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世界の規則  作者: 秋霧
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法廷という舞台

「それでは開廷いたします」「本件の趣旨を説明してください」

そういって私たちの前代未聞の裁判が始まった。

事の始まりは1991年の秋、被告夜霧秋火が警察に出頭した事だった。

彼女の起こした数々のセンセーショナルな事件は、世界に衝撃をもたらし、

そして傍聴人あり、メディアも介入可能な未成年者裁判は幕を揚げた...

---

夜霧秋火は今から15年前、1976年にこの世界に産まれた。

最初は他の人間と変わらない、ごく普通の子だった。

皆と同じように寝起きをして、学校の休み時間はおしゃべりをする。

音楽が好きで休日は一人でではあったがCDショップであれこれ

見て回ったり、時には小遣いで買ったり...

傍目からはそれなりに人生を謳歌しているように見えた。

---

コンコン、裁判長が木槌を二回鳴らす...

まだ未成年者への裁判という歴史史上初めての事例始まった事に対する

興奮の冷めやらぬ 傍聴席を静める為だ...

「被告人は起訴事実を認めますね?」

こくりと頷きながら、証言台に立った少女はか細く「ハイ...」と呟いた。

あまりに声が小さかったので、傍聴席にいてはは聞き取れなかっただろう...

裁判長は軽く頷いただけで、気にも留めてない。心の穏やかそうな人だ。

容疑者が"未成年"である事に配慮しているのだろうか...

微かにだが笑っているように見える。

多少は未成年者へのメンタル面の対処を気にしているのだろう。

あれは自分と同じ領域に不慣れな物に対して動物が向ける、

余裕のような 感情の笑みだ。

私はああいう感情は嫌いだ。結局あれは"強者"である"動物"が"弱者"で

ある"動物"に 対して向ける蔑みなのだと、私には思えてならない。

もし仮に自分がその立場になったら、なんて事まぁ、

私も考えた事は無いが...

まぁ、可哀想だの憐れだの言ってみても、結局人間は自分主義だ。

だから、それを享受しつつ、それを拒む、受けいれ、甘受しないことが

最良の選択だと、私は思う。

まず、弁護側の質問が始まった。"秋火"が罪を犯した事は揺るがないから

どれだけ減刑できるかに弁護側は持っていくだろう。

当の本人はというと ありふれた 流れはつまらないのか、

面倒そうに 検事側の方向を見つめている。

こちらからは、ロングの黒髪に邪魔されて、後姿しか見えないが、

はっきりわかる。

被告は自身が前代未聞な存在であることに、どんな心の揺らぎも

抱いていない。

心の中には多様な渦がひしめき合っているはずなのに。

---

事件発生は午後2時46分、向かいの民家から火が上がっていると

近所の老人から通報があった。

老人の証言によると発見時に正門に人影を見たとの事だが

消防に通報する際、携帯を持っていないため自宅の固定電話から

掛けている間に消えたとの事だ。

幸い、住居が燃えにくい材質であった事、燃えやすい物が

近くになかった事が幸いし、火は燃え拡がらずにすんだ。

その後、焼け跡から二名の遺体が発見され、重要参考人として

この家に住んでいた少女の捜索が開始された。

発見されたのは捜索開始から30分後。近くの交番の巡査が

火事をしり、様子を見に来たことで少女の居場所が特定できた。

交番に両親を殺害したと、少女が出頭して来た事。

全身に血痕が付着、左手に拳銃を所持していた事から、

事件性が疑われること。

少女が犯行を認め、その場で現行犯逮捕となった事。

これがここ三ヶ月程で起きた事の粗筋だ。

罪状は主に殺人、及び放火未遂。

被告は深夜2時頃に起床。 やくざである父親の拳銃を使い、

父親に至近距離から胸部に二発、頚部に一発の銃弾を浴びせ、

更に発砲音に気づいて やってきた母親の心臓に一発発砲。即死させた。

その後、自宅の外に出ると、玄関脇の裏庭に放置してあった家庭ごみに

火を放ち、行方を眩ませた。

同様の趣旨の説明、被告人への確認、質問が終わった所で、

一度閉廷だ。昼の休憩となる。

法廷から連れ出される秋火はより一層落ち着きを取り戻したのか、

平然と前を見ている。 自分に向けられる傍聴人、テレビカメラ。

どの視線も気にならないようだ。あの様子なら秋火はこの事件の

全てが終わるまで、ずっとあの状態だろう。

彼女は一体何を考えているのだろう。今はまだ誰にとっても謎だ。

恐らくそれは弁護側、検事側が持ちうる事実をすり合わせてこそ

明らかになる事だ。刑事や検事の取り調べで明らかになる事ではない。

テレビのクルーがカメラをチェックして、出て行った。

これで法廷には私だけになった。食事はどこで取ろう...










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