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小説家嫌いじゃない!






考えてみよう。奴らは果たして、本当に努力なしに授かったチートだというのか。いや違う。

奴らは自らの小説を生むのに血反吐を吐いて頑張ったんじゃないのか。



自らの苦心の作品が全く評価されない苦しみ、葛藤、絶望。そんな中を耐えぬいて、必死で頑張ってきたからこそ得ることが出来たチートじゃないのか。


そして、俺のチートは言ってしまえば確実に得ることが出来たもの。モンスターを叩っ斬ってるだけで、そして少しの創意工夫を見出したことによって生まれたもの。



小説家たちは自身が最高だと考えている作品であっても評価されないことだってあるのに!



チートハーレムについても俺は誤解してないだろうか。

考えてみれば当たり前のことだ。ものには流行り廃りがある。この世界であっても初期は聖騎士が一番人気であったし、それから圧倒的な耐久力と攻撃力が持て囃されて人気は重騎士に移行した。


何故人気が出たか、それは望まれていたからだ。

聖騎士は回復職のいないこのゲームにおいて神官騎士に次いで回復魔法を覚える攻守に優れた職だった。そして聖騎士がパーティのリーダー位置を占めるほどになってくると今度はダメージを取る職が不足する。そうして重騎士に需要が生まれたのだ。




俺ははねっかえりであるから頑なに不遇職に固執し続けてきた。

きっと小説家だろうでいうならオッサン同士のホモ恋愛小説が何かの間違いでランキングに乗っちまったみたいなもんだったのだろう。



そんなものが持て囃されてはいけない。

そうだ奇しくも俺はチートハーレムは男の夢だと言ったじゃないか。

何が悪い。チートハーレム。男の夢を具現化する、彼らこそ現代の夢の神モルペウスではないか!


俺はとんでもない誤解をしていた。

まさか神を否定していたとは・・・なんたる無神論者。ニーチェ。

ノベリスト。それは運営が産んだ神だったのだ。



私は神となり、新たに誕生したこの世界で最強を目指す。

そうだ明確な目標が出来たじゃないか。人気No1ノベリストはすなわちこの世界において最強。

そうだ最強になるためのプロセスが小説を書くことだったのだ!

くはは。やる気が、やる気が漲ってきた。

善は急げだ、早速行こう転職所に。


ノベリストに。転職だ!!





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【転職所】



「ノベリストに転職しに来た!!」



「はっはい、ではご説明はいりますか??」


くはは。少し勢い良く来すぎたようだ。受付のNPCを驚かせてしまった。

どうやら発表から即転職所にやってきた人間はいない様子。

俺が一番乗りか。よきかな。よきかな。そして説明か。転職の説明など廃人の俺には必要ないが。



「ん?転職だろう。レベルリセットで武器習熟度とスキルのみ引き継ぎだろう」



「いえ、通常職から特殊職であるノベリストには特殊な条件がございます。それではご説明させてもらいますね」


「おっおう」


「まずノベリストはレベル、というパラメーターは存在しませんので、そこは以前のまま引き継ぎはありませんね。続いて武器習熟度、スキルに関しても同様です。PPの数値によってのみスキルと羽ペンの習熟度も変わりますので引き継ぎが御座いません。更にはノベリストという特殊職は極めて強力な職業でありますので条件として転職者の持ち物、お金、一切を運営に寄付して貰うことになります」



「何ィ!?」

ユニーク武器である那楼と夜盲は砕けてしまったから好都合ではあるが、これまでに鍛えてきた鎧や、貯めこんできたお金もか。これは・・結構キツいな。


「とすると、今から持っているお金で土地や家を買ってもそれは引き継げたりしないか?」


「意味がありませんね。不動産も財産とみなします。そして簡略化して説明させていただきますと、引き継げるのは容姿とアカウントのみということになりますね」


「名前はッ!?」


「名前も同様です。小説家への転職なのですからペンネームが必要でしょう??新たに登録なさってください。説明は以上になります」

これは・・・キツい・・・3年も使ってきた名前だ。勿論愛着もあるし、俺は赤色が好きでかつすごく格好いい名前を苦心して考えたのだが・・・破棄か・・・辛い・・・いやしかし転職は決定事項なのだ。


「……分かった承諾しよう」


「承りました。ありがとうございますレッドバルトさん♪ではデバイスに現在の装備全てを入れてから後お預かりします。そしてこちらが転職承諾証ですペンネームとパスワードをお書きの上提出してください。小説家だろうの会員登録も同時に行いますので」



くふぅ・・・ペンネームはともかくまぁパスワードは適当でいいなさっき思い浮かんだ単語でも入れとこう。

ペンネームか・・・赤色は入れたいな・・・カッコイイ響きルージュ・・おお。いいな!!響きが素敵じゃないか。

「下手に格好つけたペンネームにすると読者に馬鹿にされますよ?」


何ッ?駄目か、格好いいのは駄目なのか?ううむしかし最強のプレイヤーは名前も格好良くあるべき・・・

しかし名前で馬鹿にされては小説自体を読んでもらえんかもしれん・・・


「少しお茶目な方が好感度高いですよ?」


お茶目だと・・・最早分からん・・・なんたってこちらは小説家初心者なのだ・・・いやもうこの理解の深そうなNPC任せで構わんのではないか。


「お姉さん。赤の入ったペンネームで何かコミカルでかつ格好良さも伴ってて更には尊敬も集められそうで読者受けもバッチリなペンネームを記名しといてくれ!!」


「赤ですか。はい承りました。パスワードも記入済みですね。デバイスをお返しします。

・・・・・・・・受理されました。それでは現在のホームポイントに転送させて頂きます。転送が済みましたらあなたはもうノベリストです。才能があろうがなかろうが、食うものに困ろうが、住むところに困ろうが、小説を書くことを生業とするのです。身を崩さぬように祈っていますね」



「なんか凄く胸に刺さるな。これ。俺間違えてないよな。人生棒に振ってないよな」



「ええ。それでは職業神のご加護があらんことを♪」


フッっと目に見える景色が屋内から屋外へと変わる。これで俺も今日からノベリストか・・・なんか・・・

ワクワクするな。俺の書いた小説が大人気になって、書籍化の話とかまで来たらどうしようか。ゲーム廃人、売れっ子小説家に華麗なる転身か。胸が踊るな。



「くふふ、これで完全に0から始まる異世界転職か。裸一貫から始めよう。まぁ布の服は着ているが。」




そうして気持ち新たに意思表示をしているとデバイスから女性AIの声が聴こえてきた。


「新規だろうユーザーと転職の確認を致しました。では新規ユーザー向けチュートリアルを開始します。プレイヤーネーム赤さんさん」


ん??赤惨惨??なかなかに猟奇的な名前をつけたなあのNPC・・・いやっ違う!これはアナウンスであるだろうからプレイヤーには敬称をつける筈!よってPNは赤さんだ!

あのNPC・・・説明は丁寧だったくせにこんなところで適当なお役所仕事を・・・・


レッドバルトから赤さん・・・威厳もあったもんじゃ無い・・・・裸一貫どころじゃない・・・最初から大怪我負ってスタートじゃないか・・・・・


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