39 療養
散々な目にあった。いやここ最近散々な目にしかあってない気がするが、一番酷い目にあったのは確かだ。だがそれもスコッツランドから逃げ出した時を思えば可愛いものなんだが。
あれから僕は子供らしく眠りについて、というより半ば失神してスラムの家へと移送された。翌日の昼間になって気が付いて起きようとしたら全身激痛で動けない。あとミーナが縋りついてて重い。
声を出そうにもそれすらだるくて億劫だ。しょうがないので脳内でアンサーに聞いてみる。
『あれからどうなったの?』
『フィオナ嬢の回復魔法によってマスターは回復しましたが、それでも安静を必要とする状況に変わりはありません。通常であればこのまま三か月は安静にしている必要があります』
『三か月か、長いな~。なんとかしてよドラ〇もん』
『私は未来の世界の猫型ロボットではありません、ですが素敵な提案があります。クエスト、呪われし姫君を達成した報酬でクラフトアイテム、回復ベッドが使用可能になりました。さっそく使いますか?』
『やったぜマッチポンプ、たのんます』
瞬間に今寝ている藁を乗せたベッドが現代的えシンプルなベッドへと早変わりした。一見なんてことのないベッドだが、使用者の魔力を使うことで寝ている者の体力と魔力や負傷を回復させ、回復した後は普通のベッドになってくれるらしい。三十分で八時間睡眠の効果が得られるらしいので、こりゃワーカーホリックの僕には最適だな、はは。
それから僕は五時間ほど寝ると全身の骨折や打撲が回復して熱も収まったようだ。まだ夜中だったけど起きようとしたらミーナに動くなと怒られたので再び朝まで寝ることにした。もう大丈夫なのかと判断されたのかフェルまで乗って来たが、大き目サイズなので十分余裕がある。これがあればフィオナ姫の回復も早くなるだろうし、前から考えていたダンジョンアタックも捗るかもしれない。ただ問題なのは結構制作コストがでかいんだよな。材料はともかく作成使用魔力量を考えると一日に二台くらいしか作れないかもしれないな……
翌朝、僕はすっかり体調が良くなって、すがりつくにゃん子をそっと押しのけてからベッドから降りると、朝の支度をしているハンナさんに出会った。元気になったよーと言うと、涙ぐんでハグしてくれた。どうやらみんな僕の体調を心配してくれていたようで、情けないやらありがたいやらなのだが、とりあえず眠っていた間に別段変化がない様なのでなりよりだ。
ひとまず動けるようになったので朝の炊き出しに顔を出すと、みんな驚きつつも祝福してくれた。オリバー達は僕の無茶な戦いを見ているからそうでもないかもだけど、最近加入した清掃部のアマンダとかにはなにがどうなってそうなったんだと泣かれてしまった。ふがいない経営者ですんまそん。でも今後も多分こうなる予定なんでそこんとこよろしくと言ったら怒られた。いや僕も好き好んで厄介ごとに手を突っ込んでいるんじゃないんだけどね……いや、クエストの報酬欲しさに暴走するのはその通りなんだが。
みんなにポリッジを配って、その辺の人らと一緒になって丸太の椅子に腰かけてだべっていると、あの爺さんが現れた。
「やあブライアンさん、ご機嫌いかがかな」
「それはこちらの台詞じゃ、心配しておったぞ」
「心配? 命の恩人にポーション一つ与えるのを渋る人達が随分と殊勝なことですね」
「レイラ、いけず言わないの。それぞれの事情があるんだし、危ない所を救ってもらったのは事実なんだから」
「それはそもそもアル様が彼らの犠牲にならなければ起きえぬことでしたでしょう」
「いやはやその通りじゃ、姫に仕える者として面目次第も無い。まさか呪いの品がベッドの下に仕込まれているとは思いもよらなんだ。あまつさえ皆の命は救われた。お屋敷の者達を代表して礼を言わせて欲しい、どうもありがとう」
「どういたしまして、場所を移してその後の話を聞かせてよ」
「うむ」
僕達は普段使っている母屋に入って修理品のソファーに腰かけた、すると目ざとくミーナがいそいそと乗っかって来てフェルが足元に寝そべった。
「もう体の方は良いのかの?」
「普段の生活をゆっくりできるくらいにはなったけど、まだ時間がかかるね。でもあとはここで寝ていれば大丈夫だよ。優秀なガードマンもいるしね」
「ガウ!」
『フェルが私はオスじゃないと言っています』
「姫様の方はどんな感じなの?」
「あれから見る見るうちに症状が良くなっておる。そのうち完全に呪いの影響がなくなって歩くことも走ることもできるようになるじゃろうが、当家の敵がいなくなったわけではない、むしろ相手は警戒を強めたことだろう。だが今回の失敗によって手を出しにくくなったことは確かじゃろうて」
「それはそうだろうね」
「アル坊のお蔭で裏切者は知れたわけじゃが、目下のところの問題は庭が荒れ放題になることじゃな。新しい庭師を入れようにも信用できる者かどうかがわからん。それでどうじゃ、適当で良いからお主の会社とやらでやってみんか?」
「お屋敷の庭木の世話をかい? ん~やったことないんだけどな」
『マスター、今なら誰でも簡単庭師セットをクラフトできますよ』
僕はがっくしとうなだれると、爺さんに心配されてしまう。
「なんじゃ、どうかしたのか?」
「いや別に……そうだね、お受けします。週に一回は従業員が伺いますよ」
「そこはなるだけお主にお願いしたい、姫様が興味を持っておいでなのだ」
「えー? エスタブリッシュメントのお相手は疲れるんだけど」
「紳士を自称する割にはなっとらんな」
「庭師の代理は口実ってことね」
「半分はな、どうせろくに客人もこない所じゃからこだわらんでいいんじゃ。体調が良くなったら屋敷に顔を出してくれ。これは謝礼分を含めた手付じゃ、四百ポンドある」
「うほーマジでか! さすがお貴族様! 喜んで伺います!」
飛び上がって喜ぶ現金な僕を見て、家の面々は白い眼を向けるのであった。
名前:回復ベッド*
効果:体力と魔力、怪我などを回復させ、常に清潔を保つ。使用には魔力が必要だが、短時間でそれ以上の見返りが得られる。三十分で八時間睡眠と同等の効果が得られる。病気は治らないが、免疫力が上がることで完治に近づいていく。使用者の体力が回復しきった後は普通のベッドになる。瀕死の状態の者が使ってもすぐ効果がでるように、魔石をチャージできる機能がある。快眠温度を保ち、目覚まし機能付きなので朝弱い人もばっちり起きられるだろう
価値:☆☆☆☆




