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ヒモスキルで異世界無双 ~男も可愛げがあればだいたい生きていける~  作者: 谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】受賞
二章

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18/33

18歳未満は児童です。(2)

※性的お仕置き描写があります。地雷の人避けてください。※

 と、思っていたのだが。


「――――……」

「来ちゃった」


 えへ、と語尾にハートマークが付きそうな調子のマリーに、明楽は久々にキレそうだった。

 深く深く息を吐いて、感情を押さえる。

 落ちつけ、深夜だ。今見つかると多分悪者扱いされるのは自分の方。


「よく俺の部屋わかったね」

「教えてもらった」

「へー。で、何の用?」

「昼間の()()しようと思って」


 こんガキャァ。

 ぴき、と青筋が立つのを笑顔で隠す。


「廊下寒いから入ってもいい?」

「……どーぞ」


 このままでは帰りそうにない。扉前で問答を続けるのは避けたい。

 明楽は仕方なく、マリーを部屋に招き入れた。


(痛い目見させんのは俺の役目かぁ)


 どうやらプライドを刺激してしまったらしい。

 意地でも明楽をなんとかしてやろう、という意思が見える。

 マリーは迷いなくローブを脱ぐと、ベッドに座った。


「部屋に入れたってことは、やっぱ期待してる?」

「期待してる顔に見える?」

「えー? どうだろ。ね、とりあえずおしゃべりしよーよ」


 ぽんぽん、とベッドの隣を叩く。そこに座れということだろう。


(めんどくせええええ)


 さすが自意識エベレストの年頃。無敵の世代。


(さくっと折ってお帰り願おう)


 だるすぎる内心は隠して、冷たい顔でベッドに膝をつく。

 その表情に、一瞬マリーがぎくりとした。

 このくらいで怯むとは。


(今までの奴ら、優しかったんだろうな)


 でなければこんなことを続けていないか。

 それこそデレデレと、バカな女のワガママを聞いてやってるつもりの男ばかりだったんだろう。

 あほらしい。


「え、なに? もう待ちきれない?」

「そのつもりで来たんだろ」

「そうだけどさぁ、もうちょっと……きゃあ!?」


 最後まで聞かずに、マリーをベッドに転がす。ただし、うつ伏せに。

 やっべ、先に靴脱がすんだった。シーツ汚れる。


「ちょ、いた……」


 加減はしているが、体勢的には少々無茶である。

 怪我はさせないように気をつけながらも上から押さえつけ、両手をベルトで纏める。


「や、やだぁ。拘束趣味? 意外と変態」


 軽口に、僅かに焦りが見える。けどまだ余裕。

 服を上までまくって、下着の留め具を外す。


「暴れんなよ、怪我するから」

「え? なに……ひゃっ!?」


 突然背中に走った冷たさに、マリーが驚いた声を上げる。


「え、え、なに……」

(ただの氷の魔石でーす)


 冷蔵庫を冷やしているのと同じタイプの魔石だ。ただし小型。

 これで背中をなぞっただけである。

 しかしマリーからは何をしているのか、何を持っているのか見えないので、恐怖心が煽られるのだろう。


「ね、ねぇ、顔見てしようよ。最初から後ろじゃ、つまんないじゃん」

「なんで? 必要ないでしょ。人間じゃなくて、肉扱いされても構わないんだろ?」

「そ、そんなこと言ってないっ!」

「そういうことだろ」


 こちらを向かないように、片手で頭を押さえる。

 そのままショートパンツに手をかける。


「そういや、後ろって使ったことある?」

「は……? あんた、何言って」

「だって普段からこういうことばっかしてんだろ? 緩そうじゃん。だったら後ろのがマシかなって」

「後ろ? え、なに」

「あーわかんないか。ならいいよ、とりあえずケツ上げて」


 無理やり腰を引き上げると、マリーがバタバタと暴れ出した。


「や、やだ! それやだ!」

「ふざけんなよ、そっちから誘ってきたんだろ」

「だって、普通にえっちするつもりだったんだもん! こんな変態とか聞いてないし!」

「やだって言ったら逃げられると思ってんの?」


 ぐっと顔を近づけて、耳元で低い声で脅す。


「なあ。そっちから来たんだよな? 文句言われる筋合いないよな? 言われてもするけど」


 ぐいとショートパンツを引っ張ったところで、マリーの涙腺が決壊した。


「ごめんなさいいいい!!」

「うわっ」


 キン、と頭に響く声に、思わず手を離して耳を塞いだ。


「あや、謝るからあああ! これ外してえええ!」

「あー、はいはい」


 べしょべしょと情けなく泣いている顔から、もう反抗はしないだろうと、ベルトの拘束を解く。


「そんな泣くくらいなら最初から来んなよ」

「だってだって! 悔しかったんだもん! あたしのことバカにするから!」

「バカだからバカにされるんだろ」

「バカって言った―!」

「もうやだ……」


 げんなりした顔の明楽の前で、座り込んだマリーは胸丸出しで泣いている。

 そういえば魔石当てるのにまくったんだった、と明楽がシーツを被せる。


「ぶえっ!?」

「とりあえず服直せ」

「う~……」


 唸りながらも、もそもそと服を整えている。

 整えながら、ぶちぶちと文句を言っている。


「最低……変態……最低……」

「おい実行してやってもいいんだぞ」

「ごめんなさい!」


 何故そう学習しないのか。

 長い溜息を吐いて、今なら聞くだろうか、と明楽は説教モードに入る。


「これでわかったろ。お前が今まで無事だったのは運が良かっただけ。相手が本気になったら、嫌がったところで止めたりしないぞ。こんなん序の口だからな。中にはヤってる最中に首絞めたり爪はいだりする奴だっているんだぞ」


 そんなことは想像もしていなかったようで、マリーの顔がざっと青ざめる。

 だからガキなのだと、明楽は半眼になった。


「これに懲りたら、誰彼構わずちょっかいかけるのはやめとけ。別に色んな男と遊ぶのが悪いとは思わないが、後腐れのない奴の見極めができないガキの内は、少なくとも控えるんだな」

「そんなの……どーやって見極めるの。男なんて、みんな同じじゃん」


 吐き捨てるような言葉に、明楽は頭を掻いた。

 ――そういうタイプだったか。

 怖がらせないようにゆっくり手を伸ばして、マリーの髪を掻き混ぜる。

 

「いい男と付き合えよ」


 迷子の子どものようなマリーの猫目と視線を合わせ、明楽はにっと笑った。


「いい男と付き合って、いっぱい大事にしてもらえ。いい恋愛をたくさんして、それに飽きたら、好きに遊べ」

「いい男って……アキラみたいな?」

「ばっかお前、俺は……いや自分で言うのもあれだけど……一般的な分類だとクズ寄りだから、こういう奴はやめとけ」

「裏表あるもんね。メイア様の前と喋り方違くない?」

「それ言うなよ」

「どーしよっかなー」


 きゃらきゃらと笑うマリーは、どうやら機嫌を直したようだ。


「でも、あたしもアキラと遊んでみたかったな」

「あのな」

「だって大事に扱ってくれそう。ね、もう無茶は言わないから、そしたら大事に抱いてくれる?」


 好意を含ませた瞳に、明楽は溜息を吐くと、デコピンをした。


「いたっ!?」

「五年後にな」

「ちぇー」


 満足したのか、マリーは大人しく帰っていった。

 慣れないことをしてどっと疲れた明楽は、ベッドに倒れ込んだ。


「対応まずったかな……」


 惚れられたところで、変なアプローチをかけてこなければ、相手にしないだけだから別に構わないのだが。


「ま、十代の興味なんてすぐ移るしな」


 振り向かない相手にいつまでも執着したりはしないだろう。

 とりあえずもう何も考えたくない、と明楽はそのまま眠りに落ちた。

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