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37 脅威再び




 クレクレ爺さんこと元近衛歩兵連隊(グレナディアガーズ)隊長ブライアンにつれられてホイホイととあるお屋敷に来てみたら、その主は曰くありげなお姫様でしかも呪われているときたもんだ。とりあえず様式美で屋敷中の人間を集めてみたものの、僕の脳内に住む相棒のアンサーは、犯人の探し出し方に心当たりがあると言う。じゃあ見せてもらおうか、名探偵さんの推理とやらをな!


『なんで使えない刑事役になりきってるんですか、簡単なことですよ、神と聖霊と国を信じる旨を一人一人宣誓してもらえばいいんです。敵は黒魔法を使う反社会主義者ですからね、ボロを出すはずです』


『はは~んなるほど、その時の反応を見て判断するんだな? お主む悪よのう』


『とんでもない、お代官様こそ』


 ぐへ、ぐへへへ、と一人で笑っていたら、ロビーに集まった全員から気味が悪そうに見られてしまったので、それに気が付いてスンとなった。


「ええ気を取り直しまして。お集りのみなさん初めまして、僕はアルフォンス・アーサーと言う実業家です。本日はブライアン様にお招きいただきましてこのお屋敷に来たのですが、一つ妙なものを見つけてしまいましてね。それがこちらです」


 改めて衆目の前にリッチの髑髏を突き出すと、女衆は目を覆い、男衆はうなり、唾を飲み込んだ。じっとりとした緊張感が室内を満たす。


「このリッチの頭蓋骨には黒魔術による呪いが施されており、今日の今まで当主であるフィオナ様を苛んできたことは明白であります。外部犯の可能性もありますが、ベッドの下にこれを仕込めるのは気心の知れた内部の人間による犯行の線が濃厚です」


 メイド長が緊張しながらも発言した。


「……つまりあなたは、この中に犯人がいるとおっしゃりたいのですか?」


「イエース、イットイズ」


 途端に巻き起こる、喧噪、悲鳴、動揺、激高。どよめく周囲を他所に僕はフィオナ姫を見た。そして訊ねるまでもなく彼女は明言する。


「続けてください」


「はい、では僭越ながらこの僕がこの場を取り仕切らせていただきます。なに、これから始めることに難しいことはありません、一人ずつ姫様の前に出て神と聖霊と国家に忠誠を誓っていただければ良いだけなのです。ではそちらのマダムから順にどうぞ」


「わ、私は……神と、聖霊と、国家に忠誠を誓います」


「はい結構です。どうぞ向こうへ移動してください。次の方」


「は、はい」


 こうして次々と宣誓は粛々と行われていった。最初は緊張していた面々も、簡単な所作から終わった者から順に気楽になり、こんなことでなにが分かるのかと疑問に思う者も出て来た。


 だがこっちにしてみれば全てが想定内だ。そもそもアンサーの鑑定能力はずば抜けていて、鑑定した対象の帯びる魔力の質を感知することができる。それによれば誰が闇の魔力をその身に宿しているかなんて一目瞭然なのだ。


 ただ僕一人がわかっていても神明裁判の霊能者よろしくうさんくさいことこの上ないので、こうして迂遠な方法をとっているに過ぎない。ただこれにしても本人が知らぬ存ぜぬを決め込めば言い逃れできるだろうが、アンサー曰くそうはならないだろうとのこと。謎の自信に溢れておるなお主。


 そして最後の一人、庭師の中年男性の番となった。僕は流れ作業で宣誓を促す。


「それでは最後にあなたの番です。お願いします」


「はい、わかりました……私は神と聖霊、国家に忠誠を、ち……ちかっ……」


「どうしましたか? 緊張しなくてもいいのですよ」


「ちか、ちか、ちかかかかかかかかか! 誓えるか馬鹿者が!」


 瞬間、空気が変じてザワリと肌を撫でる。湧き上がる狂気がコップからこぼれ落ちるように周囲を圧倒して気分を悪くさせる。つまりアンサーの見立ては完璧だったということだ。


「それは自白とみてよろしいかな?」


「うるさい! 賢しらぶった小僧め! お前になにが分かる! いや、この腐った国の連中にはわかるはずなどないのだ! 我々が再びこの国を偉大にするのだ! そのためにはあらゆる障害を取り除かねばならぬ!」


「それがフィオナ姫って訳か」


「その通りだ! わかったらそこをどけ!」


「それはできない相談だ、なぜなら僕はーー紳士なのでね」


「邪魔をするならお前も道連れだ! がああああ!」


 庭師の男は隠し持っていた注射器を己の腿に打ち付け、異形へと変身していった。ビルの時と同じだ。僕はまたそれかよと思いながらもかっこつけながらさりげなくディファレンスドライブをかざす。


「ディファレンスドライブ、アクチベート! シェイプシフティング! 超紳士スーパージェントルマン グレートアーサー!」


『アクシオス』


 まばゆい光が全身を包み込み漆黒をまとう庭師と対になる。モンスター人間と化した庭師は全身が黒ずんで体躯が大幅にパンプアップされており、爪が以上に発達して伸びている。おそらくあれに引き裂かれると普通の人間ならひとたまりもないだろう。普通の人間ならばの話だが。


 そう、この僕こそは紳士の中の紳士、超紳士であるからして、このような危機を超えるなど造作もないのだ。




有意味な命題とは検証可能な名題である

科学的な言明とは実験的、経験的に検証ができることが条件である

仮説演繹法を通して導かれる十分に検証された定理のみによって科学は構成されるべきである

観察→仮説→検証 論理実証主義

ウィーン学団


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