水色ドロップ 3滴の見返り
私は本棚の片隅にある、黄金色のドロップ缶を手にした。フタを開け、右手でひと振り。
左の手の平、【想い出ドロップ】が1つ転がり落ちてくる。
【水色ドロップ】だ。それを口に含むと……
あの想い出がよみがえってきた。
そう。【3滴の見返り】の想い出が。
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水色ドロップ 3滴の見返り
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これを読んでいるみなさん、こんな経験はないだろうか?
「ホワイトデーにあれが欲しいな」
バレンタインデーにチョコを貰っていないのに、ホワイトデーにお返しを要求された事が。
私はよくある。100%チョコなんか貰ってないし、過去にも貰った事がないのに……ホワイトデーに何かを要求されるのだ。
今回は数あるエピソードの中から、1つを紹介しよう。
とある女性と、一緒に出かけた時の話だ。彼女ではないが、私はその女性に気があった。その日は初めてのデートだった。
「ホワイトデーにさ。お返しとして、●●のCDが欲しいな」
デート中、そう言われた。
「いや、バレンタインにチョコ貰ってないし」
一応反論するが、次の言葉は予想できる。
「嘘! 絶対あげたよ、チョコ!」
気のある女性からチョコ貰って、それを忘れる男がこの世に存在するだろうか。
「いやいや。絶対貰ってないから」
気があるとはいえ、彼女ではない。そう簡単に貢ぐ君(死語)になるワケにはいかない。
「じゃぁ、これあげるからさ。CD買ってちょうだい」
その女性から、手渡されたものが……
空っぽのペットボトル。
「…………」
もう1度言う。空っぽのペットボトルを手渡された。
「あの……コレ、何?」
その女性はこう言ってのけた。
「【水】が2,3滴入ってるよ!」
そう言った女性の笑顔は、今でも忘れられない。本気でそう言ってる。
「それ、バレンタインチョコの代わりね。
だからホワイトデーに……」
いや、さすがの私もね……
ここはガツンと!
ホワイトデーに、要求されたCD買ってあげましたよ。
(おしまい)
実はこの話、後日談がある。
ホワイトデーからわずか5日。2度目のデートを約束してたので、その女性にメールしたら……
【Unknown User】。メールアドレスを変えられていた。
ならばと電話したら……
電話番号は変わってないハズなのに、着信拒否のリストに入れられたようで繋がらなかった。
その女性とはもう終わり……かのように見えたが……
さらに後日談がある。それはまた、別の機会に。