黄緑色ドロップ ファッションセンス
私は本棚の片隅にある、黄金色のドロップ缶を手にした。フタを開け、右手でひと振り。
左の手の平、【想い出ドロップ】が1つ転がり落ちてくる。
【黄緑色ドロップ】だ。それを口に含むと……
あの想い出がよみがえってきた。
そう。【ファッションセンス】の想い出が。
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黄緑色ドロップ ファッションセンス
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突然だが、私はファッションに全く興味がない。
年中Tシャツを身につけ、色も黒とか紺とか地味なものばかり。
「もっとファッションに気を遣いなさいよ」
ある日、彼女がそう言ってきた。ちなみに彼女は【忘れすぎな女】。財布や携帯をよく忘れる彼女だ。物忘れもかなりヒドイ。
「デートの時は、もうちょっとマシなカッコしてきてよ」
「う~む……」
そう言われても困るだけだ。
「いつも地味なカッコでさ、ダサいのよ」
ならばと
「じゃぁさ。どんな服がいいか、コーディネートしてよ」
彼女に服を選んでもらう事にした。
大きなデパートに出向き、彼女が服を選び出す。
しかし……
女性というのは洋服を1つ2つ買うのに、どうして何時間もかけられるのだろうか?
でもまぁ、私も本屋なら1~2時間過ごせるのだから、興味ある事ならそうやって時間を費やすのもアリかと納得する。
ようやく彼女が選んだのは【黄緑】色のTシャツだった。蛍光色の強い、自分なら絶対買わないTシャツだ。あとは、スポーツタイプのTシャツやカーキ色のズボンなどなど。
翌週。
彼女の買ってくれたTシャツとズボンを着用して、私はデートに赴いた。
「ダサ!!」
私を見た彼女の第一声だ。
「え!? でもコレ、君が選んだ服だよ?」
「私がそんなダサい服、買うわけないでしょ!」
「…………」
彼女は非常に物忘れがヒドイ女性だ。
後に彼女はこう語る。
「元がダサいヤツは、何を着てもダサいのよね」
いや……
何故彼氏にしたの?
金?
(おしまい)