表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

第1話 もう一人の俺

中学3年生の神崎栄太は、成績優秀で悩みも無いにも関わらず、

今日も浮かない表情で過ごしている

数か月前に幼馴染で初恋の女性 小早川千春 を交通事故で亡くしてから、

失意の日々を送っていた


ある日、理科の授業中 授業内容もとっくに自分で勉強してる栄太は、

先生の話も聞き流して窓の外を虚ろに眺めていた 

そんな時教室は話の流れから超常現象の話題になって行った

「先生!超能力ってあるんですか?」「先生!宇宙人っているんですか?」

生徒達が理科の先生を質問攻めにして、教室は盛り上がっていた 

「昨日テレビでやってたなあ あんなのほとんどイタズラじゃい」

と理科の先生は言う

生徒達の中にも超常現象肯定派・否定派入り乱れ教室は盛り上がっていた

それでも栄太は話題に入る気力もなく虚空を見つめている


先生が言う

「理科の教師である以上、

子供たちの前で超上現象を認めるなんて無責任な事は出来んなあ」

「え~」「ほら~」生徒達の議論も白熱し、楽しそうな子供達の表情を見ながら

先生も嬉しそうであった そんな和やかな空気の中、


「先生!」一人の女子がピンと手を上げ言い放った 

先生は驚いて返す「どうした桐谷?」

「まだ人類が解明できてない事は沢山あるのに、

頭ごなしに超常現象を簡単に否定するのは

おかしいと思います」


と、語気を強めて言った彼女の名は 桐谷沙也

黒い真っ直ぐな長い髪、前髪パッツンで 

休み時間も誰かと喋ろうとはせずオカルト雑誌を読んでる

いわゆる“話しかけないでオーラ”を出してる、そんな女子だった


そんな女子が急に喋りだした 

教室には彼女の声を初めて聞いた奴もいるだろう

その驚きと、盛り上ってる場の空気を一気に止めた事も重なり、

教室は静まり返る


これには無関心だった栄太も流石に振り向き、

無言ながらも桐谷に驚きの視線を送る

桐谷はこの静まった空気でまだ続ける

「超常現象はあると思います!宇宙人とか!超能力とかも 

それに、この世界とは別の世界、

パラレルワールドだって本当にあってもおかしくないと思います!」


皆完全に引いている 先生は

「そ、そうだなそういう事が本当にあるかもな」と、

子供の想像力を尊重してあげようという

包容力のある言葉を返した所でチャイムが鳴った

真面目で成績優秀な栄太はオカルトな話など信じるはずもなく、

桐谷の発言は理解できず、する気もなかった


同じく桐谷の発言はクラス内の誰にも理解されず、

彼女は黙って下を向くしかなかった



放課後 栄太は今日も退屈だったと思いながら家路を行く

初恋の人、小早川千春を思いながら

幼い時から好きだった事、教室で喋ったりふざけたりした事

交通事故でこの世を去る前に自分の思いを伝えられなかった事

自責や後悔の念を抱え視線は下がっていく

(千春ちゃん・・・)胸の内で彼女を呼び、

その無意味を痛感し栄太は立ち止まってしまった


違和感を感じた キーンという高い音、いわゆるモスキート音のような音

音は少しずつ大きくなっていく 連動するかのように頭痛が襲ってきた

(何だこれ!?)栄太は頭を押さえながら痛みと恐怖で座り込む

眩暈も始まり平衡感覚も失った 汗も止まらない

突然の耳鳴り、頭痛、眩暈とその恐怖で栄太は気を失った

その瞬間は、まるで何かに引っ張られて連れ去られるような感覚だった



夢を見ることも、走馬灯のような物も見る事無く、

ただ突然に栄太は目を覚ました

「ワー!」と叫びながら伏せてた体を起こし、状況を理解しようとする

さっきまでの耳鳴りや頭痛は無い 心拍数も正常 

体の何処にも痛みも怪我もない

時間もあまり経って無いようだ 普段から冷静な栄太は体に異常がないなら

もうこれ以上止まっててもしょうがないと思い、

家に帰り親に相談しようと思っていた


家路の道中、ふといつもの景色に違和感を感じた 

よく見ると看板や道路標識の文字がおかしい

いわゆる文字化けのような変な文字が書いてある 

それは一カ所や二カ所ではなかった

コンビニや駅の文字、あらゆる文字が微妙にまたは全然違ってる

(何処だここ?道に迷ったかな???)冷静な栄太もうろたえる 

それに普段通学してる家路は

道を間違えるわけがない 余計に栄太はうろたえ、恐怖した

周囲を見回すと 見た事もない3輪の車や、黄色い制服の警察、4色の信号機、

普段とは似てるが少し違う物で溢れていた 

栄太はパニックになってる事を周囲に気づかれぬよう平静を装うのに必死だった


その時視線を感じた 

その先は上空 見上げるとそれは空飛ぶ円盤 UFOだった

超常現象のテレビとかで見る丸い円盤状で

回ってるように見えるまさにそれだった

驚く事が急に起き過ぎてUFOを初めて目撃しても

栄太は感覚が麻痺して驚けなかった


栄太は思い出す 

理科の授業でオカルトマニアの桐谷が言ってた事を

(宇宙人のUFO・・・超常現象・・・

この、いつもと同じだけど少し違う世界・・・)

(ここは・・・まさか・・・)


(パラレルワールド!!!?)


栄太がそれを認めようと思ったその時、UFOが遠ざかっていった

この状況でそれに意味や結果は無いと気づきながらも、

栄太はUFOを追いかけるしかなかった

解らない事だらけで他に今するべき事が見つからないかのように


追いかけても追いつける筈もなく、

UFOは飛び去り、見失ってしまった

走って追いかけるうちに、

このパラレルワールドらしき街で栄太は更に迷子になってしまった

(これじゃ家に帰れないかも、いや、家があるのか?)

栄太がそう思っていたその時


「待て!」と高圧的な声が聞こえた 栄太が振り向くとそこには

黒スーツ上下、白シャツ、黒ネクタイの葬式の様な格好の長身の男が居た

「一緒に来るんだ」黒服の男が言う 栄太は無言のままで居る

「手荒な真似はしたくない」黒服の男は諭すように言う 

この状況で何も信用できる存在がない中で、

栄太はこの見知らぬ男を信用できず

一目散に黒服と反対方向に走り出した 

それは逃げるというより捕まえてみろと挑発するかのようだった


「!待て!!」と怒鳴り黒服は追ってくる 

だが栄太も脚力には自信が有った

追いつかれる様子はない 気を失ってから変な事ばかりだった中で、

捕まらない という事でようやく自分が優位になれる、

主導権を奪えるような気がして

栄太は安堵や余裕さえ感じていた 走り続け曲がり角を曲がったその時


ドカーン! 誰かとぶつかった 

倒れてすぐに我に返りぶつかった相手をみると、そこには

栄太と同じ顔、同じ髪型、同じ学校の制服、

同じ背格好の同じ年代の男が居た


違いと言えば鼻に鼻腔拡張テープをつけてる事ぐらいだった


その男はそっくりというより完全に同一人物だった

栄太「えーーー!!??」 そっくりな男「あーーー!!??」 

二人同時に叫ぶ

そっくりな男「俺がいるーーー!!?」

栄太「こっちのセリフだーーー!!!」

このパラレルワールドらしき街に来て初めてのツッコミがでた直後、

追われてる事を思い出し栄太は立ち去ろうとする

栄太「ごめん!追われてるんだ!」 

そういうとそっくりな男が栄太の腕を掴み

「一緒に来るんだ!」と言い、栄太を細い路地裏に引っ張っていく 

「え?」と困惑する栄太だがお陰で黒服からは逃げきれた


走り疲れて公園で休む二人 ハアハアと息が上がってる

この自分と全く同じ姿の男をみて栄太はここがパラレルワールドなんだと

認めざるを得ないと覚悟していた 栄太はそっくりな男に聞く

栄太「ハア・・ハア・・お前、俺なんだろ?」

そっくりな男は言う

そっくりな男「ハア・・ハア・・そうだよ、俺・・・お前を探してたんだ!」


つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ