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選択

実際にあったらしい店舗が由来です。なんか、元カノが行きたがってました

選択 田島圭吾


 店を出て少し歩いたところで急に愛理が足を止めた。そのまま星を見上げているかと思えば急に頭を押さえ頭痛を訴えてきた。この寒い中無理に歩いていたから風邪でもひいたのだろうか。家に着き様態を聞くと、少し痛いがかなり落ち着いたと言われた。

「これ、鎮痛剤。もしまた痛くなったらそれ飲んで元気出して」

「ありがとうございます。でも、これ普通の頭痛じゃない気がします」

「普通じゃないって?」

「なんとなくですけど、熱が出ているわけでもないですし、気圧による片頭痛でも急に来る片頭痛とも違う気がするんですよね。なんというか、脳の一番真ん中から外側に向かって痛むというか」

「そっか、ちょっと横になる?」

彼女は首を横に振り、アイスクリームをテーブルの上に4つ、小気味良く並べた。そうして一直線に並んだアイスを囲むように両端にケーキを2つ置いた。かなり取ってきたらしい。

「もしかしてこれ今から全部食べるの?」

「変なことですかね?いつもこのぐらいは食べるんですけど…」

「いや、まぁ…いいんじゃないかな、若いし」

「それいつも言ってますよね。もう自分はおじさんだ、お前は若いんだから頑張れーって」

「そんなパワハラおじさんみたいな感じなの?ちょっと心外かも」

彼女はいいから食べますよ、と言い私にスプーンを手渡した。バニラと抹茶とチョコとチョコミント。その4つに向き合い彼女はバニラを選択した。私はとりあえずチョコミントを手に取り口に入れると、今まで食べたどのチョコミントよりも美味しかった。

「チョコミント好きなんですか?なかなか面白いですね」

「美味しくない?結構すっきりして好きなんだけど」

「歯磨き粉の味ってよく言われますよね。私もチョコミント好きなので一口ください」

1さじすくい、スプーンを彼女の口に突っ込むと彼女は恍惚とした表情を浮かべていた。

「やっぱりチョコミントは至高ですね、この味がわからない俗物はほんとうにかわいそうです」

「同感。そういえば頭痛は治ったの?」

「完治はしてないですね。まだ少し痛みますが…糖分が効いてきたんですかね?」

「そんなに即効性があるものなの?まあ、和らいだならいいんだけど」

そういった他愛のない話をしているうちに気づけばチョコミント以外のすべてのスイーツを愛理は平らげていた。すごい食欲だ。

「愛理ちゃん、俺の分のケーキは?」

「あ、ごめんなさい。食べちゃいました」

「じゃあ、アイスは?」

「それも食べちゃいました」

どうやら私に選択権はなかったらしい。


選択 中西愛理


 スイーツを全部食べられてしまったことで圭吾さんは少しご立腹なようだ。そりゃ怒るよね、と思いつつ必死に謝ると彼は笑いながら許してくれた。ほっとしたのもつかぬ間、先ほどの頭痛がまた私を襲った。彼に気取られないように眠くなったと、嘘をつきベッドに潜り込んだ。掛け布団を頭までかけていると、頭に掌が触れた。

「世界がツタに覆われて、人間が消えて。そんな世界で愛理ちゃんはよく頑張ったね。偉い、偉い」

そんなことを言いながら彼は手を休めず何度も頭を撫で、時折背中をポンと叩いてくれていた。しかし、その内側で頭痛は休まることを知らず、何度も頭蓋骨を内側から激しく叩いた。瞬間、脳裏に記憶がよみがえった。

 圭吾さんと学校に行ったとき、私は無意識に屋上のカギを開けた。入ったこともないのに、なぜナンバーを知っていたのか。


 十二月二日、私は六限の授業が終わり帰路に着こうと教室の椅子から立ち上がった。その時、背中に確かに掌が触れた。しかしそれは圭吾さんのような、愛情を含んだ触り方ではなく明確な悪意を孕んだ触れ方だった。振り返るとそこにはいじめっ子が三人、立っていた。リーダー格のロングカットが私の耳元まで口を近づけ、着いてこいと囁いた。周囲を見渡しても美香はいなかった。彼女は確か、風邪か何かで休んでいた。だから、彼女たちは近づいてきたのだろう。

 私は屋上のカギを手慣れた様子で外すロングカットをただ見ていることしかできなかった。木っ端のボブカットとショートカットはにやにやと私の方をあざ笑っていた。

 そのまま屋上で私は殴る蹴るの暴行を受けた。ロングは私の髪を掴み、屋上の柵に頭を打ち付けた。

 目が覚めればそこには星空が広がっていた。寒かった。気を失っていたようだ。スマホで時間を確認すると、学校から駅までのバスはもう走っていなかった。情けなかった。美香がいなければ私は何もすることができない、か弱い生物なのだと改めて思いだした。泣きながら学校の一階まで降りたところで違和感を感じた。股のあたりを手でゆっくりと、嘘だと思いながら確かめる。下着が無くなっていた。そして、確かにボールペンが挿れられていた。それをゆっくりと引き抜く。血が滴っていた。初めてをこんな形で奪われたことがさらに自分を惨めにさせた。不幸中の幸いは、それが本物じゃなかったことだろう。

 学校から駅まで歩けば三十分ほどかかる。顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら駅まで歩き、終電に乗り込んだ。小倉駅に着いたころにはすべてが嫌になっていた。この世界をすべて消したい。燃やして、灰にしたい。しかしそれはできないことだ。私はか弱い生物なのだ。駅から出て、飲み屋街の手前に差し掛かったところでネズミが死んでいた。ネズミは他のネズミに肉を裂かれ、血を流していた。ああそうだ、弱肉強食のこの世界で弱い生物が掴むことのできる道はそれだけだ。


 風が強い。マンションの屋上までは存外簡単に侵入できた。屋上の端まで歩き、下を覗き込む。黒い影が二つ歩いていた。私は靴を脱ぎ、丁寧に置いた。仕事明けで酔っ払った母親が脱ぎ散らかした靴を正すように。

 三日月を視界の中心にとらえた。こんなに世界は壊れているのに、月は綺麗に、静かに輝いていた。なんと理不尽なことなのだろう。風がビルの谷を駆ける。それは馬が走るように、力強い風だった。私はバランスを崩し、背中から地面に向かっていった。落ちたときには、地面とは違う衝撃を食らった気がした。私は何とか一命をとりとめてしまったようだ。力なく手を動かすと、それは人間だった。月明かりに反射して金色の髪が目の横で揺れる。

―ああ、もっと色々したかったな…

―幸せになりたかった…


 波止場にはただ、月光が降り注ぎ海を照らしていた。しかしそれも段々と薄れてゆく。


 「圭吾さん」

いつもよりも慎重に、冷静に言った。彼は何かを感じ取ったのだろう。いつもよりも目を暗くさせこちらをゆっくりと覗き込む。

「この世界を終わらせるか、二人で生き残るか。選びましょう」


この次ぐらいから推敲があやふやです。若干の矛盾を孕む展開になってたような…

真面目に読まず、ゆるく読んでください

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