41 新事業
後日。僕はひとまず新しい事業を立ち上げるについて、ウィリアム様とフィオナ姫様に相談した。その結果、姫様も一度ウィリアム様とお話ししたいということになり、こうして姫様主催のお茶会にお呼ばれしている。冒険者上がりの新興商人貴族としてブイブイいわせているウィリアム様だが、さすがにロイヤルの血筋には緊張するらしい。
「フィオナ姫様。こ、この度はお招きいただき、誠にありがとうございます」
「ウィリアム郷、来ていただけて嬉しいです。アルよりご活躍は聞いておりますのよ」
「これは恐縮です、悪い話でなければよいのですが」
「まさか、そんなわけないじゃないですか、ははは!」
「ふふふふ」
一人嫌な汗をかいているウィリアム様をよそに僕は優雅に座っていた。ここに来るのは三度目だし、アンサーのサポートによりマナーも完璧だし、なにより僕はフィオナ様を始めとしたこのお屋敷の人々の命の恩人だ。多少でかい顔したって許されようというもんだ。
僕はレイラに目くばせをすると、彼女はティーカップにミルクを注ぎ入れ、そこから更に紅茶と砂糖を入れてミルクティーを作ってくれる。僕はそれを手に取ってまずは香りを楽しみ、それからゆっくりと嚥下した。
「フィオナ様にご紹介いただいたおかげで素晴らしいミルクを手に入れることができるようになりました。ありがとうございます」
「どういたしまして、そのくらいはお安い御用だわ」
この前しれっとアイスを一緒に食っていたブライアンの爺さんに聞いてみると、このフィオナ様が治めるローズ家では契約している牧場から産地直産でミルクを送ってもらっているらしく、そこに我が社も一枚噛ませてもらったわけだ。
牧場に従業員を派遣してこちらで作った牛乳缶に搾りたての牛乳を入れてもらい、小アイテムボックスと化しているウェストポーチに収納し、帰社後に共有ボックスに入れてもらえば後は簡単。無限収納どころか殺菌、加工機械と化したアイテムボックス様が病原菌を殺菌したのものに水分を抜いて粉ミルクにまで加工してくれるのだ! あとはそれを缶に詰めて封をするだけであら不思議、粉ミルク缶が出来上がる。
粉ミルクの生産は目途が立ったが、問題は家庭用浄水器だった。アンサーと話し合いを何度もして、一般家庭で使うには水差しの形で運用するのがいいだろうと結論が出た。
そこでできれば落としても壊れにくいプラスチックで作りたいところだが、原料の原油の調達がモンスターのせいで不安定であるのに加えて、すでに灯油として需要が高いので、手に入れることができない。というよりこの時代ではまだ原油からナフサを作ってそれを加工してプラスチックにする方法が確立してないらしくて、ナフサだけ売ってくれというのも難しいらしい。
仕方ないので陶磁器を用いて浄水水差しの試作品を作ったんだが、これの原材料に問題があった。なんと魔石が必要なのだ。
魔石。それはモンスターを倒すとなんか体の中に入ってるやつ。
これは今現在の魔法科学発展の礎にもなっており、ダンジョンアタックで得た魔石の全ては国の出先機関が買い取ることになっている。そして魔石の流通を大貴族同士のカルテルが牛耳っている。
小口で魔石を求めるなら各小売店で手に入れればいいのだが、まとめてとなると中々そうはいかない。僕には当然つてはないし、新興貴族であるウィリアム様でも取引において足元を見られているのが現状らしい。これはどうしたもんか。
「例えばですが、一定の料金を納めれば期限内の魔石を取り放題という許可証みたいなのを議会から発行してはいただけないでしょうか」
「ふむ、なるほどな。それがあれば自由にまとまった量を手に入れることができるか。しかし仮に許可証が出たとして大丈夫なのか?」
「と、おっしゃいますと?」
「くさすわけではないが、昨日まで乞食同然だった連中や子供達を連れてダンジョンアタックをして、危険ではないのかということだ。まさかクズどもがやっているように子供を囮にしてモンスターを狩るわけではないだろう」
「それこそまさかですよ、ちゃんと考えてあります。なんだったら今お見せしますよ。姫様、外のお庭を使わせてもらっても良いでしょうか」
「ええ、構いません」
子供を囮にするの辺りで露骨に顔をしかめた姫様だったが僕の提案には興味津々らしく、みなで移動してに外に出た。
お屋敷の庭では子供達、つまり我がA&Aカンパニーの従業員が額に汗して働いている途中だった
。クラフトアイテムである庭師セットだが、その内容は梯子なしで空中に浮かび上がって選定できるブーツがあったり、軽くて大きな範囲を刈り込むことができる魔動チェーンソー、伸びた草を狩る草刈り機、大容量の水が入った軽いじょうろ、どこまでも伸びる高枝切鋏など様々だが、子供達の一番人気は魔動芝刈り機だ。
これはアメリカ映画なんかで出て来る乗り込んで芝の上を走っているだけで芝刈りができる夢のマシンだ。これに乗る権利を巡って喧嘩になりそうなほどなので、仲良く順番で運用している。というか狩り終わってもまだ乗っていたりするが、幸いこのお屋敷の人達は温かく見守ってくれている。
僕は整えられた庭を見て頷き、全員集合の笛を吹いた。
「みんな集合ー!」
人間の最大の敵はアルコールである。しかし聖書には私達に敵を愛せとある




