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47 いざパースへ




 あれからなんやかんやあり、バタバタと日常は過ぎて行った。僕自身は大した影響ないだろうと思った例の新聞記事だが、街に閉じ籠って暇してる貴族からスラムの貧民まで大いに世論を騒がせているらしく、やたら注目を集めることとなった。もっともその多くは期待というより冷やかしだが。


 僕はともかく従業員をからかわられるのは腹が立つが、みんなはそんなこと気にもしちゃいないと笑ってくれている。うちの従業員達はみんないい奴だ。


 ナイジェルには改めて僕達の装備と実力を見てもらったが、世間一般の皆様にはついこの間できた7歳児の会社がモンスターから街を開放すると言っても理解してもらえないだろう。


 だがどうしても無理そうなら帰ってくればいいだけの話だ。それで笑われてもそもそもドラゴンに挑みもしない奴に言われたくないと返してやればいいさ。


 今回のドラゴン討伐に行くメンバーは、レイラ、フェル、オリバー、マイケル、ブランド、アマンダ、それにナイジェルの少数精鋭で行くつもりだ。拠点のことはハンナさん、爺さんやガスコインに任せておけば大丈夫だろう。


 ナイジェルに関しては怖い思いをしたんだし拠点で待つことを勧めたんだが、どうしても本人がついて来ると言って聞かなかった。ダメだったとしてもことの次第を見届けたいのだと言う。まぁその気持ちはよくわかる。僕だって同じ立場ならそう希望するだろうしさ。


 でも今のままのナイジェルを連れて行ってもお荷物なので、選抜メンバーと共に何日かダンジョンに潜ったりレイラに稽古を付けてもらったりするうちに旅立ちの時が来た。


 見送りにはウイリアム様や冒険者ギルドのマグナス、お忍びでフィオナ様も来てくれた。ミーナは僕についてきたがったが、君が家で待ってくれているから頑張れるんだよとかなんとか適当なことを言って今回もお留守番をお願いした。仲間内では恐れ多くもフィオナ様になついているので、留守の間くれぐれもよろしくとお願いして、快く了承してもらった。なにかと手のかかるにゃんこさんである。


 早朝、感極まって今生の別れのように泣き出すハンナさんをなだめていざ出発! という時に、野次馬ギャラリーの中から一人の女性が進み出た。


「あの! 私も一緒に連れて行って下さい!」


「ロージーか、君は自分でなにを言ってるのかわかってるの? 命の保証はないんだよ?」


「覚悟はできてます! 私、本当はタブロイド記事じゃなくて社会を切り抜く時事ネタを書きたいんです。でもまともな新聞社は獣人の女なんて相手にしてくれないし、今の新聞社になってようやくここまでこれたんです! 二度とないチャンスなんです! 会社は説得済みですし身内はいないのでたとえ命を落としても恨みません! お願いします!」


「アル様、排除しますか?」


「……いやレイラ、必要ない。わかったよロージー、自分の身は自分で守ること、いいね?」


「はい! ありがとうございます!」


「ところでダンジョン潜った経験は?」


「ありません! でも体は頑丈なのでまかせて下さい!」


「はぁ~、足は引っ張らないでよね」


「はい、頑張ります!」


 なんだかなぁと思いながら、僕達はタブロイド紙新人記者のロージーを仲間に加えて歩き出した。


 アンサーからパースまでの距離を五日と聞いていたけれど、ちょうどきっかり五日かかった。それというのもロージーがいたからだ。ダンジョンに潜ったりしてステータスを上げている僕達とは違う一般人なのでしょうがないが、それでも足手まといになるまいと頑張ったのだと思う。


 パースの街が見下ろせる小高い丘に登って、クラフトした望遠鏡を使い中を覗きこむ。すると廃墟となった領主の館の上にどっかりと寝転んでいる赤いドラゴン、ファフニールの姿が見て取れた。僕は心の中でアンサーに聞いてみることにした。


『ねぇアンサー、周囲には本当にモンスターの姿がないけれど、それって全部あのドラゴンが始末してるってことなのかな?』


『……現状を観察しますと、恐らくはファフニール自身がダンジョンマスターになってしまっているものと推察されます。ダンジョンには心臓部とも呼べるコアというものがありますが、ファフニールはそれを取り込んでいるのでしょう。だからダンジョンから出て来ることも可能だったのです。元居たダンジョンはもぬけの殻になっているはずです』


『ふーん、じゃあ外から来た野良モンスターじゃない限りは、ここにはあいつしかいないわけか。でもなんでこの街から動かないの?』


『ドラゴンは貴重な貴金属をため込む本能があるので、そのせいでしょう。街を見ますとダンジョン化しているようなので、本格的にあそこを住処と決めたようです』


『モンスターがダンジョンのマスターになんかなれるものなの?』


『実際なっているのでそうなのでしょう。あれは器用なことにダンジョンマスターの能力を使って更に貴金属を生み出しては悦に入っているようです。このまま年月が経てばいつか立派な神殿が立つかもしれませんね』


『しっかし鱗が堅そうだな、うちらの攻撃が効けばいいんだけど』


『そこはやってみるしかないのではないかと』


「そうだよな、なにごとも観察、検討、実践、反省だよね。よっしじゃあ一当てしてみますかぁ」


 大きく伸びをした僕は、レイラ、フェルと共に威力偵察に出ることにした。

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