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43 ロンネル冒険者ギルド




 今日はいよいよダンジョン潜入の許可を得るために冒険者ギルドにやって来た。


 ギルドはロンネルの外れ、ダンジョンの近くにあり、建物は石造りで、どっしりとした威厳を感じさせる。 入り口には剣と盾の紋章が掲げられており、冒険者の集う場所であることを誇示していた。やって来たのは僕とレイラ、オリバー達三人とアマンダだ。ダンジョンに潜るのは基本このメンバーが中心となる。


「じゃあ入ろうか」


「う、うん……」


「アマンダ、緊張することはないさ、なにも取って食われることはないんだから。今日は話し合いだけだしね」


「しかしアル様、ここロンネルの民度は地に落ちております。私達を見ればいらぬ因縁を吹きかけられるやもしれません」


 レイラが小さな声で私に聞いてきた。 確かに見た目は子供ばかりの一団だ。


「大丈夫さ、僕達には特別な力があるんだから。それに君が鍛えてくれているからね、問題ないよ」


『マスター、ギルド内部の構造を解析しました。受付は入り口から入って正面奥です』


 脳内でアンサーの声が響く。


「よし、行こう」


 僕達一行が中に入ると、ざわめいていたギルド内が一斉に静かになった。そのまま受付の前に行くと、中の女性が心配そうに僕達を見て言った。


「君達、ここは遊び場じゃないのよ。怪我をしないうちに早くお家に帰りなさい」


「信じられないかもしれませんが、僕達は真剣にダンジョンに潜る許可を求めにきたのです。冒険者登録をお願いします」


 僕がそう言うと、受付の女性は信じられないと目を丸くした。


「冒険者登録って、まさかあなた達だけで潜るの? 大人の護衛が一人で?」


「ああ彼女は僕の秘書兼メイドなので、主に挑戦するのは制服を着た彼らになりますかね」


 その時だ。後ろから粗野な冷やかしが聞こえてきた。


「おいおい、ガキどもが何やってんだ? この神聖な冒険者ギルドを乳臭い匂いで汚すんじゃねえぞ!」


 振り返ると、がさつな風貌の大柄な男が立っていた。


「私達は正式に許可を求めに来ただけです。邪魔をしないでください!」


アマンダが毅然とした態度で言い返す。


「なに? この生意気なガキめ!」


 男が手を上げかけたその瞬間、オリバーが先に動いた。


「うぐっ! あばばばば!」


 男が悲鳴を上げる。スリの常習犯だったオリバーはなんなく男の懐に入ってスタンバトンで一撃をくれてやったのだ。この辺りの裁量は個人に任せているというか、荒くれ者の集まりであろう冒険者ギルドだから、ある程度想像はしていた。僕は一応殺気立つ面々に声をかける。


「失礼、お集りの諸君。今この男がうちの従業員に手を出そうとしたのでね、ちょっと横になってもらったところなんだ。ここはこのままお互いに干渉しないのが平和で紳士的だと思わないかい?」


「なんだとぅ? ザッケンナコラー!」


「やれやれ、どうやらご理解いただけないようだね、残念だ。無知蒙昧な君達へ一つ僕からアドバイスしてあげよう。礼節がーー紳士を作るのだ」


「お前らやってやれ!」


「おお!」


「しゃあビビんなよおめーら!」


「たりめーだ!」


 冒険者ギルド内は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、併設されている椅子やコップが乱れ飛び、僕はいちいちそれらを収納しては静観している。と言うのも、僕以外のみんなが強すぎてやることがないのだ。


 オリバーはもちろん、太っちょブランドや気弱だったマイケルまで率先して向かって来る酒臭い男どもを撃退している。ちょこまかと敵の足元をかいくぐり、スタンバトンを一当てする簡単なお仕事だ。それで相手はしびれて倒れる。


 僕に向かって来るのは自分で対応しようとしたけれど、レイラが無双してやることがない。裏拳を叩き込んで相手が空中で一回転するわ、長いメイドのスカートの中から繰り出される神速の前蹴りで吹っ飛んでいくわで活躍の場がない。


 あまりにも暇なので、くるくると前世のお祖父さんから教えてもらったスコットランドの伝統的な踊りを踊っていた。うーんでもやっぱりバグパイプの旋律がないと寂しいな。


「やめろおらぁ! この騒ぎは何事だ!」


 その時、ギルドの奥から威厳のある声が響いた。現れたのは、四十代の筋骨たくましい男性だった。


「ギルドマスター! この子達が…」


 受付の女性が説明しようとしたが、ギルドマスターは手で制す。

 

「お前達、どこのもんだ?」


「A&Aカンパニーです。僕が代表のアルフォンスで、ここにいるのは頼れる従業員達。初めましてギルドマスター、お騒がせして申し訳ない。ギルド内の修理は無料でさせていただきますよ。そこら辺に伸びている奴らはほっときますがね」


 僕がニヤリと笑うと、ギルドマスターのジト目が向いた。


「例の新興企業か、お前達の噂は聞いてるぜ、なんでもビルの縄張りを奪ったとか……奥で話を聞かせてもらうから、もう暴れんじゃねぇぞ」


「ええ、もちろん」


 周囲を見渡せば死屍累々だったが、僕達はギルドマスターの案内で意気揚々と奥へ進んでいった。


『マスター、お見事なダンスでした』


(ふふ、そうだろう? ありがとうアンサー)





礼節マナーが紳士を作る

ウィカムのウィリアム (キングスマン作中では、礼節が人を作る)

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