9 塩を求めて
朝だよー! と起きてみたらフェルの姿はすでになく、猫の子が寝ているので起こさないようにベッドを抜け出してリビングに来た。
レイラが出してくれた白湯をすすりながら、意識高い系を自称する。ほんとは煎れる茶葉もコーヒーもないだけだけど。ええんや、これが異世界流の丁寧な暮らしなんや。
さてこれからの行動を考えてみる。LVを上げていくのは基本姿勢として今必要なのはなんなのか。
問題を解決するには、種類を見極める必要があるそうだ。小さな問題から大きな問題まである中で、解決できる問題と難しい問題、明らかに不可能な問題がある。
さらに大切なのは、重要度と期限だ。具体的に言えばより緊急で重要度が高い問題から順番に対処していく必要がある。これはシンプルだが大切なことだ。
それで考えるとまずは生きていくために必要な衣食住だ。モンスターの破局的大進行で領地を失った僕は命からがら首都ロンネル郊外のスラム街になだれ込んで廃屋をリノベして住んでいるから、ひとまず住はOKとして、衣は今後の課題だ。今は初夏だから良いけど冬になれば冬服なんてないから用意しなければいけない。しかし急を要してはないのでひとまずおいておく。
残されたのは食だ。食は喫緊の課題だ。
レイラは稼働に魔石が必要だしフェルやミーナ、僕は普通に食べなきゃいけない。とりあえず予想外にパイクと化け物サメの魚肉? が手に入ったのは幸いだった。現在は収納スキルでぶち込んでクラフトスキルで毒抜きをしている。魔力使うし時間かかるから今はその空いた時間を使って予定を考えているわけだ。
魚は無理やり無毒化して食べるにしても、やっぱり塩が沢山欲しいなと思う。砂糖も必要だがまずは塩だ。
アンサーに聞いたところ、この国の塩資源であるところの塩泉や岩塩はすでに国の機関や領主、教会に抑えられていて、海塩も作られてはいるがすでに既得権益が確立しているところにスラムの小僧が入っていく余地はない。もちろん普通に買うには高すぎる。
そこから導き出された答えはというと、こそっと海に行って自分達で使う分だけ海水から海塩をクラフトで手に入れようということだ。
大っぴらに商売にすると国や商人に目を付けられるからできないけど、自分達で使ったり物々交換や配ったりする分には問題は少ないはずだ。……はずなんだ。
アンサーには了解済みなのでこの案をレイラとフェル&猫娘に提案したところ、必要性は認識してくれたが、やはり海までの道中が心配だとのことだった。最初は僕とレイラだけで行こうとしたけれど、結局みんなで行くことにした。
衣食住と同じくらい重要な要素が安全だが、それはこの世界ではどこにいても危険が付きものなので心配してもしょうがないが、レイラやフェル、アンサーも含めると索敵にかなり有利なので思い切って旅立つことにしたのだ。
といってもアンサー曰く、徒歩十九時間ほどで河口のクレインまで行けるらしいので、一日か二日野宿すればすむ寸法だ。アンサー曰くここ一週間の天気は晴れと曇りらしいので、安心だ。後は盗賊とモンスターの心配をすればいいか。いや安心てなんだよって話だが。
大きな町に入るには入場料がかかるらしく、そこはスルーしていこうと思う。例によってモンスターを退治してくれる冒険者なんかは歓迎されているのでタダだったりするようだが、僕はそうじゃないし、お供を連れている分、一般的に見逃されている貧民とは違い金銭を求められるだろう。
そもそもレイラは美人さんで誰も人造人間だとは思わないだろうし、フェルはモンスターと間違えられる可能性がある。やっぱ野宿するしかないよな。
昼過ぎになると毒抜きサメ肉が完成したのでみんなでハムハムした後、いざ出発とあいなった。
フェルの背にミーナを乗せて僕とレイラは横を歩く。フェル曰く僕を乗せても余裕だから乗れとのことだけど、目立つし体力作りの一環で歩かせてもらうことにした。
でも歩き始めてすぐ後悔した。すぐ疲れるのは魂半分このせいなのか体が幼いからなのか。
「はぁ、はぁ……しんどい」
「アル様、強情を張らずにそこの駄犬に乗せてもらえばよいのではないですか?」
「グァウワウ! ガウ?」
『犬ではない! でも乗るか? とフェルが言っています』
「んーまだ大丈夫。ありがとね」
「がんばれ♪ がんばれ♪」
「うん、頑張るよ」
ミーナはニコニコ笑って楽しそうだ。おそらく旅の道中でなにかあるだろうけど、水や食料は十分収納してきてるからなにがあっても大丈夫だ。異世界物のラノベで結構勉強してるから詳しいんだ僕は。
「どんな学問もその使い道までは教えてくれない。しかしそれは、学問で得るものではなく、学問を超えたところにあり、自らの観察によって獲得するものである」
「知は力なり」
フランシス・ベーコン 哲学者