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特殊生物災害  作者: onyx
9/16

第二波

現在地:上士幌町警戒本部から北へ数キロ地点

時刻:12時20分

「鷹の目から全部隊、第二波出現、数は目視で100以上と推定」

「警戒本部了解、鷹の目は一時後退せよ、近接航空支援を行う」

「了解」

鷹の目が後退した。同時に上空からF-2編隊が降下を開始。4:4に別れ、最初の4機が無誘導爆弾を投下し、残りの4機がその後方から追従してバルカン砲による制圧射撃を行う予定だ。

「クロウリーダーから各機、奇数番号機は俺に続け、偶数番号機は2番機指揮の下で制圧射撃を実施せよ」

「2番機了解、偶数機を預かる」

奇数隊が爆撃航程に入る。編隊は生物群に対して東から進入を開始した。偶数隊はその後方、やや高めの上空に位置し奇数隊に追従している。一連の攻撃が終了したら今度は偶数隊が爆撃を行い奇数隊が制圧射撃を行うので編隊はなるべく崩さないで飛行する必要があった。

「各機投弾準備、指示を待て」

進路修正をしながら暫し飛び続けた。さっきと同じだ。積んでいる爆弾を全て叩き込む。そして4機は編隊を保ったまま投弾ポイントに到達した。

「投下!投下!」

多数の無誘導爆弾が投下された。奇数隊はそのまま高度を上げて西へ抜けていく。着弾を確認した鷹の目の報告によると、爆弾は生物群の鼻先に着弾して炸裂。後続も後から着弾した爆弾に飲み込まれて四散していったそうだ。先頭がやられて侵攻速度が著しく低下した所へ今度は偶数隊によるバルカン砲の制圧射撃が降り注ぐ。各機の間隔を広めにしていたので発射された20mm砲弾は広範囲に着弾し、玉突きを起こして殆ど動きが止まっていた後ろの群を次々に引き裂いていった。エンジンとバルカン砲の轟音を残して飛び去っていく。

「鷹の目から警戒本部へ、生物群に多大なる損害を認むものの殲滅には至らず」

「警戒本部了解」

F-2編隊が上空で集結して再度進入を開始。今度はさっきと逆で西から進入して爆撃する。2番機率いる偶数隊が先導し、その後方から奇数隊が追従した。

「2番機から各機へ、投弾準備せよ」

偶数隊は編隊を保ったまま東進。さっき奇数隊がどうやったかは見ていたのでもっと効率的にやりたいものだ。制圧射撃を行った時よりも各機の間隔を広くして進む。上手くいけば中央から後方まで全てカバー出来そうだ。編隊の2番機としては腕の見せ所である。

「投下まで秒読み開始………………5・4・3・2・1、今!」

無誘導爆弾を一斉に投下、一気に加速しながら西へ離脱していった。報告によると目論見通りとまではいかなかったが残った群の中央に連続して炸裂。進行速度はほぼ0になり大半の小型種を掃討する事に成功したらしい。そこへ奇数隊が襲い掛かって制圧射撃を慣行。生きているのも死んでいるのもバルカン砲の雨によって引き裂かれていった。これで搭載している火器の殆どは使い果たした。基地へ戻るべく上空で再集結して編隊を整える。

「クロウリーダーから警戒本部、爆撃終了、一時帰投する、以上」

「了解、次に備え待機せよ」

F-2編隊が帰還していく。爆撃の煙も晴れ、当たりが再び静寂を取り戻した。同時に地上部隊がゆっくり動き出して次の命令に備えるべく軽い配置転換等を開始する。


爆撃の終わった一帯へ鷹の目が再び進出。殆どは掃討に成功したがまだウロついている小型種が十数体居た。混乱からは立ち直れて居ないらしい。爆撃によって足は何本か引き千切れ、甲殻に突き刺さった破片で体中から出血している。動きも緩慢になっている今がチャンスだ。

「鷹の目から警戒本部、残った小型種はいずれもダメージを受けて動きが鈍い、後方の熱源は未だ出現の兆候を見せず」

「警戒本部了解、鷹の目は引き続き監視を続行、アタッカー各機は直ちに離陸」

仮設ヘリポートから4機のAH-1Sが離陸。残った小型種の掃討に向かった。途中で全域の監視を行っていた帯広1と合流する。

「こちら帯広1、指揮を預かる」

計5機は生き残った小型種の居る場所へと急行。数は目視で20も居なかった。余り時間は掛けられない。とっとと済ませて女王の出現に備えよう。

「帯広1からアタッカー各機へ、機関砲による制圧射撃を実施せよ、手早く済ませろ」

「アタッカー了解、始めるぞ」

残敵掃討が開始された。地上でのたうつ小型種に再び20mm砲弾の雨が降り注ぐ。10分も経たない内に掃討は完了して5機は引き上げて行った。無数の死骸だけがそこに残る。これで地上を歩く生物は全て掃討が完了。後方に陣取る熱源は未だに動きを見せていない。


警戒本部指令所

「…………次はどう出る」

「いよいよ女王のお出ましか……もしくはまた中型か小型で攻めてくるか」

人間を相手にするのと違い、知能があるのかどうかも分からない生物の動きを予想する事は困難である。一応考えられる事態を想定して準備はしてあるが万全とはいかない。もし連中が本気で物量に物を言わせて攻めて来たらこっちの阻止線など簡単に破られるだろう。雪崩のように押し寄せる小型と動きを統制する中型、そしてその後方を優雅に歩く女王、崩壊した警戒線と非常線、蹂躙される帯広、考えたくもない光景だ。その挙句に群から離脱して好き勝手に動き回る小型の小集団も厄介だ。獲物を求めて広大な山中を彷徨われでもしたらもう手に負えない。

「念のためだ、女王の出現に備えよう。非常線から上がって来た戦車隊を前に出す。」

「了解」

「特科も陣地構築させろ。山の向こうにいる第1特科団に座標データは渡ってるか?」

「データはリンクしていますしMLRSと20榴の射撃準備も既に完了しています」

「各部隊へ次が本命だと思えと通達しておけ」

「了解」

「宗谷海峡から情報はないか」

「今の所は何も。ですが情報本部からの報告で、ウラジオストク周辺で通信量が増えつつあるそうです。表立った行動は確認されていませんが頭に入れて置くべきでしょう。」

「暇な連中だ……津軽海峡付近に潜水艦は居るか」

「うずしおとなるしおが海峡監視中です」

「もし動きがあった場合は海峡監視を水上艦艇に任せて2隻を日本海へ回すぞ」

「了解、伝えます」

別に連中が何をしようと構わないが庭先でうろつかれると目障りだ。用意しておいて損はないだろう。


戦車中隊・90式車内

「………静かになったな」

「これで終わりならいいんですがね」

松田一曹と石岡二曹がボヤく。さっき警戒本部から「次が本命だと思え」と言う内容の通信が入ったので気は抜いていないが必要以上に力んでもいない。さっき同期の普通科隊員と緊急時の動きを軽く打ち合わせしたのだが、戦車隊の無言のオーラが凄いと言われたので中隊長へ具申し各車へ余り力むなと伝えて貰っていた。気持ちは分かるが焦って突出して群の中に取り残されるような事態になったら最悪だ。それで航空・砲撃の支援を妨げるような事になれば部隊の面目も立たなくなる。松田自身はあまり面子等を気にしない人間だったが律する所はしっかりするべきだと思っていた。仲間は沢山居るのだから我々が最後の砦と思わず他の部隊を頼っても罰は当たらないだろう。

「次はどうなると思います?」

「検討もつかん。しかしあれだな、どうもこちらの出方を探ってるようにも見えるが…」

「300匹以上犠牲にする威力偵察もどうかと思いますね。でも連中の物量が不明な点を含めるとそれも考えられますよ。次は1000匹近く出て来そうですね。」

「お前は涼しい顔して怖い事言うな」

「そりゃどうも」

「まぁ……それぐらいの覚悟はして置くべきか」

本命が出て来るか中型・小型の混成で攻めて来るか、それかまた小型の大群かは予想出来ない。こちらから下手に攻勢を仕掛けられない以上は連中の出方を見るしかなかった。

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