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23 襲撃




 家に帰り夜になり夕食を終えると本格的にクラフトの時間だ。日中に使いきれなかった内蔵魔力を使用してすぐ必要そうなものから順番に作っていく。


 この時毎度ミーナが甘えに来るので膝の上に抱きながら、アンサーに相談しつつ過ごしているといつの間にか深夜になっていることも多い。


 予定のクラフトを終えてからは昼に買った新聞を三誌読んでみる。それぞれ保守系、リベラル系、タブロイド系だ。


 保守系のトップ記事は最近あったモンスター被害の詳細で、バラバラの国力をまとめて団結してことに当たる重要性が説かれているまともな内容だ。リベラル系は、いかに産業を発展させるかだったり魔法技術の進捗発表であり、なかなか面白い。タブロイドは……なんだこりゃ。


「なになに? スクープ! ついにマス湖のマッシー発見……か⁉ 未確認飛行物体が残したミステリーサークルの謎に迫る! っておいおい、いつの時代もやってること変わらんな。こんなもん詐欺じゃん」


『ちょうど新聞が折りたたんであるところの前面を煽り文にしているのがにくいですね、開いて見てみると特に新たな発見がないというのがミソです』


「巧妙に責任逃れしているのがなんかずるいわ、こんなの買うのはもの好きだけだろうに。内容がないよう」


『お、それはいわゆるひとつのジャパニーズ親父ギャグですね! 疲弊した社会において一服の清涼剤であり潤滑油であったというあの!』


「アンサー、変なことに興味持たないでよろしい。えーとあとは、首都ロンネルにモンスター人間出現、魔法秘密結社の暗躍か! ねぇ。最近ロンネルで謎のモンスターに襲われる事件が多発しており、犠牲者も出ているが、犯人が逮捕されていない。数少ない証言者によるとモンスターと人間が合体したような姿が目撃されており、秘密結社の一員と噂される人間が複数謎の失踪をしていることから関連性が疑われている、か。これも都市伝説ってやつなのかもな。ハエ男現る的な」


『ろくでもない内容に思えても嘘の中にはまれに重要な真実が含まれていることがありますよ。木を隠すなら森の中という言葉があるように』


「それじゃあマッシーを捕まえに行く? ミーナは喜びそうだけど」


『それもいいですが、今日はもうお休みになっては?』


「うん、そうだね」


 レイラは用事がないとスリープモードになって椅子に座っており、フェルは僕の足元で丸くなっている。これがここ最近の夜のルーティーンだったが、今日はそれが破られた。コンコンコンと玄関扉を叩く音がする。レイラがぱっと目を開き、フェルが音もなく立ち上がった。僕は眠っているミーナを優しくソファーへ横にしてから玄関口へ立ちドアを開ける。するとそこには昼間一緒だった少年の姿があった。僕は努めて優しく笑いかける。


「やぁオリバー。どうしたんだい、こんな夜遅くに」


「よぅアル、元気してるか? ナンシーは……」


「ナンシーは隣のハンナさんの家で寝てるよ。それに元気かなんて変だよ、昼まで一緒だったのに」


「あ、あぁそうだな。聞いてくれ、実はな」


「ビルに僕らのことがバレた、違うかい?」


「ーーなんでそれを」


「ここ最近はうちにも不穏な輩が出入りしていたからね、そいつらがビルに繋がっていてもおかくしないさ」


「じゃあ話は早いな。アル。すごく言いにくいんだが、有り金を置いてここから出て行ってくれないか? そうすれば後のことは俺がなんとかする。絶対だ! 実はマイケルとブランドを人質に取られているんだ。あいつらは今まで一緒にやって来た仲間で放ってはおけない。なぁ頼むよ、お願いだ」


 泣きながら懇願するオリバーを見ながら、僕は彼に近づいて聞いた。


「ここへは一人で来たのかい?」


「ああ、俺一人で説得に行って無理なら二人の命はないと言われている」


「そうか、じゃあ君ははなから信用されてないってことだね」


「……なにを言ってるんだ?」


「レイラ、敵の数は?」


「十人。いえ十二人です」


「なるべく殺さないでよ」


「善処はします」


 僕はインベントリから火かき棒を出してレイラに投げ渡すと、今度はフェルに目くばせした。


「お母さん、みんなを頼むよ」


「ガウ!」


「よーしじゃあ作戦開始だ。オリバー、合図するからその時は目を瞑るんだ。いいね」


「いやなんでだよ、なにをするつもりだ?」


「おいおいなにちんたらしてんだよオリバー、金はどうなったんだ?」


「お、お前達、なんでついて来たんだよ!」


「いやお前のことを信用してないわけじゃないぜ? ただビルが行けっていうもんだからさ、仕方ないよなぁ?」


 にやにやと笑った人相の悪い男達が、徐々に姿を現して包囲してきた。オリバーが真っ青になって狼狽えるが、こっちはこんな事態もとっくに想定済みなのだ。


「やぁこれは薄汚いロンネルの掃きだめの皆さん、お揃いでようこそ。ビルに逆らうのが怖くてみんなで押しかけて来たのかな? ははっ!」


「てめぇ調子に乗ってんじゃねぇぞ! 出すもん出さなきゃ痛い目にあわせて……」


「オリバー目を瞑れ! グレネード!」


 取り出しましたるはアル君自作の閃光手榴弾。少しの魔石とガラクタで作れたのでいくつかストックしてあったのだ。


 こいつはゲームとかの設定だと使うと敵が気絶したりするが、もちろんリアルだとそんなことはない。音と光に驚いてせいぜい一秒ほどビクッとするだけだという。だがアル君印のスタングレネードは違う。付与効果を付けられることから、三半規管を狂わせて混乱効果を上乗せすることができるのだ。問題は味方側にも被害が出ることだが、この際それはしょうがない。コラテラルダメージだ。よって周囲はこうなる。


「おっ、おええええええ!」


「ぎぼちわるぅ……」


 大多数の悪漢が地面に両手をついてオロロロしているので掃除は後にして、クラフトアイテムの捕らえる君を投げて拘束する。


 捕らえる君は白いガムみたいな塊で、投げつけるとうまい具合に手や足を拘束してくれる。僕以外だとノコギリなんかで長い間ギコギコするしか外す術はない。


 まだ元気なのもいるけど三半規管とかまったく関係のないレイラに軽くどつかれて早々に這いつくばっている。僕はそれを拘束して回る簡単なお仕事だ。ほぼほぼ戦わずして勝ったな、アル君大勝利だガハハ!


「ふっ、口ほどにもない。そこでしばらく反省してくれたまえ」


「あ、アル……」


「なんてこった、大丈夫かオリバー! 畜生! 誰にやられたんだ! 許さねぇぞ!」


「おっおま……ごえええええ!」


「バウ! ワウ! グルルルル!」


「いやごめんて、ぶちキレんでくださいよお母さん」


 オリバーには事前に警告してあったけど、威力が強すぎたみたいだ。そして奇麗好きのフェルが家の庭で大量のリバースが起きてめちゃ怒っている。だからごめんて。




名前:スタングレネード*

効果:混乱(小)

価値: ☆ ☆

アルの特製閃光手榴弾。耳の奥にある三半規管や内臓を揺さぶり、めまいや嘔吐を促して対象を混乱させる効果がある。初見の敵にはとにかくよく効く。


名前:捕らえる君*

効果:拘束(小)

価値: ☆☆

拘束前は白色のボール状だが、投げつけると自動的に両手か両足を拘束することができる。強度は強くてノコギリで切らないと開放できないほど。アルの場合は一瞬で収納して拘束解除できる。



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