3人目
水戸さんとあった翌日、また今日も先輩の彼女と会う日だ。
未だに先輩の考えがわからないけど僕と3人を会わせてどうしようっていうんだろう。
最初に会った人は元気なところが取り柄みたいな人で、次の人はなんだか気が弱そうな人だった。2人とも全然タイプが違って、先輩の好みがいまいち見えてこなかった。
今日会う人はどんなタイプなのかと考えながら、指定された店で待つこと10分。あんまり暇なのでいろんな商品を見ていた。今回は珍しく飲食店じゃないので暇つぶしができる。
「おー、いたいた」
先輩の声がした方を振り返ってみると女の子と先輩がいた。あれが最後の人で間違いないと思う。
「おれの後輩の白浜」
先輩、3回目でもう完璧に慣れたようでさらっと俺を名字だけで紹介した。
「こっちが陣野」
紹介されると女の子は、陣野秋です、と言ってよろしくね、と笑った。
俺もよろしく、と言いかえす。
どうやら今日は陣野さんが見たい物があるとかで集合場所がこの店になったらしい。「何が見たいんだ」先輩は案内板を見ながら陣野さんに聞いた。
「服が見てみたいんだよね」
「服は3階だな、行くか」
俺達はエスカレーターを使い、3階に登った。
初めてきた俺はまず、服の多さに驚いた。服、服、服。エスカレーターを上がった瞬間服だらけ。うちの近くの店に行ってもこんなに埋め尽くされている感じはしない。
陣野さんは気の向くままに素早く服屋に入りささっと選んで試着室に入る。それまでのスピードが速かった。瞬間的に選んで試着室に入っていった。あれでまともな仕上がりになっているのか気になって試着室の前に行ってみた。
「服、どうでした?」
「見る?いいよ」
ざあっとカーテンが開いて陣野さんが出てきた。選ぶのも速ければ着るのも速いらしい。しかもこれがちゃんと組み合わさっているから驚きだ。
「似あってます」
「当然よ、あたしが選んだんだもん」
俺が素直に感心していると、そいつすごいだろと先輩が後ろから服を持ってきた。先輩も選ぶのがなかなか早い。
「おれも着てみるか」
先輩が隣の試着室に入ると同時に陣野さんもカーテンを占めた。
先に陣野さんのカーテンが開いた。私服に戻って綺麗にたたまれた服を持っている。
「それ、買うんですか?」
「いや、イマイチだからいいや」
イマイチだったらしい。かなり似合ってるように思ったけど俺の感覚がずれてんのかな。
先輩の方のカーテンも開いた。「どうだ?似合うか?」ドヤ顔だ。
しかも正直あまり似合ってない。どうしよう。というか似合う似合わないの以前にチョイスがおかしい。上と下がそれぞれの特性を殺しあってなんだか異常にダサい。
「何それ、すっごい変!」
「そうか?いいと思ったんだけどな」
陣野さんが指摘してくれて助かった。
先輩はチェッとむくれてカーテンを占めた。
服に興味の無い俺と服のセンスがださい先輩はその後陣野さんに着せ替え人形にされ遊ばれていた。
そこで自分でも気に入った物があったので何着か買うと、陣野さんが帰ろう、とあまりに元気に言うので俺も先輩もそのまま流されて帰ることになった。
陣野さん、なんだか変な人だったという印象が残った。
変で、すごい人。
ああいうのが天才と呼ばれる人なのだろうか。
その日の夜、先輩からメールが届いていた。その内容は、明日大学で会おうというものだった。