎ気になりますが、お、美味しいで・・・す。」
二人が喜ぶ姿を見てホッとした矢先、隣を見ると月夜と零の体からは魂が抜けかけていた。
「二人ともしっかり!」
奏多に体を揺すぶられハッと意識が戻った。
「何だ?花園が見えたぞ!」
「私は翼の生えた人。」
いいものを食べてきた二人には耐えられないものだったのだろう。気を取り直し月夜の揚げ出し豆腐を食べる。
程よい出汁が効いており先程の料理を帳消しにしてくれた。
「美味い。優しい味だね」
それを聞いて月夜はドャっとしていた。
「そうだろう、そうだろう!我がっ!揚げ出汁豆腐は至高にして究極の料理に舌をやられるのは無理はないだろう?」
それはさておき・・・
次に零のハンバーグ、口に入れるとデミグラスソースの味が口中に広がる。
「これも美味い。零が一人で作ったの?」
「いや、お母さんと・・・」
それでも美味い。
だが他のメンバーが奏多のタンドリーチキンを口にした瞬間、空気が変わった。
『美味しい!』
奏多以外の皆が口を揃えた。
スパイスの効いたカレーの風味が口、鼻を広がり、程よく柔らかい鶏肉の食感が全員の声を唸らせた。
「何故こんなに、この魔鳥の天竺風の料理の肉はこんなに柔らかいのだ?」
「ああ、肉を揉む際にパイナップルで数十分漬けてからヨーグルトを使うんだよ。そしたら噛みやすくてジューシーな鶏肉が出来るからね。」
「何時も思うけど、靫空君ってなんでそんなに料理が上手いの?やっぱレシピを見てそれを極めるとかかな?」
「うーん、そうですね。確かにレシピを見たりして料理をすることも大切ですが、作るときこれだけは忘れちゃいけないってのが1つあります。」
皆が注目していた。
「それは、作る際に食べてくれる人の事を考えながら作るんです。」
「そっか・・・じゃあ、靫空君の将来のお嫁さんは恵まれてるわね。」
「ハハ、まず僕が結婚できるか分からないですけどね。」
そこにバンと勢いよく扉が開くとボロボロになった 草薙がはいってきた。
「ゼェゼェ、疲れた〜!!相撲部とラグビー部全員は流石に骨が折れたぜ!!」
両手に抱えた大量のパンを机に起き全員の弁当を見渡した。
「おっ、飛鳥と曙が自前の弁当たぁ、珍しいなぁ、おっ!黒胡麻団子か!どーれ、お一つずつ・・・グッ!?」
口に放り込んだ瞬間、草薙は硬直したまま動かなくなった。
「草薙ちゃん!?一体どうしたの?」
「きっと疲れてるんですよ、ほらこんなにパンを買ってきたってことはパン争奪戦で相当頑張ったってことです。」
「でも泡拭いてるわよ!」
「きっと・・・走り付かれて疲れた反動でしょう・・・」
しれっとついた嘘に皆は首を傾げながらも受け入れ、弁当を食べ終えた。
未だ意識をとりもどさない草薙を皆は心配していた。
「じゃあ、草薙ちゃん、鍵よろしくね。」
未だに硬直している草薙はその3時間後に目覚め、心配して駆けつけた奏多に
「死んだばあちゃんに逢えたわ。」
と言ったらしい。
そして放課後、月夜はプリントを全て終わらし奏多と二人きりの教室で机を足台に高らかに笑っていた。
「終わったァァァァァァァァ!!この長く苦しい戦いを我は完遂したぞ!!!よし!盟友よ!やるぞ!いざ円卓へ!!」
ブレザーを引っ張られ生徒会室に運ばれた。
生徒会室には何故か最新型のテレビゲーム機が存在している。
これは零が商店街の抽選で当てた際、生徒会室に置いていったものらしい。
「よし!今日は3D格闘ゲーだ!対戦1時間!今日こそは勝つからな!いや、我が左右の腕に封印されし不滅と勝利の神を開放し貴様を葬ってやろう!!」
「お手柔らかに。」
それからは無言の戦いだった。
お互い高速のボタンタッチ、技の防御、回避、時間は無制限、HPが0になって2回ダウンしたら負けの勝負、始まって30分互いにまだワンダウンもしておらず、実力は拮抗していた。
ここで月夜は勝負に出た、何と広い3Dエリアを全力のスピードで逃げ出したのである。そんなことをすれば気力ゲージの減りが早くガードブレイクされた際、3秒の麻痺状態に陥るのだ。
奏多は通常スピードで相手を追跡する、そして気力ゲージが切れるタイミングを狙って最大まで貯めた気弾攻撃を放った。
だが月夜はニヤッと笑うとその気弾は消滅した。
そう、月夜の使用キャラのスキルの吸収が発動していた。
吸収によって気力ゲージがカンストした状態で気弾技による気力ゲージが少ない奏多のキャラに襲いかかった。 奏多万事休すと思われた瞬間、奏多の指が凄まじいスピードで動き始めた。
近距離に迫った瞬間、月夜はハッと気づき逃げようとしたがその瞬間、奏多のキャラクター演出が始まった。
自爆、自身のHPを1まで減らし相手に大ダメージを与える技だ。しかも逃げようとしたキャラは背中を向けていた為、ダメージ判定が1.5倍になるのだった。
まずは奏多がワンダウンとり、復帰した月夜のキャラクターの一発でダウン、これで仕切り直しとなった。
2回目はケチケチした回避戦ではなくノーガードの殴り合いだった。気弾技のぶつかり合いで互いにスティックを全力で回す。互いに均衡していたが、奏多の一瞬の指の緩まりで惜しくもつばぜり合いには負けた。
次は互いに全力のぶつかり合いのつばぜり合いが始まった。こちらは○ボタンを連打、奏多の16連射張りのスピードで圧倒、相手が怯んだ隙にコンボの連続、そして互いのHPが残り少なくなった時点で二人は互いのキャラの気力をマックスまで貯めた。
そして再び互いに気弾技を最高潮にまで貯め放った。恐らくこれで決まる。
互いにスティックを全力で回し、決着はついた。
『WINNER 1P』
奏多はガッツポーズをとり月夜と握手した。
「あー、疲れた・・・」
「我もだ・・・やはりお前との対戦は楽しい。だが・・・うがあああああああああ!!!負けたああああああ!!!」
「これでジャンル関係なく225戦、僕の 113勝 112敗だね。」
奏多はスッと立ち上がって、月夜に手を差し出した。
「よし、帰ろう、行こう月夜。」
「ああ!我の両腕の神も眠ってしまったようだ」
訳すると両腕が疲れたらしい
奏多と月夜が生徒会を出ると廊下は6時だというのに真っ暗だった。
すると、月夜はいきなり奏多の手をぎゅっと握った。
「怖いの?」
「い、いや!こ、これは目の前が真っ暗すぎて見えないから仕方なく奏多の手を繋いでるだけだし!怖くないし!ば、馬鹿な事言うなし!!!」
試しに握り返すと、月夜は顔を真っ赤にしながらそっぽを向いた。
「僕は怖いから握ってるよ。」
「そ、そうか!!なら仕方がないな!!我も・・・握っておいてやる・・・・」
校門までならいいかなと思い、そのまま校門まで奏多は月夜の手を月夜は奏多の手をずっと握っていたのだった。
月に照らされたその姿はただの恋人同士だった。
次回予告:儚き命が散りかける時、少年は・・・次回【命】お楽しみに