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可能性

そういえば書き忘れてたんですけどオムニバス形式?になると思います。あとWordで書いてました。

可能性 田島圭吾


 愛理に碌な情報も与えずに学校に行かせたことを正直後悔している。とはいえ、少しでもこの世界の真実に近づくためには多少の犠牲は仕方がないことだろう。

「もうすぐ昼休みだよね。普段から人気がない教室に案内してもらってもいい?」

「んー…理由はわかりませんけど、思い当たりはありますね。そこの階段で三階まで登りましょう」

そうして、たどり着いたのは音楽室だった。音楽室の扉を開けると、右奥、窓ガラスの手前にはグランドピアノがあり、左には椅子が均等に並べてあった。入口から右に沿ってまっすぐ行くとまた別の扉がある。ここは恐らく準備室だろうか。反対側には机が三つ、そのうちの一つには花瓶があり、白いユリが飾られていた。

「昼休みになったら、美香ちゃんをこの教室に呼んでもらってもいいかな?」

そういうと、彼女は頷き、同時にチャイムが鳴った。学校のチャイムは自動で鳴るようになっているそうだ。

「今呼びました。彼女はフッ軽ですから。すぐに来るはずですよ」

そういうと彼女は床に座った。

「ほら、もう来たみたいです。走ってきたんですかね?」

「ずいぶん早いね。ちょっとスマホ借りてもいい?」

そうして、彼女から少し強引にスマホを借りていくつかDMを送った。

「ごめん、急に呼び出して。教室の隅に花瓶が置いてあるよね。白いユリの。あれ、眺めてもらっててもいい?」「え?」「なに?」「ロマンチスト?笑」「いいから」

「愛理ちゃん、その花瓶床に置いて」

そうして彼女が花瓶を床に置く。

「花瓶、どうなってる?」「どうなってるって…」「なにもないよ?」「机の上にある」

返信をしようとすると、愛理にスマホを奪われた。

「なんでこんな長文ばっかりおくってるんです?おじさんじゃあるまいに」

「そりゃあ君より三つ上だからね。おじさんって言われても仕方ないじゃん」

「けど、これで一つ疑問が解消された。」


可能性 中西愛理


 美香にDMで写真を送ろうとしたけどなぜか送れなかった。同様に電話をかけることも不可能みたいだ。今回の事件を美香に話そうと思ったがやはりやめた。美香はなんにでも口をはさみたがる。今回の事件のことを言ったらLINEでスタンプ爆撃やらなんやらされるだろう。それは少し面倒だと考えなおし、美香には適当な理由をつけて帰ってもらった。DM上で何度も平謝りをした。

 それにしても疑問が解消されたとは何なんだろう。そう考えながら音楽室の椅子に座った。彼は向かい合うようにして机の上に座っている。

「愛理ちゃん、並行世界って知ってる?」

「ネットの記事で少しだけ見たことがあります。都市伝説とかフィクションの類ですよね?どうして今そのような話を?」

「朝起きたら世界は植物に侵され、人々がいたであろう場所には抜け殻だけが残された。十分ファンタジーだよ、この世界も」

「それは確かにそうですけど…というか服の塊のこと抜け殻って呼んでるんです?」

彼はいったい何を考えてるんだろう?平行世界…一つの世界から枝分かれして平行、同時に存在するもう一つの世界のことだったはず。

「もしかして、美香たちは、みんなは並行世界にいるってことですか?」

「ああ、恐らくね。もっというと俺たちがいるのは元いた方じゃなくて分岐した方の並行世界なんじゃないかな」

だとしたら…元の世界に私たちはいない。完全に消えてしまったのだろうか。

「だとしたら、どうしてDMが送れるんです?インスタって時空を超越するようなオーパーツではないですよね?」

「それについては、正直説明のしようがないかな。もしかしたら、私たちは不完全な状態で存在しているのかもしれない」

不完全?どういうことだろう。彼の表情から察するに、彼もまだこの推論を完成させられていないのだろう。

「もしかして、あの服の塊とか、その辺に放置してある車とかのことですか?…私たちはこの世界に移動して、本来消えるはずだった。彼らのように。しかし、私たちは今ここに存在している。だから何らかの不具合が発生して並行世界が部分的に干渉している、もっといえばインターネットは元の世界から完全に切り離されていない。ということでしょうか」

「…だとしたら、我々は並行世界をテレポートしたわけでもなく、枝分かれしていく世界に運ばれてしまった…ということなのかな。うーん…氷山が崩れて群れからはぐれるペンギンの動画、見たことある?」

「あります。つまり、私たちは切り離された世界に流されてしまったと、言いたいのですか?」

それなら辻褄が合うのだろうか。なら、なんで彼らは衣類と私たちだけを残して消えてしまったのだろうか…

「悩ましいね。今考えたって仕方ないのかな」


 彼から一つ提案を受けた。本州に移動する、ということだ。人間の整備が行われないので、関門トンネルがいつまでもつかわからないからだ。そして、もう一つ。食糧問題だ。この世界に人間はおろか動物や虫すらおらず、植物しか存在しない。コンビニで買えるおにぎりや弁当はせいぜい四日程度で販売期限が切れてしまうそうだ。冷凍食品ならかなり日持ちするが、食糧問題が解決したわけではない。サッカー部が練習で使用するクーラーボックスを拝借し、その中にコンビニで買える氷を敷き詰め飲料水や冷凍食品を入れた。車にそれを積み入れ終わったとき、時刻は一五時を過ぎていた。

「氷は定期的に交換する必要があるね。そういえば、LINEとか交換してなかったね」

そういうと、彼はQRコードを読み取る準備をし、私も彼に応じてQRコードを提示した。彼のアイコンには喜劇と悲劇の仮面をかぶった男性が二人並んでいた。

彼のステータスメッセージには「この世は舞台。人はみな役者」と表示されている。シェイクスピアの戯曲のセリフを引用したものだそうだ。「高校時代は演劇部だったんだよ、こう見えてね。」彼は自嘲気味に笑いながら言った。


 彼が車を走らせてしばらくたった。路上には車が放置されておりなかなか走りずらく、門司の海沿いの道に出たときにはすでに太陽は沈み月が私たちの頭上に広がっていた。

「ここで一旦休もうか。今日はいろんなことがあったからね」

そう言いながら彼は少し華美なホテルの前に車を停めた。ロビーに入ると、タブレット端末で部屋が選択でき、彼は喫煙ルームを、私は禁煙ルームを選択し、どこからか出した大金を私に手渡した。

「ここが、お金を払わないと内側から開けられなくなるホテル。俺は向かい側の部屋にいるから、何かあったらすぐ連絡して」と「206」と書かれた部屋に入る彼を見送り、部屋に入った。靴を脱ぎ、部屋に入るとそこにはとても広い空間が広がっていた。ソファーに巨大なテレビ。反対側には三人ほどが眠れそうなベッドがあり、その横にはクローゼットが二つあった。左側には何も入ってなく、右側には冷蔵庫と、値段が書かれた自動販売機のようなものがあった。

 浴槽に向くと、そこも例外ではなく、とても広い空間が広がっていた。この客室で狭いのはトイレだけだろう。浴槽にお湯を貯め、風呂に入る準備をする。衣類を洗面所の床にまとめて置き、バスタオルと体を洗う用のタオルを用意する。彼から連絡が来るかもせしれないので風呂場と洗面所のドアを開け衣類の上にスマホを置く。そうこうしているうちに湯舟がたまっていたので蛇口を閉め、真っ白な風呂桶で体を流す。髪を洗い水分を櫛で弾きコンディショナーを塗りつける。体を洗い、十分ほど経過したらコンディショナーを洗い流す。いつのまにか、左腕には切り傷が入っており、白い肌にそれはとても目立った。いつも通りの作業を終え、浴槽につかり、その際にやはり、左腕の傷が少しいたんだ。小さめのテレビをつけたが、何も放送されていなかった。仕方なくテレビを消し、浴槽で時間を過ごすことにした。

 体を拭き、タオルドライをしてからヘアオイルを塗る。ついでにパックも行いスマホで不可解な今日のことを思い出しながら日記をつける。


十二月三日火曜日

 今日は奇妙な一日だった。朝起きて家の中を見渡すと母親はまだ帰っていなかった。朝ごはんとして冷蔵庫に入っていたパンを食べ、家から出ると人々はいなく、植物ばかりが小倉の街に存在していた。人がいたであろう場所には衣類がまとまって落ちていて、マフラーや手袋など、軽めのものは冷風に飛ばされていた。車も建物に衝突しているものが多く、混沌としていたが、人や動物がいなかったのでいつもよりも静かだった。そんな様子なので学校に行くために小倉駅に行ったが誰もおらず、電車も動いていなかった。そのため、どうしたものかと考えていると後ろから声をかけられた。田島圭吾という男性も同じような境遇で、小倉駅に来たのだという。彼の提案を受け車に乗り学校に向かったが、やはり誰もいなかった。彼のバイト先でオムライスを食べている途中、美香からDMが来ていた。それを彼に話すと彼は「検証」を行うため学校に向かった。検証結果から、ここが並行世界なのではないか、という結論に至ったがまだ確証は得られていない。本州に向かう途中暗くなってきたのでホテルに泊まることにした。


こういうホテルって最近一人で止まる人も増えてるみたい。たぶん私も同じぐらいの値段だったらこっち選びます。広いし

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