52 超騎士
周囲を見渡すとレイラやフェルはともかくオリバー達子供組はアンデットとドラゴンによる猛攻に疲弊している。ナイジェルの熱い思いを受け取った今、僕は負けるわけにはいかない!
「アンサー変身だ! ディファレンスドライブ! アクチベート!」
『アクシオス!』
「シェイプシフティング! 超紳士 グレートアーサー!」
「あの姿、小僧が変身したのか。なにか秘密があるとは思ったがこれは予想外だ」
「ハッハー! 諸君、後はこの超紳士に任せてくれたまえ、行くぞ!」
「ガオオオオオオ!」
光と共に颯爽と現れたこの僕こそスーパージェントルマンは、猛速で周囲のアンデットをステッキでしばき倒してファフニールに肉薄した。すでにAPは剥がれているのでダメージはそのまま通る、ステッキでの殴打は効果はいまいちかも知れないが、それでも鱗を貫通して衝撃を与え、頭にいいのが入ればたたらを踏んで攻撃が止まる。いいぞいいぞ! ドラゴン恐れるにたらずだ!
「ふむ、これならばやはりビルの奴が負けるのも仕方ないか、だが奥の手があるのはこちらもだ」
ビーストマスターが両手を前に出して更になにやら呪術めいたセリフを口にしていると、うちの育ちの悪い連中がスリングショットで攻撃した。だがAPのバリアが厚いのか、それとも別の力が働いているのか無力化されてしまう。状況は益々先行きが見えなくなり、魔力が崩れた領主館を覆い危険な雰囲気が満ち満ちてくる。そしてなぜかはわからないが召喚されていたアンデット達が続々と姿を消して、ついにはファフニールとビーストマスターのみが残った。
「なにかしてくる! みんな下がれ!」
緊張感が高まりファフニールが全身に漲る禍々しい力を開放すると、大きな咆哮をした。その衝撃波だけでオリバー達は吹っ飛ばされている。そして禍々しく立ちはだかるのはあの時のビルサイクスと同じ漆黒に染まり血に染まったような瞳をぎらつかせる邪竜の姿だった。
『ファフニールが進化しました、脅威度は不明ながらこのまま戦うのは危険です!』
「このままだったらってことだろ? それならば心配ない、そうだろアンサー」
僕はナイジェルが投げてよこした家宝のルビーを握りしめ、瞬時にクラフトスキルを発動した、すると黄金の風が体を取り巻いた。
超紳士を超える万能感が全身を包み込みロングコートを着た紳士を模した変身体が一転して白銀の全身鎧に身を包んで騎槍を持つ超騎士が現れた。そして騎士にふさわしいのは愛馬だ、残念ながら僕には馬はいないが、彼女がいる。
「フェル!」
「アオーン!」
真白き狼であるフェルが遠吠えすると、彼女の全身も騎士が騎乗するにふさわしい大きさになり甲冑を身に付けた姿と変化した。僕は優雅にその背にまたがり邪竜と対峙すると、まさに神話のような情景が出来上がった。
地球の歴史ではキリスト教の聖人である聖ゲオルギオスも竜退治が有名だ。聖ゲオルギオスはイギリスを構成するイングランドやコーカサス地方のジョージア、ロシアのモスクワの守護聖人で、西方では十四救難聖人の一人に数えられる。時代と世界を越えて今僕もなろうじゃないか! 竜殺しの英雄に!
「私こそは超騎士アルフォンス・アーサー! 邪竜よ覚悟しろ!」
モードチェンジした僕はもはやフェルと一心同体だ、考えるだけでフェルが期待にこたえて動いてくれる。瓦礫を踏み砕いて強烈な爪撃が襲い来るが騎槍を振るってはじき返し逆に痛打を与える。どこからそんな力が湧いて来るのか不思議だが、ここまでくれば負ける気がしないし負けるわけにはいかない。
フェルの機動力は限界を突破しており、さながら流星のように竜の周りを駆け巡りそれと共に連撃を加えると、何度目かの攻撃で敵のAPバリアを破壊するのに成功した。だが奴もスピードでは勝てないと覚悟を決めたのか、死なばもろとものブレスを放射しようと大首をもたげた。それを撃たれると僕はまだしもみんなは無事では済まないが、だがピンチと共にこれはチャンスだ。
僕達は青白い軌跡を描きながら竜の顎下に潜り込むと、渾身の力を込めて騎槍を掲げ体ごとぶち当たった。
「ギュワワワワワワワッ!」
ファフニールの悲鳴とおびただしい流血が、閃光が領主館を染め上げる。フルパワーによるランスチャージで激しい魔力の火花がぶつかり合い、明滅に誰もが目を覆う。やがて音と光が止み、立っていた者はーー僕達だ。
『目標沈黙、邪竜ファフニールを討伐しました』
「……やっ、やりがった!」
「アオーーーン!」
僕はちぎれたドラゴンの頭を横目で見ながら息を整えつつ騎槍をビーストマスターに向けた。すると奴は忌々し気に悪態をついてどこへともなく消え去った。変身を解いた僕に向けて爽やかな風が吹きつける。
「お見事でございました、アル様」
「ありがとうレイラ、みんなも」
勝利に喜びロージーの提案でみんなで記念撮影をする。これが新聞に載れば世間は大騒ぎになるだろう、でもそれは始まりにすぎないんだ。
全ての人々が安全で文化的な生活を手に入れるその日まで、僕は戦い続けるのだから。
突然ですがこのお話はこれで完結とさせていただきます。
その後の構想は沢山ありますが、止まっている幽導灯火伝をある程度きりの良いところまで書き上げないと悔いが残るなと思い、決断しました。中途半端なところではありますがここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。




