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一等星  作者: 遠藤 敦子
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 ここ最近、お母さんの様子がいつもと違う感じがする。18時くらいから、30代後半という年齢の割に露出の多いファッションや派手なメイクで出かけるようになった。ベランダで男性と電話している様子もあり、名前は聞き取れなかったけれど何くん大好きとか愛してるとか言っていたのも聞いてしまう。お父さんではない相手なのは明らかで、私はお母さんが浮気しているのではないかと思っていた。しかしお父さんに言うべきかわからなかったのだ。


 ある日、リビングで両親とチャラチャラした感じの男のひとが話し合いをしている様子が伺えた。私は自分の部屋で宿題をしていたけれど、様子が気になってこっそり見てしまう。

室伏(むろふし)さん、どうか……。離婚して、(かおる)を僕に譲ってください!」

 お母さんとその不倫相手がお父さんに土下座していた。お父さんが

「こいつこんなこと言ってるけど、薫はどうしたいの? 亜美(あみ)の親権はどうすんの?」

 と問いかけると、お母さんは泣きながら

「亜美の親権はほしいけど……。私は富志男(としお)くんと生きていきたいの……」

 と言っている。13年間一緒にいた実の娘より、ぽっと出の不倫相手の「富志男くん」を選ぶのかと私は絶望した。お父さんの涙を私は一度も見たことなかったのに、お父さんも目に涙を浮かべている。家族を捨てて男と生きる道を選んだお母さんへの失望、怒り、呆れがぐちゃぐちゃになっていたのだろう。


「家族捨ててまでイチャイチャしてえのかよ! 亜美は俺が育てるしお望み通り離婚してやるから、今すぐ出て行け! 慰謝料は1人300万だ!」

 お父さんが怒鳴りつけると、お母さんと浮気相手はいそいそと出ていく。リビングに残されたお父さんは1人で涙を流していた。しばらくして私の存在に気づいたのか、

「亜美いまの見てたのか……? ごめんな、あんなところ見せて。これからは父さんと生きていこうな」

 と気丈な様子で言う。

「実は前から派手な服で夜に出かけたり、男の人と電話したりしてるのを見ちゃって……。私もお父さんに言うか悩んでたの」

 私が言うと、お父さんは呆れていた。

「亜美にもそんな思いさせてごめんな。男がいるって父さんも気づいてはいたけど、母さんのLINE見るまで相手が誰かわからなくて……」

 お父さんもお母さんの浮気に気づいてはいたものの、信じたくなかったのだろうと私は考える。会社では役職についているので毎日忙しくしていたこともあり、お母さんに寂しい思いをさせてしまったかもしれないともお父さんは言っていた。

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