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モブキャラ異世界転生  作者: ゆっきー
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強化

 俺がローレンス学園の運動場にいるととある女性の教員に話しかけられた。


「何をしているの?今は試験中でしょ?」


そう言ってくる教員に俺は試験官からもらった紙を見せる。


「これは…あーそういう感じね。わかったわ。ただ、1人で歩かせるわけにもいかないから私が着くわね。あの人はいつも適当なんだから…」


あの人とは試験官のことだろう。適当…少ししか話していないがなんとなくそんな感じはしていた。俺は運動場につくとすぐに魔法陣を展開し、魔法の練習を始めることにした。


・・・


 私が見回りをしていると1人の子供を見つけた。見た目からして今回の試験を受けに来た子だろう。試験場を抜けていたので注意をしようとしたが、その子はターレン先生の許可を得たうえで外出をしていた。ターレン先生は適当に見えて、意外と状況を読んでいる人だ。この子の外出を許可した理由も何かあるのだろう。私はそう思いながら、子供を1人にするわけにもいかないので、このことを《テレパシー》を使って他の教員に知らせ、私はこの子についていくことになった。ついたのは運動場、今回行われる実技試験の場所は第二運動場で、この子が来たのは第一運動場だった。この子、紙に名前が書かれていたが、スノー・カイウス君は着くや否や、魔法陣を展開する。かなり小規模な魔法陣だ。手のひらサイズしかない。魔法陣を見れば発動魔法の属性、必要魔力量、簡単な魔法なら、どのような効果をもたらすのかすらわかる。スノー君が発動させようとしているのは無属性のただ空気を放つだけの魔法、必要魔力量もかなり少ない。本当に初心者がやるような魔法だ。懐かしい。私も子供の頃、初めて魔法を覚えたときは目を輝かせながら放っていたものだ。私はそんなことを思い出していた。だが、それも徐々に薄れていき、目の前の事象に心が奪われる。魔法陣には確かに魔力が入れられている。なのに発動しない。魔法の発動方法には二種類あり、魔法陣型、詠唱型の二つだ。二つともメリット・デメリットが存在する。今回スノー君がやっているのは魔法陣型だ。魔法陣型の利点は無詠唱で行えること、無詠唱で行うことにより、声などで居場所や性別などがバレる危険性が減る。デメリットとしては綺麗に魔法陣を描かなければ、発動する魔法の効果がガラッと変わってしまうのだ。不発ならいいが、発動してもし自爆のような魔法が起こったら、ただでは済まないだろう。故にスノー君ぐらいの歳の子は詠唱で発動させることが多い。詠唱型の利点は失敗が起きにくいということ。詠唱の文言さえ間違えなければ必ず魔法が放てる。デメリットとしては威力の高い魔法になればなるほど詠唱が長くなる傾向にあること。詠唱が長くなれば、その分隙をうむ。故に戦場などで戦う魔法使いの9割は魔法陣型を使っている。そんな二つの発動のさせ方があるが、スノー君が選んだのは魔法陣型、それでも驚きだが、魔力がちゃんと入っているのに発動しないことにはもっと驚いた。魔法陣型は必要魔力量が入った瞬間発動するはずなのだ。なのにこの魔法陣はその許容量を超えても魔力を蓄え続けている。気になった私はスノー君に聞くことにした。


「スノー君、これは何が起きているの?」


スノー「これは魔力の備蓄をしているんですよ」


「魔力の備蓄?」


スノー「はい、魔法研究をしている界隈でとある実験が行われました。それは魔力の貯蓄です。本来自分の身体に入る魔力量は決まっていて、鍛えることで、その魔力量を増やすことができます。ですがこの研究ではそれを超越しようとしたんです。*魔力袋をもう1つ作ろうとしたんです」


*魔力袋とは生物の体内に存在している器官の1つ。魔力を蓄え、魔法を発動する時はその魔力袋に蓄えてきた魔力から使われる。


「そんなことは可能なの?」


スノー「最初は誰もが不可能だと言っていました。ですがその研究を諦めずに続けた人がいました。それがDr.グレンさんです」


 Dr.グレン、魔法使いとして生きている人の中で知らない人はいないと言えるほどの凄腕研究家である。グレンさんはいろんな魔法、魔道具、理論を発見、発明をした。そんな人が研究し続けたのなら、誰もが成功すると思うほどだ。


スノー「研究をし続けた結果、1つの魔道具を作り出しました。それが、*魔晶石です。」


*魔晶石とはDr.グレンが発明した魔道具の一つで、魔晶石に自分の魔力を貯めることができる。そして魔晶石を使うことで貯めた魔力を使うことができる。外付けの魔力袋のようなものである。


「じゃあ、それが完成形ってことかしら?」


スノー「いえ、グレンさんが作ろうとしたものは完璧に魔力袋と同じもの。外付けではなく、本当に体内に存在する存在でした。それに魔晶石にはとある欠点があったんです。」


「欠点?」


スノー「それは、少しでもかけるとそこから貯蓄していた魔力があふれ出し暴発するということです。その被害は貯められた魔力量に比例して巨大になったそうです。通常の人の魔力量ですら簡単に半径500メートルの爆破被害を及ぼすそうです。」


「危険ね」


スノー「はい。ですがグレンさんはそこで不思議なことに気が付きました。ではなぜ、人間、エルフ、ドワーフなどの体内に魔力を持っている者が死んでもそのような被害が起きないのか。その理由は魔力袋の作りに関係していました。死んでしまった生物の魔力はすぐに身体から出ていくわけではなく。魔力袋が少しずつ放出していたんです。それを発見したグレンさんは1つの魔法袋の鍛え方を発明しました。その名前をグレン流魔力袋拡張法と命名しました。」


「まんまね。で、今やっているのが、それってことかしら?」


 会話中もスノー君は魔法陣に魔力を送り続けていた。


スノー「その通りです。その方法はまず、魔力が逃げないように魔力の結界を張る。そしてその結界に効果を付与する。それは魔力を圧縮するというものです。そしてその結界内で魔法陣に魔力を流し続ける。魔法陣は必要魔力量を超えた魔力が送られると発動してしまいますが、発動しないようにし続けると送られた魔力は外に発散されるんです。それを結界によって圧縮、それを吸い込むことにより、魔力袋には通常より強力な魔力が入るんです。」


「それってかなり大変じゃないかしら。それに魔法陣は魔力を発散させるって言ってもかなりの時間がかかるでしょう?」


スノー「それは魔法が強力だった場合です。今回のように弱い魔法だったらすぐ発散してくれます。それに俺の場合は結界に魔法発散の効果も付与しているので通常より早く発散しています。」


私はいつしかスノー君の話を聞き入っていた。それこそどちらが教師なのかすら分からないほどに。


スノー「こんなもんかな」


スノー君がそう言うと魔法陣は消え去った。


「1ついいかしら?いつのまに結界を張ったの?発動した瞬間どころか、発動していたことにすら気づかなかったんだけど。」


スノー「それぐらい簡単ですよ。三重合成魔法を使っただけですよ。」


「は?」


この世界には合算魔法と合成魔法という二つの同時にいくつかの魔法を発動させる方法がある。合算魔法は単純に同時に魔法を発動するだけ。合成魔法は複数の魔法の効果を一つの魔法にまとめて発動する方法。そのため合成魔法は二重ですらかなり難しいのだ。それを三重?通常ならあり得ないことだ。凄腕の魔法使いですら三重はかなり大変だ。それを6歳の子供がやってのけた?


「本当に6歳なの?」



私がそう聞くとスノー君は少し身体を震わせたのちにこちらに振り返り満面の笑みで答えた。


スノー「6歳以外ならなんだと思いますか?」


私はそれ以上聞くことは出来なかった。その後は試験終了間際までスノー君は運動をしていた。

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