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モブキャラ異世界転生  作者: ゆっきー
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モブ転生

 俺の名前は柳雪、いわゆるモブキャラだ。平凡な身体、平凡な顔、平凡な家庭、学力、人生、人脈、コミュニケーション能力、知識量、すべてにおいて平凡だ。そんな俺には妹がいる。妹も俺と同じで、平凡な人間だ。そして俺と妹はいつしか互いをモブAとモブBと思うようになった。そんな俺たちが仲良くないわけがなく、今日も二人で買い物に出ていた。その日も何事もなく過ぎ去るだろうと思っていた。だが、その日は違った。俺と妹は居眠り運転をしていた車によって轢き殺された。平凡な人生は平凡な終末を遂げると思っていたが、これほど派手な終末を迎えるとは思っていなかった…


 俺が目覚めるとそこは見知らぬ天井だった。声を出そうにも変な声しか出ない…よくよく自分の手を見ると、とても小さい。そして巨人とも思える人物が現れる。そして何とか俺はこの状況を理解する。所謂転生というものだろう。アニメや漫画のようなことが起きるとは思ってもいなかった。


 それから二年後、俺は歩けるようになり、ある程度文字を読めるようになった。この世界での俺の名前は、スノー・カイウスというらしい。カイウス家の長男として生まれた。そして俺が産まれてすぐ、母は第二子を授かり、もうそろそろ出産という時期になっていた。なんとなく予想をしているが、それが正しいのかは分からない。それを確認するためにも俺は母の出産に立ち会った。生まれてきたのは女の子だった。そして母は疲れて眠ってしまった。父も母の体調を気遣い、少し離れた。俺は父から赤ん坊を見てるように言われた。好都合だ。俺は確認しなければならない。俺はその赤子に問いを投げかけた。


スノー「君は玲奈なのか?」


俺がそう問うと赤子は少し首を縦に振る。やはりかと俺は心の中で思った。柳玲奈、俺の妹だ。何故今世も兄妹として生を受けたのかは分からない。しかも玲奈も記憶があるらしい。これをたまたまと済ませていいのだろうか?分からないがただ1つ分かることは俺たちは変わらずモブであるということだけだ。


 妹、玲奈ことレイン・カイウスが産まれてから二年の年月が経った。俺とレインは神童とまで言われた。理由は単純、文字の覚えが早いからだ。まあ、それはそうだろう。普通の子供ならもっと時間がかかるものだ。だがこれでも苦労をしたものだ。まず、俺達には前世の記憶がある。それがとてつもないデバフとなった。前世の記憶がある、それだけで脳の容量の大半がその知識に取られているのだ。だから俺たちが最初にやったのは前世の記憶を忘れるところからだった。完璧に忘れることは難しいため前世の記憶の話はしないように心掛けた。よく、心がける時点で忘れてはないではないかという人もいるが、意外と重要である。言ってしまえば、声に出すのと声に出さないのとでは脳みそに印象付ける度合いが違うからである。それと同時に俺たちはこの世界の文字を片っ端から本を漁り、使えるものは使い、親や、近所の人たちから文字を教わり、互いに教え合う。これにより、2人ともこの2年で文字を覚えることができたのだ。この世界についてもわかってきた。この世界には魔力というものがあり、魔物や魔族、その他の種族、エルフやドワーフなどなども存在しているらしい。ザ・ファンタジーのような世界らしい。魔法を使えると知った俺たちの目は前世でも見せなかったほど輝いていたことだろう。それから俺たちは魔法の本を読んでいった。親にねだって本を買ってもらって、王都、日本でいうところの東京的な場所に連れていってもらったときは魔法の論文書などを図書館で読み漁った。一人ではできなくても2人ならどんな魔法でも理解できた。


 そうこうしているうちに更に2年の年月が経った。俺は6歳、レインは4歳となった。そして俺は学園に通うために試験を受けることとなった。タンガスタン学園、タンガスタンとはこの国の名前で、王家の名でもある。タンガスタン学園はこの世界でも5本の指には入るレベルの名門らしく、何人もの天才を輩出しているらしい。俺が試験を受けるのはそんなタンガスタン学園!ではなく、それの1つ下のローレンス学園、タンガスタン学園ほどの名門ではないもののそれでもかなりの有名学園ではある。本当はタンガスタン学園の試験を受けたかったが、タンガスタン学園には学費免除という制度が存在しないのだ。俺の家系は裕福というわけではない。だからこそ削れるところは削らなければいけない。そもそも通えるかすら怪しいのだから。そんな俺にとってローレンス学園はうってつけだった。試験の成績が良ければ学費免除や試験の時に払うお金すら半額になることすらあるらしい。そして何より貴族の子供が少ない!ほとんどの貴族の子はタンガスタン学園に通うことが多いらしい。なんでも貴族内ではタンガスタン学園以外はあり得ない。ローレンス学園に通うなんて貴族の面汚し、などなど。かなりローレンス学園を見下しているらしい。もちろんタンガスタン学園にコネで入学などは出来ないため、受からなかった場合は他を受ける羽目になるのだが、ローレンス学園を選ぶ貴族はかなり少ないらしい。貴族も大変だね。そう思いながら俺はローレンス学園の試験場所を目指していた。


 行われるのは学園内、周囲を見渡すと何百人も人がいる。髪の色、肌の色、種族すらバラバラ、多種多様な者たちが試験には来ていた。そして来た人から順番に紙を渡されグループ分けをされる。そして全員に紙を渡し終わると教師らしき女性が声を上げる。


「グループAの人はこちらに来てください!」


それから順番にA、B、Cと呼び出されていく。俺はEで、呼ばれて教師についていくと、教室だった。ここが試験場所なのだろう。


「では全員席についてください」


そう言ったのはここに連れてきた人とは別の教員だった。この人がグループEの試験官なのだろうか?そんなことを考えつつも俺は席に座った。全員が座ると試験官が今回の試験について説明をしていく。


「ローレンス学園の試験は2日に分かれて行われる。1日目の午前に筆記試験、午後に実技試験、2日目の午前午後は1日目の試験にて合格を受けた者のみで行われる。内容は俺も知らない。毎年毎年試験内容が変わるからな。だが、毎年2日目は複数人で組んで行う試験だ。まあそもそも今日を乗り越えられなければ、この話も無駄なんだがな。」


試験官がそこまで言うとチャイムが鳴る。前世とは全く違うチャイム音だが、周りの反応的にそんな感じだろう。


「よしそれじゃあ、筆記試験を始めるぞ、筆記試験は2つに分かれており、歴史の試験と魔法学の試験だ。両方とも、制限時間は2時間だ。では歴史から始める。」


そういうと、試験官は分厚い紙の束を投げる。それは均等に別れ、全員の机に同じように設置される。これも魔法の一種なのだろう。


「全員試験用紙は届いたな。それでは開始!」


そして全員が一斉にペンを走らせる。俺も同時に解いていく。本音を言おう。超簡単だ。6歳に対する問題としては難しいのかもしれないが、俺は前世では17歳、それに+6で実質23歳なのだ。しかも本を読みまくったおかげでこの国どころかこの世界の知識にはかなり自信がある。問題内容は、前世とほとんど変わらない。この頃に起こった事件は?とかそういうレベルだ。前世の知識を初めてチートだと思った日だった。


 筆記試験(歴史)が始まって、1時間が経過した。俺は全部の問題を解き終わり、見直しはすでに4週している。そして5週目ももうすぐ終わる。かなり退屈だ。よく、見直しはちゃんとするべきだという人がいるが、見直しを短時間に何周もすると気が狂いそうになってしまう。見直しもほどほどにということなのだろうか。そんな俺を不思議がってか試験官が俺に話しかけてくる。


「どうした?具合が悪いのか?医療室に連れていこうか?」


スノー「大丈夫です。全部解き終わって見直しをしすぎたせいで頭がふわふわしているだけですので…」


「・・・は?」


試験官が素っ頓狂な声を発する。当たり前かもしれない。有名な学園の入学試験、しかも試験問題もかなり多い(6歳が解く問題にしては)。そんなものを1時間で、しかも5週も見直しをしていたのだ。そんな声も出したくなるだろう。試験官は少し考え、再び声をかけてくる。


「その回答に自信があるのなら、もう俺が回収して、残りの時間は運動場を歩いていていいぞ。試験終了の10分前にここに居なければ不合格とするがな」


スノー「それでいいです」


というよりそれがいい。広い場所で魔法の特訓をする方がかなり有意義な時間となる。それにこんな試験に集中しているように見えない俺がいると他の子たちは集中できないだろう。他の子たちのためにも俺はこの試験場所から一旦出ていった方がいいはずだ。


「それじゃあ、これの下に名前を書いておけ。教員に会ったらこれを渡せよ」


渡された紙には試験官の名前とこの子供が試験場所から出ることを許可しました。という文が書かれていた。俺はすぐに名前を書きその場を後にした。

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