夜の風に当てられた
起き上がるとそこは誰かの部屋のようだった。
ここがどこなのかわからない上にどうしたらいいのかもわからないから、とりあえず辺りを見回してみた。
大きな部屋ではなく、むしろとても小さい。俺の部屋といい勝負だ。白いカーペットの上に透明なテーブルが1つ、端っこにカラーボックスがあり、中には何冊かの本が入っている。料理本やファッション誌ばかりだ。
壁に時計がかかっているのを見つけた。時計は9時24分を指している。
廊下の方から激しく水の流れる音が聞こえてから扉が開くと、そこから篠田さんが出てきた。
「あれ?篠田さん何やってるんです?」
「え、うそ!覚えてないの!?」
「なにがですか!?俺なんかしました!?」
そこで篠田さんが黙って目をそらしたもんだから俺は不安になって仕方がなかった。
それでもそのあとなにかしたんですかと迫ると篠田さんは笑い出した。「何もしてないよ」と、そして「幸太君が酔いつぶれちゃったからうちに運んで介抱してただけ」
「ここ、篠田さんの部屋だったんですか」
「そうよ、どこだと思ってたの?」
「いえ、どこかなと。それよりありがとうございます」
「もう大丈夫なの?」
「はい、もうすっかり良くなりました」
「そう、それじゃあどうする?もう遅いけど、泊まってく?」
「いえ、そこまで迷惑はかけられませんよ。まだ電車もあるし帰ります」
「そっか、それじゃあ駅まで送るよ」
「え、悪いですよ」
「いいのいいの、ちょっと風に当たりたかったし、それに1人じゃ迷うでしょ?」
「なんとか帰ります」
「強がらなくていいから。ほら、いこ」
よほど外に出たい気分だったのかそう言って篠田さんは靴を履き始めた。
俺も靴を履いて外に出る。
知らない街の夜道はなんだか不思議な感じがした。全然人がいないせいか、やけに静まり返っている気がする。
「幸太君さ、私の部屋どう思った?」
「部屋、ですか?シンプルでいいと思いますけど。おちつきます」
「実はさ、私の部屋ってまだ彼にも見せてないんだ」
篠田さんはゆっくりと息を吐くように「幸太君が初めてなんだよ」という。
「そんなの成り行きじゃないですか。俺が酔わなきゃ見ることもなかったんだし、居酒屋の時とは場合が違います」
「そうだけどさ、つまんない。もっと動揺してよ」
「俺で遊ばないでくださいよ」
「だめ。それはもっとつまんない」
そう言って笑う彼女はとても可愛らしかった。
その夜は、篠田さんのことで頭がいっぱいになり、彼女でオナニーをした。