50 ファフニール戦
「じゃあみんな、手筈通りに行こう、くれぐれも攻撃には気を付けてね」
「わかってるっつーの、早く行こうぜ」
良く晴れた早朝にファフニール討伐作戦は決行された。僕達一晩かけて僕たち全員の装備をグレードアップしたので一発いいのを食らっても耐える自信はあるが、安全に配慮するのにし過ぎることはない。サメと戦うのとは訳が違うのだから。
「オーケー! ゴーゴーゴーゴーゴー!」
散会してそれぞれにファフニールに接敵する。最初メンバーのみんなは初めて見た巨大な竜の咆哮に恐慌状態となったけど、そこはリーダーたる僕の出番だ。スリングショットに特殊弾をつがえて鼻先目掛けて放つと、鋭い衝撃音と共に奴が僅かにのけぞった。さすがにAPのバリアを全て剥がすことはできないが、確かな手ごたえを感じた。
「攻撃は利いているぞ! ひるむな! ここをあいつの墓場にしてやれ!」
「おおっ!」
自分を含め全員を奮い立たせながら連続で攻撃を加えると、さすがの竜も焦ったのか火炎ブレスの体制に入った、だがこれももはや織り込み済みだ。
「ブレスが来るぞ! シールド準備!」
「ガアアアアアアアッ!」
万物を溶かしうる灼熱の息吹が視界の全てを赤く白く染め上げて扇状の冒涜的な激流が周囲を満たす。渾身の必殺技を放ち竜はようやくこれで煩わしいハエどもを一層できたと笑った。だがしかし白煙たなびく向こうから痛打の礫が飛んできた。
「ガアッ⁉」
「体制を立て直した者から順次追撃だ! 弾幕を張れ!」
「うおおおお金貨が溶けた! もったいねー!」
「ブランド! 溶けても物は回収できるから後回しだ! 今は倒すことに集中だ!」
「おー! やってやんぜー!」
「マイケル狙われてんぞ! 足を止めるなよ!」
「余裕だよ!」
「そこだぁ!」
「グオオオオ!」
「ナイスアマンダ! APバリアが剝がれたぞ! 炸裂弾に変えて一斉攻撃だ!」
「しゃあ!」
アル達全員は強化されたシールドバッジを装備しており、それは難なくブレスを耐えて見せた。そこから始まる猛攻にたまらず竜も悲鳴を上げる。採算度外視の課金弾の威力を見たか!
ロンネルの街を出る時は大人達の嘲笑が酷かったものだが、彼らがこの光景を見たらどう思うだろうか。少年少女が命を賭けて巨大な竜に戦いを挑み、あまつさえ戦局を優位に展開しているのだから。
タブロイド紙の取材を通して無理やりついてきたロージーも必死になって写真を撮っていた。竜に勝てるかもしれないという高揚感とその場に立ち会っているという奇跡に思わず手が震えるが、この事実を伝えんがために歯を食いしばって臨んでいる。
僕達の中でも一番歓喜に打ち震えていたのはやはりナイジェルだ、自分の故郷を壊滅させた憎き張本人である邪竜を今や討伐寸前まで追い詰めているのだから。
ナイジェルは手に汗を握りながらも教えられた通りにスリングショットを繰り出していた。父や家族、友や領民の敵を自らの手でとれるのだ、胸に熱いものが去来して思わず涙ぐんでいるが、そこをすかさず僕が突っ込んだ。
「ナイジェル、泣くのは後にしろ! 全員で勝って俺達は悲願を果たすんだ! そうだろ!」
「おっ……おお! そうだ、その通りだ!」
攻撃を続けているうちにドラゴンの鱗は裂け、鮮血が飛び散っている。時折強烈なひっかきなどの攻撃に見舞われるが、僕らは元々のすばしっこさに加えて装備の充実で素早さが向上しており回避は余裕だ。
だが油断はしない。決して接近せず絶えず動き回ることによって竜に狙いをつけさせず、安全にしとめる。そう、もはやこれは狩りだ。奥の手のブレスも封じた今、ファフニールに挽回の目はない。僕は確かな勝利の到来を予見しながらも、弾丸を放ち続ける。
苦痛の雄たけびがバース街内に轟きわたり、もう少しでファフニールを倒せると誰もが確信していたその時、不意に周囲を暗闇が包んだ。そして響き渡る不気味な声。
「これはこれは、もしやと思って来てみれば面白いことになっているな。だが折角の計画を子供のお遊びで潰される訳にはいかんのでな」
いつの間にか遠くにある塔の上に謎のマントを着た男が立っており、獣じみたしわがれた声でそう言うと手を前に掲げた。すると青紫色の魔法陣が地面に広がって、そこから無数のスケルトンやゾンビが出現して僕達の前に立ちはだかったんだ。




