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16 娼婦ハンナ




 朝目が覚めて朝食を取り、今日の分のクラフトをしてからスラムに出かけようと思っていると、急にミーナが玄関に駆け込んできた。


「アル早く来て! こないだの子が大変にゃ!」


「こないだの子?」


 僕が慌てて家から飛び出すと、昨日会ったローナが泣きながら訴えかけてきた。


「お願い! お母さんを助けて!」


「いいよ、お母さんの所へ案内して」


 よくわからんがとにかくよし! と快諾して走り出したはいいものの、すぐに息が切れて動けなくなってしまった。そこになにやってんだお前はとばかりにフェルが歩み寄ってくれたので、これ幸いとタクシーをお願いする。いつもすいませんね、てか二人ともめっちゃ早いんだが。


 僕がフェルにライドオンすると猛烈なスピードで追いかけてくれたんだけど、乗ってるだけで乱高下するからダメージがでかい。誰か助けて。


 フェルの背の上でひぃひぃ言っていると、やがて目的地であるらしい労働者向けの集合住宅に辿り着いた。


 階段があるので降りようとすると、フェルは掴まってろと吠えて一息に段差をジャンプして三階にあるローナの部屋までやって来た。そしてヨロヨロしながら中に入ると、藁の上でうずくまってうなされている女の人がいた。ローナに似た容姿であることから母親だと思われる。


「昨日家に帰って来てからずっとこうなの! お願い助けて!」


「ゴホッゴホッ! はぁ、はぁ。ロー……ナ」


 泣きながらすがってくるローナを落ち着かせてから母親のそばに座って鑑定する。どうしたらいいかな、アンサー。


『はい、彼女は怪我と高熱にうなされているようです。慢性的な栄養不足による免疫力の低下により、このまま放置すれば風邪からの肺炎や感染症に罹患する可能性があります』


「それはまずいな、とりあえずなにかクラフトして……」


「ちょっとあんた達、なにやってるの!」


 僕達がローナの母親の様子を看ていると、横から金切り声が聞こえてきた。驚いてそちらを見れば中年のヒステリーなおばさん獣人がこちらを睨みつけていた。


「ハンナは今朝帰って来てからそんな調子だけど、まさか変な病気にかかってるんじゃないだろうね! もしそうならここには置いておけないよ!」


「ち、違うんです。私はそんな……」


「なにが違うんだい! おおよそ昨日寝た客から変な病気を移されたんだろ? 売春婦が言い訳すんじゃないよ!」


「落ち着いてください、彼女はまだ感染症にはおかされていません」


「あんたみたいな子供になにがわかるんだい!」


「ガウウ!」


「ひっ! も、モンスター⁉ なんだってこんなところに!」


「フェルはモンスターじゃないもん!」


「いい、いいからそいつをこっちに近づけないでおくれ!」


「ガウ!」


「ひぃぃぃ! 助けて!」


 フェルに恐れをなして逃げたおばさんを尻目に僕はクラフトで免疫力が上がるカプセルバッジと疲労回復や脱水状態の改善に効果がある点滴バッジを作って彼女のシュミーズに付けてあげると、荒い息が穏やかになってきた。


 ようやく僕は辺りを見渡すと、ここはどうやら粗末な共同住宅であることが分かった。トイレは共同で床は所々腐っており、空気も淀んでいる。密集空間に大勢が暮らしているため、感染症が発生すると蔓延しそうな環境だし看病するにも良いとは言えないだろう。しかし連れ出そうにもハンナさんをどうやって僕の家に運べばいいんだ?


『マスター、そこで私は荷車のクラフトを提案します』


「ああそうだその手があった。じゃあ早速開始するとして、ぽちっとな」


 僕の脳内にだけ表示されるゲーム的なUIから木材を消費して荷車を作っていると、やれやれといった風情でレイラが現れてハンナさんを階下まで運んでくれて荷車に乗せ、家まで運んでくれた。心配しているローナや好奇心から乗り込んだミーナを含めても問題ない確かな足取りであり、持つべきものは怪力なメイドさんだなと思った。思ってたら睨まれた。


「どうしたの?」


「いえ、アル様がなにか良からぬことを考えているような気がしたので」


「そんなわけないでしょ、あはは……」


 なんてことを話しているうちにマイハウスに到着したので即席のベッドを作ってハンナさんを寝かせると、レイラには食べ物を多めに買いに行ってもらうことにして、僕はまたもやクラフトすることにした。まず作るのは調理器具の鍋とお玉だ。


 付与効果は鍋の方には栄養価増加、お玉の方には旨味増加を付けてある。作る料理はポリッジだ。


 ポリッジとはオートミールとも呼ばれておりイギリスで昔から親しまれてきた朝食のひとつで、使われているオーツ麦はビタミンやミネラル、食物繊維などを豊富に含んでおり、腹持ちがいい。イギリスの児童書にもよく登場している定番料理だ。


 ハンナさんは病人なのでドロドロのお粥状にしたほうがいいかと思い、鍋にオーツ麦と水、塩を適量いれて火にかける。そうしているとぐぅとローナのお腹の音が鳴った。


「あうぅごめんなさい、でもおいしそうで」


「大丈夫だよ、多めに作るからお母さんと一緒にお食べ」


「じゃあミーナも」


「あんたは朝に食べたでしょうが」


「うん、でもまだ食べれるよ!」


「なんだそりゃ」


 しょうがないので材料を足して、ダンジョン肉なんかも細切れにして入れてやると、賑やかなにゃんこの歓声が上がった。ハンナさんが寝てるんだから静かにしなさい。




名前:点滴バッジ*

効果:体力回復(小) 脱水症状改善(微)

価値: ☆☆

称号:付けているだけで徐々に疲労が回復して脱水症状が改善していくが、症状が重篤な場合はこれだけで完治は難しい。応急措置的な使い方なら大いに効果があるだろう。


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