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特殊生物災害  作者: onyx
6/16

第一波

現在地:上士幌町警戒本部周辺

時刻:09時45分

女王らしき熱源の発見から約30分が経過。現状は別の熱源が女王らしき物の前方に出現しこれも南下中だ。恐らく前衛か何かだと思われる。この報告を受けて千歳基地に集結していた対地装備のF-2が直ちに離陸、現場空域まで進出し現在上空待機中だ。そしてその時が訪れる。地面が割れて夥しい生物の群が出現した。これが前哨戦になるだろう。発見したOH-6が警戒本部へ発見を報告。

「帯広1から警戒本部、敵生物群出現、位置は芽登取水ダム一帯、数は目視で約100以上、中型5体も視認………群が南下を始めた」

「警戒本部了解、現場空域より後退し障害の戦果確認を行え」

「帯広1了解」

群は道道468号線を越え国道273号線沿いに南下を開始。特に統制はされていないようで、小型だけの大群で進行している。その後ろを中型がのそのそ進んでいた。もう少し進めば障害のある地帯に入る。


10分と少しが経過すると小型種の群が障害設置地帯に侵入し始めた。数十m四方に渡って埋設された爆薬の威力はほぼ一撃で群を殲滅出来るレベルだ。取りあえずこれで大打撃を与えて削れるだけ削る。

「帯広1から警戒本部、群は順調に埋設地帯へ侵入中、もう間もなく秒読みを開始する」

群の内、その約半分が埋設地帯へ収まりつつあった。一回きりの爆破になるが今使わないで後で痛手を被るような事態になったら悲惨である。元々こういう事態のために準備したのだ。そろそろ頃合だろう。

「秒読み開始…………5・4・3・2・1、今」

「爆破」 「爆破」 「爆破」

埋設された爆薬へ一斉に起爆指令が送られた。前進を続ける小型種の足元が噴き上がり、轟音が警戒本部まで鳴り響く。何十体もの小型種が上空に舞い上がってそのまま絶命していった。後続の群も多数が衝撃で吹っ飛んで進行がほぼ停止したのを確認、混乱から立ち直れない今がチャンスだ。

「帯広1から警戒本部、効果確認、埋設地帯に居た群は殲滅、後続の進行がほぼストップした」

「警戒本部了解、次の段階に移る」

上空で待機していたF-2編隊へその旨を通達。高度を落として進入を開始した。無誘導爆弾による空爆が始まる。

「クロウリーダーより警戒本部、進入を開始する」

「了解、頼んだぞ」

8機のF-2が西から進入を開始。このまま投弾し東へ抜ける。

「各機、投弾準備、マスターアームオン」

編隊を崩さずに飛行を続ける。地表で大量の何かが蠢いているのがギリギリ目視出来た。あそこへ積んで来た爆弾を全て叩き込めばいい。進路修正を行い、暫し飛び続け投弾ポイントに到達する。

「全弾投下、投下後は上空待機せよ」

数十発の無誘導爆弾が投下された。地表へ向け降下していく無数の爆弾を尻目にF-2編隊は東へ離脱。機関砲による制圧射撃要請に備え上空待機に入った。

「帯広1から警戒本部、効果確認、着弾地点周辺の小型種はほぼ駆逐された」

「支援ヘリ部隊は直ちに発進、残敵掃討を開始せよ」

「了解、直ちに発進する」

北部方面ヘリコプター隊から派遣されている各種支援用のヘリ部隊が離陸。UH-1Hを中心とした部隊で、主に輸送を専門にしているがこう言った残敵掃討も任務の1つだ。M2重機関銃を搭載し散り散りになってウロウロしている小型種の掃討に向かう。だがここで爆発の衝撃から立ち直った後方の中型種5体が前進を再開した。このまま進めば残敵掃討を行うヘリ部隊に影響を及ぼす可能性がある。

「帯広1から警戒本部、後方の中型種が進行を再開、残敵掃討の邪魔になる可能性あり」

「警戒本部からクロウリーダーへ、再度攻撃は可能か」

「こちらクロウリーダー、機関砲しか使えないが攻撃は可能だ、しかしヘリ部隊が危害範囲に入る恐れがあるため一時進出を中止する必要がある、判断を求める」

「了解、対戦車ヘリで対処する、一時帰投し装備を整え待機せよ」

「クロウリーダー了解、一時帰投する」

編隊が機体を翻して帰っていった。一時帰投の入電を受けた千歳基地では燃料・弾薬補充の準備が進むと同時に現場ではAH-1Sの編隊が離陸。中型種を仕留めるべく急行した。

「アタッカーリーダーから各機、中型が相手だ、気合入れて行け」

「2、了解」 「3了解」 「4了解」


支援ヘリ部隊 コールサイン「ハンター」

「くそ……まだか」

「今向かってるそうです」

散り散りになった連中が集結して小集団を形成し始めていた。中型種との距離は微妙な感じである。さっさと包囲して制圧射撃を浴びせたいがあまり危険な事は出来ない。待機中のヘリ部隊は対戦車ヘリの到着を待つ事にしていたがそろそろ拙そうだ。

「ハンターリーダーから警戒本部、小型種が再集結し始めている、数は20体にも満たないがこのままだと再度南下する恐れあり、AHの到着はまだか」

「こちら警戒本部、現在急行中だ、もう少し待て」

「こちらアタッカーリーダー、現着した」

ハンター隊を通り越して最左翼に居る中型の横に展開。4機で1体ずつ仕留める。

「各機、関節部を集中的に狙え、動きを止めるぞ、攻撃開始」

20mm機関砲の掃射が始まる。何本かある足の関節に攻撃を集中。20mm砲弾に引き裂かれた肉片と甲殻が弾け飛び、体と足が次々に離れていった。片側の足を全て失って体液を撒き散らして悶えている。最早まともな前進は不可能だ。後は特科にでも任せればいい。

「よし次だ」

その様子を見ていたハンターリーダーはこれなら大丈夫そうだと判断し直ちに残敵掃討を開始。小集団を包囲して制圧射撃を行った。

「ハンターリーダーから各機、包囲して射撃開始、一匹も残すな」

M2重機関銃から放たれた50口径弾が降り注ぐ。一撃で粉砕され、土煙の中で次々に死んでいった。各機が100発も撃つ前に掃討が成功。これで出現した小型種は全て駆逐された。後は中型だけである。

「こちらハンターリーダー、小型種の制圧に成功」

「警戒本部了解、アタッカーリーダー、状況を報告せよ」

「アタッカーリーダーから警戒本部、もう少しだ」

中型も既に残り1体となった。足を失った4体はまだもがいているが動けないので放っておいてもいい。最後の1体に火線を集中しその動きを封じた。

「こちらアタッカーリーダー、5体の動きを封じる事に成功、まだ生きているがまともな行動は不可能、今の内に仕留めてくれ」

「警戒本部了解、両部隊は帰投せよ、これより特科による制圧を行う」

「了解、帰投する」


ヘリが引き上げて行った。その様子を後方で見守りつつ監視を行っていたOH-6が再度進出。特科の観測支援を開始した。

「こちら帯広1、このまま観測を開始する」

「警戒本部から特科陣地へ、以後は帯広1の着弾修正指示に従え」

「特科陣地了解、座標を送れ」

「帯広1から特科陣地、座標を送る」

警戒本部の後方に陣取る第5特科隊の99式自走155mm榴弾砲が射撃準備に入る。長い砲身を上下させて中型の居る場所へ届くよう調整。砲弾が装填され射撃準備が整った。

「こちら特科陣地、射撃用意良し」

「帯広1了解、射撃どうぞ」

「第1斉射開始」

轟音と共に砲弾が一斉に撃ち上がり、もがいている中型にトドメを刺すべく飛翔していった。射撃指揮所の隊員たちがPCと時計を交互に見ながら着弾までの時間を数える。

「…………弾着……今」

着弾の音が遠くから聞こえた。修正射の指示を待つ。

「帯広1から特科陣地、着弾修正…」

修正指示に従い再び射撃準備を開始。準備が整い修正射が行われた。

「弾着……今」

再び着弾の音が聞こえる。これでどうだ…

「帯広1から特科陣地へ、目標への弾着を確認、制圧完了」

「特科陣地、了解した」

「警戒本部から帯広1、第2波は確認出来ないか」

「今の所は確認出来ない、南下中の熱源以外地表に居る生物の姿なし」

「警戒本部了解、一時帰投せよ」

「帯広1、了解」

どうやら第1波を退ける事に成功したようだ。隊員たちも安堵の表情を見せているがまだ安心出来ない。再び監視モニターや動体センサーを注視し、各部隊の展開状況を確認する。変な病原菌が発生しない内に死骸の焼却処分を行いたかったがこの状況では難しい。後でヘリから除染剤を撒いて一帯を一時的にでも綺麗な環境にした方がいいだろう。


警戒本部指令所

「…………取りあえず退けたか」

工藤一佐が椅子に腰掛ける。首脳陣も一息ついたといった感じだ。

「特科へ弾薬補給を急げ、ヘリの整備もな」

「了解」

「千歳基地へ連絡、再度出現の兆候あり次第直ちに連絡と伝えろ」

「分かりました」

再びのどかな田園に戻ったが南下中の熱源が気になる。特に続報がないのでまだ出現はしていない。

「続報はないか」

「ありません、依然南下中です、現在地は糠平湖の北東です」

「夜には出てくるか、各隊は交替で休憩に入れ」

地上部隊にその旨が伝えられた。少し休む事になるがいつ出現するか分からないので気は抜けない。長い1日になりそうなのは誰もが感じていた。


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