赤色ドロップ 赤の女
私は本棚の片隅にある、黄金色のドロップ缶を手にした。フタを開け、右手でひと振り。
左の手の平、【想い出ドロップ】が1つ転がり落ちてくる。
【赤色ドロップ】だ。それを口に含むと……
あの想い出がよみがえってきた。
そう。【赤の女】の想い出が。
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赤色ドロップ 赤の女
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中学生の時の話。
自分で言うのも何だが、けして【中学の時、イケてない】グループに属していた事実はない。学業成績はまずまず良かったし(想い出色のドロップ~日常編~【灰色ドロップ】参照)、部活もハンドボール部に所属しレギュラーだった。
中学3年生のある日、同じクラスの女子に告白された事がある。ストレートに
「私、●●君の事が好きなの」
そう言われた。どちらかと言えば、まぁ可愛い子ではあった。
ただ……
彼女は【見える】女の子だった。
なんていうか、幽霊とか霊とか。私は霊感など全く無いが……まぁ、見える人もいるのだろう。
ちなみに彼女は告白しただけで、「付き合って」とかそういう要求はなかった。
ただ彼女は、クラスメイトの男女問わず
「私、●●君の事が好きなの」
と明言していた。
彼女は……変な空間を見つめる事がよくあった。目線をそらさず、ずっと【そこ】を見つめる。しばらくすると、その視線は何かを追って移動する。
私には見えなかったが、おそらく【そこ】には【いた】のだろう。彼女にだけ見える何かが。
当時金縛りや、夜中に変な金切り声が聞こえる事がよくあったが……
まさか彼女のせいではあるまい。
幽霊とかそういう霊的なものを非常に恐れていた私は、彼女を避けていた。
元旦、彼女から年賀状が届いた。
名前や住所、全て【赤】文字で書かれていた。
人の名を赤文字で書くのは失礼にあたると言われている。理由は諸説あるが、死んだ人の名前を赤文字で書く風習から、生きている人の名前は赤文字で書いてはいけないという説もあるらしい。
ちなみに年賀状に書かれた内容と言えば、ごく普通だった。今思えば……好きな男子に、頑張って年賀状を書いたのだろう。そう思うと、返信しなかった事に少しばかり胸が痛む。
余談だが、1週間後に昭和天皇崩御のニュースが流れた。
まぁ、この話はここで終わるのだが。
それから時が経ち……
私は高校の後輩からラブレターをもらった。しかも直接手渡された。
ただ、あれはラブレターと言ってよい物なのか今でも迷う。
和紙を30cmぐらいだろうか。三つ折りにして、上下をきちんと下側に曲げ、表には
【果たし状】
と、習字で書かれていた。
中を広げると、筆ペンで書かれた文章が。内容を要約するとこうだ。
【私をデートに連れて行きなさい。でないと呪うわよ】
最後の1行には達筆な本人の名前と、拇印が押されていた。
「それ、私の親指をカッターで切って、血で押したものです♪」
血判だった。
(おしまい)
この後どうなったかって? 誰も聞いちゃいないか。笑