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27 超紳士




 僕はアンサーに向けて叫ぶ。


「アンサー! 確かクエストの達成条件はストリートギャングを仲間にしようだったな!」


『ええ、しかしそれはそうですが、逃げなくては!』


「オリバー! それにマイケルとブランド! 今ここで僕の仲間になると誓え!」


「は? いきなりなに言ってるんだ!」


「大事なことなんだ! 全員はっきり宣言してくれ! 早く!」


「おっおう、わかった。仲間になる!」


「俺もだ!」


「ぼ、僕も!」


「OKアンサー! これでクエスト達成だぜ! 報酬をくれ! 今すぐだ!」


『……イエッサー!』


「ガキがなにをごちゃごちゃと……なにぃ?」


 クエスト達成により報酬が渡された。それはこの危機的状況を予期して用意されていたような起死回生の一手だった。


 空中からSFめいた厳つい金属ベルトが出現すると、自然と僕の腰に装着された。僕は自然と頭に浮かぶ台詞を叫ぶ。


「ディファレンスドライブ! アクチベート!」


 ガッコン! と重々しい金属音がして立体映像が幻のように光って浮かび上がり、数多くの歯車が一斉に回り出す。その幻想的で奇怪な光景は見る者の心を捉えて離さない。


「す、すげぇ、なんだあれ、おいオリバー……」


「俺にもわかんねぇよ!」


 やがてそれらの回転スピードが頂点に達した時、僕の全身が光り輝き始める。さぁ変身の時間だ! 僕は右手を高く上げてパチンとフィンガースナップを決める。


「シェイプシフティング! 超紳士スーパージェントルマン グレートアーサー!」


アクシオス(ふさわしい)


 アンサーの承認がなされ、光と共に僕の全長が伸びて二M程となり、頭の先からつま先まで近未来的なスーツが包んで頭からシルクハット、燕尾服、ベスト、革靴を模した着装が展開された。顔にはもちろんメタルヒーローさながらのマスクをしている。英国紳士の姿をオマージュした変身ヒーロー、超紳士のお出ましだ!


 光と音の変身ショーが終わって愕然とする一同を見て、マスクの奥で不敵に笑う。


「レディース&ジェントルマン! さぁお待ちかね! 紳士の時間の始まりだ!」


「な、なんだお前は!」


「なんだと聞かれれば教えてやろう、そう、この私こそは少年アルフォンス・アーサーが奇跡の力によって無敵の超紳士へと変身した姿なのだ。重犯罪者ビル・サイクス、もう君に勝ち目はない。速やかな投降を勧めるよ」


「ふ、ふざけやがって、これでも食らえ!」


「カモン、バトルステッキ!」


 バチィン! と瞬時に右手に現れた魔法超合金でできているステッキで易々と拳を払いのけると、口髭を撫でる仕草をして余裕を演出する。まぁ口髭なんてないんだけどね。


「なるほど、それほど見たければお見せしよう。この私のニュー・アート・オブ・セルフディフェンス(自己防衛の新たな技芸)をね」


「くそ! この!」


「はっはっは! どうしたというのかね先ほどまでの威勢は! 形無しじゃないか!」


 ニュー・アート・オブ・セルフディフェンスを提唱した英国人エンジニアのエドワード・ウィリアム・バートン=ライトは、三年間日本で柔術と柔道を学んでイギリスに帰国するとバートン流柔術、バーティツを考案した。


 これは後にシャーロックホームズの中に出て来る謎の格闘術、バリツの元ネタなのではないかと言われているが、真実のほどは定かではない。しかし富裕層を中心として主にステッキ術と打撃技を合わせた護身術を教えており、祖父からその存在を聞かされていた僕は興味本位で調べていたのだ。まさかここにきてその経験が生きるとは。


 僕個人としては前世からしてまともに喧嘩もしてこなかったけれど、前世の格闘技を見た記憶などから僕が望む行動をアンサーが総合的に判断して、スムーズな攻防へと昇華してくれている。ここまでアンサーと一体感を感じたことは未だかつてなかった。これならなんだってできそうだ。


 右へ左へと繰り出される連撃を躱し、あるいは払いのけ、獣となったビルに尚も話しかける。


「なぁビル、知っているか? 君には懸賞金がかけられている。生死に関わらず四百ポンドの大金だ。ようはそれだけ恨みを買って来たってことだ。警察に自首すれば罪がチャラになるわけじゃないが、年齢も加味されて死刑を免れるかも知れない。ここいらが考え時だぞ」


「はぁ、はぁ、ごちゃごちゃうるせぇ!」


「ああまだ力の差がわからないと? よろしい、ならばこうしよう。お仕置きの時間だ」


 バトルステッキを手にして優雅に構えると、独特の歩行で一打二打三打四打と連撃し、五打目でくるりと手首を返して頭を攻撃すると、次いで体を半身に開いて花が咲くように両手を空高く広げながらステッキを叩き込むと、最後に腹部にグリップ部分をしこたま打ち込んでビルの巨体を吹き飛ばした。


「ぐぼらばっ!」


 倒れて仰向けになったビルの体からはシュウシュウとまるで膨らんだ風船から空気が抜けるように黒い瘴気のガスが抜けて消え去り、モンスター同然だった体も元の人間のそれへと変わっていく。遠くでは山際が微かに白み始めており、朝日が昇るのを感じさせていた。


 僕は大きな仕事をやり遂げた安堵感に包まれながら、それでもまだステッキの上に手を置いて油断なくビルを見つめていた。

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