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一等星  作者: 遠藤 敦子
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3

 3学期の終わり、担任の先生がクラス全員に

「室伏さんは4月から海外に引っ越すことになりました。なので今日が室伏さんがこの学校にいる最後の日になります」

 と伝える。それから担任がクラスメイトに、1人ずつ私に別れの挨拶をするよう指示を出した。ほとんどの挨拶が事務的な内容(「転校先でも元気に過ごしてください」とか、「今までありがとうございました」とかそういった内容)で、担任に言われて渋々言っているなと思ってしまう。しかし私はもうこの学校には戻らない予定なので、そんなことは気にならなかった。



 春休みが終わり、私とお父さんはシドニーへ移住する。お父さんの会社がシドニーでの社宅を用意してくれていたので、家探しをする手間は省かれた。新しく通うことになる学校も決まった。けれど1月末から学校が始まっているので、途中から来た私は周りと打ち解けられるか不安だったのだ。

 転校初日、私はお父さんに見送られて新しい学校に向かう。1限目の前に簡単なホームルームがあり、そこで女性の先生に

「日本から来たムロフシ・アミさんです。どうかみなさん仲良くしてあげてください」

 と紹介をされた。私も簡単に自己紹介をし、それからいろんな質問が飛び交う。名前、東京出身であること、お父さんの仕事の都合で来たことを話したけれど、

「東京のどこが好き?」

「日本のアニメとか漫画だったら何が好き?」

「好きな日本食は?」

 などと訊かれた。

ーー東京は楽しめる場所がたくさんあるから好き。

ーー好きな漫画はちいかわ。好きなアニメはちびまる子ちゃんとサザエさん。

ーー好きな日本食はお好み焼き。

 私は1つずつ質問に答えていく。こうしてホームルームは終わり、1限目の授業がある教室(授業は選択制なので、みんな向かう教室はバラバラだった)へそれぞれ向かった。私は音楽を選択していたので、音楽室に行く。ここは日本の学校のようにクラス全員が集まって一斉に同じ授業を受けるスタイルではなかった。それぞれが選択した科目ごとに顔を合わせるメンバーも変わるので気が楽だし、まるで大学生になったような気分だ。

 会話の流れで私が日本人だとわかると、好きな漫画やアニメの話をしてくれるひとや「私いま日本語勉強してるの」と言ってきた女の子もいた。この学校のひとたちはみんな気さくで話しやすく、途中から来た日本人の私でも仲良くなるのに時間はかからなかったのだ。

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