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現在と過去

作者: 熊田ハチ

夜眠れない時、布団の中で丸くなる。

そこで感じるのは外の雨音とほんの少しのタバコの匂い。

時計を見るととっくに日付は変わっていて、明日とはいえない明日の心配をして。

こんな気持ちになるのはなんでなのか、誰にもわからなかった。


私に初めて彼氏ができたのは中学二年生だった。

優しくて、柔らかい、一つ年上の彼。

大好きだった。

幼い私は、彼をずたずたに切り裂いて捨てた。


次に彼氏ができたのは中学三年生の話。

前の彼の優しさと柔らかさを忘れたくてなんとなく付き合った。

今度は私がずたずたに切り裂かれて捨てられた。

気がついたら好きになってたのかもしれない。

耳に一つ穴があいた。


そんな彼を忘れたくて、すぐに違う人と付き合った。

小さくて、頑張り屋さんの彼。

私は初めてキスをした。

でも彼は私の前から姿を消してしまった。

あんまり悲しくなかった。

しかし耳にあいた穴は増えていた。


高校に入って初めて付き合った彼とヨリを戻した。

やっぱり忘れられなかった。

あんなにずたずたに引き裂いたのに、許してくれる優しくて、柔らかい彼。

今度も私は彼を傷つけて消えた。


その年の秋クラスの男の子に告白されて、付き合った。付き合ったと思っていただけなのかもしれない。

彼には彼女がいた。

何かが崩れた音がした。


その冬、私は大切な何かを失った。


次の年、私に彼氏はいなかった。

傷つくのが嫌なんていう言い訳をして、

本当は楽に生きていただけだった。


そして高校最後の年の最初の日。

私は生まれ変わることを決意した。

つもりだった。


高校最後の年、また最初の彼とヨリを戻した。

馬鹿だと思った。でも好きだった。

私は初めて彼に別れを言うことかできた。

少しだけ成長した。

私の耳にはまた穴が増えていた。


そして今、布団の中で丸くなる。

感じるのは外の雨音とほんの少しのタバコの匂い。

時計を見るととっくに日付は変わっていて、明日とはいえない明日の心配をして。


ほんの少しだけ、死にたくなった。

秒速5センチメートルという映画を見てなんとなくぽっかりと心に穴があいたのでこれを書きました。


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