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温かい明かり  作者: 松田
13/18

女二人

「先輩昨日あれからどーなったんですか?」

「春香のことか。金がない疲れたって言って駅で別れたよ」

「なんだ、デートしたんじゃないんですね」

「さすがにな。昨日あのままデートしてたらおれは今週毎日デートするはめになっちゃうよ」

「今日は誰かと予定あるんですか?」

「秋と地元デート。バイトもあるしな」

「お互い見知った場所ですしね」

「秋の大学がおれらの大学よりもうちょい向こう側にあるからここの駅で待ち合わせてんだ」

あー、だから今日は駅でお別れだって言ったんですねと言った。

陣野さんの写真をこっそり撮って篠田さんに証拠として見せようか。そう思って、駅までついた時にまだ来ていない陣野さんを俺も待つことにした。

適当に空いてる柱を見つけて二人して寄りかかった。

「陣野さんいつ頃来るんですか?」

「もう大学出たって言ってたからもうそろそろじゃないか?」

しかし、ただ待つって言うのは意外にも退屈で長く感じた。そこでまた気まぐれが起こり、先輩に聞いてみたくなった。

「陣野さんや水戸さんとはよく会うのに篠田さんとは会わない理由ってなんですか?」

「いや、お互いに都合がつかないだけだよ。会える日は会う」

「こんだけ沢山デートしてる先輩にも合わない時ってあるんですね」

「お前おれが年中暇してると思ってんだろ」

「まあ、はい。思ってます」

「あのなぁ、おれだってインターン申し込んだり研修やボランティアやってんだぞ」

意外と動いていることに正直驚いた。

「先輩今年就職ですもんね。たまにスーツなの見かけますよ」

「だろ、おれだって遊んでばっかいられないの」

そう言って先輩はポケットからタバコを取り出し火をつけた。ぷはーっと煙を履くとそれは輪っかになってだんだん大きくなって、静かに消えていった。

しばらく先輩がプカプカやっている輪っかをいじって遊んでいるとどこかから圭一郎君と呼ぶ声がした。

「あれ?今おれ呼ばれた?秋かな?」

俺も聞こえましたと言うとまた圭一郎君と呼ぶ声が、今度ははっきり聞こえた。声のした方を見ると、そこで大きく手を振っていたのは陣野さんではなく水戸さんだった。

「なんでここにいるの?」

先輩の声は激しく戸惑っているようで高く上ずっていた。

「来ちゃった」

「来ちゃったじゃなくて、おい白浜なんとか言ってやれよ」

この展開にはさすがに俺も驚いた。まさか陣野さんの前に水戸さんにあうなんて。あまりのことに俺の頭はちゃんと機能せずうっかり先輩と遊ぶんだと言ってしまった。

「なんだ、それならちょうどいいじゃないですか。私も交ぜてください」

「いいから、遊ぶってお前の思ってるような遊びじゃないから」

先輩も必至になって弁解している。それじゃあまるで俺が今から先輩とやらしい店に行くみたいじゃないか。

そしてちょうどよく陣野さんも来てしまった。いや、よくはないのだろう。むしろ悪いことは重なるものだと俺まで言われているようで悲しくなった。

陣野さんはだれ?その人と水戸さんを一瞥すると水戸さんもあなたこそ誰ですかと食ってかかった。

「あたし?あたしはこいつの彼女だけど」

そう言って陣野さんは先輩の肩に手を乗せたのでますます水戸さんは血圧をあげた。逆に俺の血圧は下がって行くのを感じてなんだか水戸さんに血圧を奪われているような気がした。

「ふざけないでよ!圭一郎君は私の彼氏なの!」

水戸さんがこんなに声を荒らげる人だとは思わなかった。陣野さんも陣野さんで水戸さんを押しつぶさんばかりに威圧していてる。

俺はなんだか恐ろしくなってその場から早く立ち去りたかった。先輩の方はというと口を半開きにして唖然としている。

よほどショックなんだろう。声も出せないような感じにただ立っている。

どうすればいいのかまごついていると陣野さんがまだいたの?とっとと帰りなというので俺はすごすごと引き下がってしまった。

女の人の怖さを目の前で見た迫力は圧巻物で、自分が先輩の立場なら生きていられないかもしれないと思った。

今晩先輩にメールでも送ろうかと考え電車に乗った。

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