天才
俺は軽い運動を終了後、試験場所に戻った。そしてすぐに歴史の試験は終了し、小休憩を迎えた。周りは疲れたように横になっている子がほとんどだ。その中で俺一人だけ普通にしていて少し不思議な感覚になりつつもすぐに魔法学の試験が始まった。先ほどの試験と同様に試験官から用紙を渡されて試験が開始する。俺が一番気になっていたのは魔法学の試験だ。俺の知らないことや、知ってることの応用が出てくるのではと思い心を躍らせていた。
・・・
試験用紙をペラペラめくり問題を見ていく。結果を言うと…面白味はなかった。きっとレインがこの場に居ても同じ感情を抱いていただろう。それほどまでに簡単な問題だった。魔力の大五属性について、魔力と魔法の関係について、魔法発動に必要不可欠な知識について、等々の魔法の初歩問題だった。俺は少し残念がりながら問題を解いていった。歴史の試験以上に解き終わるのは早かった。それこそ開始から40分程度で何周も見直しをしてしまえるほどだった。その後、俺は運動の疲れもかさばり、その場で眠ってしまった。
・・・
俺は今回、1人の試験生のことを注視していた。そいつの名前は、スノー・カイウス。王都からは少し離れた田舎出身の平民だ。俺はそんな彼から異様な雰囲気を感じ取っていた。すると40分経過時に彼が机で突っ伏していた。
「どうした?」
俺が近づき声をかけると寝息が聞こえてくる。ただ寝ていただけだった。6歳の子供が受けるのだ。眠ってしまう子も多い。だからそういうときの対応も決まっている。まず起こす。
「起きろー」
スノー「うーーん…ありゃ?寝てた?」
「おはよう。」
次にテストを回収してもいいか確認。ほとんどないが解き終わって寝てしまう子もいる。そのためこの確認は必要だ。拒否した場合は点数を下げるということだけ伝えて試験に戻す。
「試験用紙を回収してもいいか?」
スノー「あ、はい。もう解き終わっているので大丈夫です。」
「あー…なるほど…じゃあ回収するぞ」
普通の教員なら驚くところだろう。だが俺は驚かなかった。なんとなく予想できていたからだ。歴史が得意で魔法学が苦手という子もいれば歴史が苦手で魔法学が得意という子もいる。彼は後者だろう。何故ならペンの走るスピードが歴史の時より何倍も速かったからだ。それに解いている時の顔からはつまらないと思っているのがまるわかりだった。
「今回は外に出すわけにはいかない。さすがに二回連続はな?だから今回はこれを使って時間を潰していろ。」
スノー「紙?」
「それに落書きでもしてろ」
ただの紙だ。ただし俺の魔法で彼の周りだけ結界を張り、周りからは何も感じられないようにしておいた。これで彼が答えを書いても周りには伝わらないだろう。
それからはすぐに時間が進んでいった。すぐに試験用紙を回収していく。そしてスノーの番になる。
「お前の分はもう回収したからいいぞ。」
スノー「はい。あ、この紙返します。書ける場所なくなったので」
そう言って彼は俺に一枚の紙を渡してくる。俺はそれを見て驚いた。紙が文字や魔法陣で埋め尽くされているからだ。この時間で全てを読むのは無理だが、見た内容だけでも初等学生が学ぶ範囲を優に超えている。中等学生でも3年生でギリギリわかる程度だろう。
「天才か…」
俺は立ち去る彼の小さな背を見ながらそうつぶやいた。