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42 新事業2




「おーいみんなー、アルが呼んでるぞー!」


「なんの用だ?」


「知らね~」


 やいやい言いながらうちの若い衆が集まって来た。全員A&Aの青い制服を着ているので、揃うと壮観だな。


「全員気を付け! ……休め!」


 レイラの号令によって、さっきまでバラバラだった子供達がびしっとまとまって行動し、ウィリアム様を感心させた。今我が社では空いた時間でみんなに読み書きを教えたり、護身術の訓練をしている。主にレイラは訓練の方を面倒見てもらっている。どんな鼻っ柱の強いやつでも、レイラに一発殴られれば大人しくなっているので恐ろしい。なんでも鉄の棒で殴られるよりも痛いそうだ。お蔭で今では僕より恐れられている番長だ。


「みんな集まったね」


「はいにゃ!」


「……ミーナとお母さんはこっち来ててね」


「ガウ!」


「しょうがないにゃあ」


 どうしてもついて来ると言って聞かなかったミーナだったけど、フェルと一緒に庭で散歩させていればいいかと思っていたのを忘れていた。


「あらかわいらしい子、お名前はなんていうの?」


「ミーナはミーナだよ! お姉ちゃんだれ?」


「ふふ、私はフィオナよ、仲良くしてね」


「あい!」


 フィオナ様が獣人嫌いとかじゃなくて助かった。貴族連中の中には獣人や奴隷を同じ人間と考えないのが多いと聞くが、どうやら姫様に変な偏見はないようだ、横にいるウィリアム様やブライアンの爺さんもどこかほっとしたようだ。


「え~では改めて、諸君に集まってもらったのは他でもない、こちらのフィオナ様とウィリアム様に日頃の訓練の成果を見て頂くためだ。いつもやっている通りにやればいいので緊張しなくてもいいよ」


 僕の言葉にざわざわする子供達だが、レイラが火かき棒を出してドンと地面に突き立てると、みな一様に背筋を正した。


「アル様に教えて頂いたことを実践すればいいだけです。しかしもし無様な姿をさらしてアル様に恥をかかせた時は……わかっていますね?」


「「は、はい!」」


「よろしい、では準備を」


「「了解!」」


 連れてきた従業員達が一斉に簡易アイテムボックスと化しているポーチを利用して庭師衣装から戦闘用に特化した装備へと着替えていく、その間に僕は標的である案山子の準備だ。


 僕達の様子を見てなんだなんだとお屋敷のみんなも集まって来る。例の一件以来、こんなとこにはいられないと去っていく者もいたそうなんだが、それでかえって残された者達は団結が強まっているそうだ。雰囲気も以前感じたギスギスしたものが減っており、こちらにもよく便宜を図ってくれているので助かっている。


 僕がセッティングし終えるとすでに社員のみんなは準備万端なようで、今か今かと始まるのを待っているようだ。


「えーお集りの皆さま、そしてウィリアム様、フィオナ様、今回はこのような機会をお与えいただき感謝いたします。それでは今から当A&Aカンパニーの戦闘訓練の様子をお見せいたします」


 周囲からパチパチと温かい雰囲気の拍手と声援が飛んでくる。お屋敷に来るにあたっては大人より子供達だけの方が安心感があって良いだろうとのことで、獣人がほとんどなメンバーはオリバーやアマンダの他、信頼のおける子供達で構成されている。


 揃った制服で見た目の華やかさやあどけなさで誤解されているだろうが、彼ら彼女らは戦闘においても優秀だ。これからそれがわかる。


「はい、じゃあスタート!」


「目標発見! 密集隊形!」


「了解!」


 この部隊のリーダーを務めているオリバーの号令で、前衛は新たにクラフトされた盾を構え、後衛はスリングショットことパチンコを構えている。


「よーしじゃあ状況開始! レイラお願い!」


「かしこまりました」


 そう言うとレイラは無表情で頷いてエプロンポケットから石礫を取り出し、プロ野球選手もかくやというフォームで小隊目掛けて投球した。


 すると大きな衝撃音を立てて盾の生成したバリアーにぶつかり、地響きがするほどだった。見守っていた周囲からどよめきが起こり爺さんやウィリアム様をしても目を見張る投擲だったけど、我らが無敵の隊列に異常はない。


 レイラは続いて二度三度と投石とは思えない攻撃を放ち続けるが隊列はびくともしないどころか、じりじりと案山子に向けて前進している。オリバーの号令が飛ぶ。


「よーし! 射撃準備、チャージ開始! ……撃て!」


 後列に控えていた子達がフルチャージされたスリングショットで狙いを定め、目標の案山子に向かって一斉にフルチャージの石礫を放つ。標的の案山子はちょっとやそこらで壊れない鋼鉄よりも強化された特別製だったが、我が小隊のフルバーストの前にはひとたまりもないのだ! どうだこの威力! 火力こそ正義! 粉々になった目標を確認して、僕は演習の終了を告げた。


「いかがですかみなさん、我が社の精鋭たる従業員の実力がこれでわかっていただけたかと思います。こちらの試算としてはAランクのクエストにも挑戦できると思っております。今後はダンジョンアタック方面にも事業を展開していくつもりです。もちろん安全マージンは十分取りますよ」


 得意満面の笑みを浮かべる僕とは対照的にフィオナ様達は目を点にして驚いており、執事のセバスは口をパクパクさせている。ウィリアム様が聞いてきた。


「……アル君、君は戦争でも始める気なのかい?」


「まさかまさか、これは計画の一歩目に過ぎませんよ。持続可能な健康で文化的生活の、ね?」




常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである

アルベルト・アインシュタイン



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