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特殊生物災害  作者: onyx
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インターバル

現在地:上士幌町警戒本部から北へ数キロ地点

時刻:11時03分

「中隊長より各車、各個に敵を撃破せよ、攻撃準備」

今度は中型の群が出現。数は20体。南下中のこれを迎撃すべく警戒本部で待機していた戦車中隊が布陣した。のそのそと前進を続ける連中の前に陣取って正面から迎え撃つ。田園の一本道に16両の90式が並ぶ光景は中々のものだ。無論その中には松田一曹が指揮する小隊も含まれている。

「弾種徹甲、距離」

「弾種徹甲、距離3800、もう少し待ちます」

相変わらず落ち着いた声で石岡二曹が答える。自動装填装置がAPFSDSを押し込む音を聞きながら照準機を覗いていた。集団でゆっくり南下して来る中型が見える。これだけに集中出来ればいいのだが女王らしき熱源も同じく依然として地下をゆっくり南下中だ。いつ出てくるが分からないので中型の排除を急ぎたいが焦っても仕方ない。もし出て来たらまず20榴とMLRSが降り注ぐだろう。仮に小型の群がまた出現した所で90式の敵ではない。取り付かれたとしても轢き殺すなりして振り払えば十分だ。あれに50tの戦車をひっくり返せるだけの力が無いのは明らかだし自慢の鎌を叩き付けたとしても装甲には歯が立たない。暫く待ち続け、先頭との距離が3200を切った。もう少しである。

「先頭との距離3200、群が次第に射程内へ進入しつつあります」

「攻撃用意」

中隊長の命令が聞こえた。小隊各車に下命し何時でも撃てるようにしておく。各車がもう1度照準を合わせるかのように砲身を僅かに上下させて左右に振った。狙いは被ったっていいのだ。当たり所によっては貫通して2体目に突き刺さる。そして…

「全車、攻撃を許可する」

「撃っ」

90式全車がほぼ同時に射撃を開始。砲弾を受けた中型が焦げた肉片と甲殻を撒き散らして次々に倒れていった。胴体・下腹部にAPFSDSが食らい付いて内部を引き裂き、ほぼ一撃で行動不能になった所で2射目を叩き込んで仕留めていく。10分と掛からない内に制圧が終了した。流石に中型と言えどこの火力には耐えられないようだ。そもそも同規格の戦車を撃破する為に開発された物なので生物が耐えられる訳がない。

特撮に出て来る怪獣ならば話は別だが…

「中隊長から各小隊、撃ち方止め」

「帯広1から警戒本部、中型の掃討が終了、南下中の熱源は未だ出現の兆候を見せず」

「警戒本部了解、監視を続行せよ、戦車中隊は警戒態勢を維持したまま後退」

上空を周回する帯広1が見守る中、小隊毎に別れた戦車中隊が後退を開始した。警戒本部の近場まで戻りそこで補給を受ける予定である。その時だった。帯広1よりも高空で監視していた「鷹の目」が異変に気付く。


観測ヘリOH-1 コールサイン「鷹の目」

「新たな熱源を探知、急速に拡大中、地表に出る可能性大」

後席観測員の河村二尉が一斉に広がっていく熱源を見つけた。熱源はさっき撃破した中型の後方に発生。この広がり方は小型種である可能性が高い。パイロットの大井二尉が本部へ一報を入れる。

「鷹の目から警戒本部、新たな熱源を確認した、小型種と思われる、地表へ出現の可能性大」

「警戒本部了解、監視を続行せよ」

「大井、熱源の真上まで進んでくれ、そこで監視する」

「了解」

鷹の目が前進。熱源の真上で停止し観測を開始した。出現したら直ぐに発見出来る場所である。幸いまだ地上には出ていない。この間に迎撃の準備が進めば左程被害もなくまだ退けられるだろう。誰もが思うその期待に応えるべく本部周辺の迫撃砲・特科陣地も再び慌しくなっていた。次いで待機していた補給部隊も戦車隊を出向くべく前進を開始する。

「鷹の目から警戒本部へ、熱源は尚も増加中、至急迎撃の用意が必要と認む」

「くそ、出るならとっとと出て来やがれってんだ…」

愚痴を吐きたいのは全員が同じだった。チマチマ出現してないで全部一気に来ればそこで殲滅出来る。その方が次に備える為に神経を尖らせるより幾分か楽だ。地上では戦車隊が順調に後退し、もう少しで補給部隊と合流出来そうな距離まで近付いている。

その様子を少し後方で眺めている部隊が居た。静内から派遣されている第7高射特科大隊の1個中隊である。87式自走高射機関砲を装備しており、小型種の掃討を支援する為に派遣されていたがここに来て遂に出番が回って来そうだと判断した中隊長は各車へ射撃準備を下命。いつ命令が来ても動けるようにするべく準備を始めていた。戦車隊の後退が間に合わず、もし群とごっちゃになって航空・特科の支援が望めなくなるような状況になれば恐らく自分達の出番となるだろう。なるべくならそうはなって欲しくないが備えるに越した事はない。


警戒本部指令所

「状況」

指揮官の工藤一佐と幕僚達が地図に置かれている各部隊を表す駒を見ながら状況を再確認する。如何に連中の侵攻を効率良く阻止するかがカギだ。何が起きても直ぐ対応出来るようにして置かなくてはならない。

「戦車中隊は順調に後退中、もう間もなく補給を受けられます」

「新たに発生した熱源は依然出現の兆候を見せず広範囲に拡大中、鷹の目からの続報はありません」

「対地装備のF-2編隊が上空待機中です」 「迫撃砲及び特科陣地の射撃体勢が整いました」

「静内から来ている高射特科中隊が出動待機中、何時でも出せます」

「帯広市の避難が完了しつつあります、道警SATと銃対は装備を整え出動待機中」

もし今出現しても特に問題なく退けられそうだ。山の向こうに布陣してる2個特科大隊の火力を当てにした方針でも大丈夫な気がする。戦車中隊の転進が間に合わなければそれもいいだろう。

「よし、何か懸念事項は?」

「午後から天気が崩れそうです。にわか雨程度と思われますが局地的に強い雨が降る可能性があります。」

「ヘリの運用に支障はないな?」

「大丈夫ですが地上の部隊へ一応連絡を回して起きます。緊急時は田んぼを突っ切らせる事もありますので。」

今はこんな所だろう。取りあえず女王にとっとと出て来て貰いたい。このままでは交替で休息に入るのもままならない状態だ。後方の非常線まで上がって来ている部隊を交替に投入するのも1つの手だろう。やるなら手遅れになる前にやるべきだ。直ちに命令する。

「非常線に上がっている部隊の一部をここまで前進させよう。前線に居る部隊の交替に備える。」

「了解しました」

これで当面問題はないと思われる。埋設した障害はもう無いが他の支援はほぼ無尽蔵だ。弾薬もまだまだある。この時の為に備えて来たのだ。負ける訳にはいかない

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