表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/52

15 第一次世界災害




 住処に帰った僕は庭に剣術訓練用の打ち込み台をクラフトし、同時に木刀を作って猛然と叩き始めた。どこへぶつければいいかわからない感情を込めて打ち込み続ける。そうしているうちに段々と日が暮れて夕方となってきた。


 勢いで来た異世界。前世でイギリス含め世界の歴史を学んできた身としてはある程度の悲惨な現状を覚悟していたのだけど、いざ直面してみるともろに感情を揺さぶられてしまった。


 前世で剣道をやった経験もなければ木刀を持つのは中学修学旅行のおみやげ以来な気がするが、衝動的に創造してしまい、ありったけの激情をぶつける。


震える両手を誤魔化すように一心不乱に打ち込むと多少は気が紛れていく感じがした。


 もうどれくらいこうしているかわからなくなったが、次第に腕が上がらなくなってその場にへたり込んだ。


 荒い息を吐きながら再び立ち上がって重い木刀を振りかざそうとするも、誰かに後ろから抱きすくめられて、木刀を手放した。


 「もうそれくらいでよいのではないですか?」


 レイラが聞いたことがないような優しい声でそう呟くと、一気に全身の力が弛緩して、自分の力では立つこともままならなくなってしまった。


 いつの間にか夜になっていて、すぐ側にフェルとミーナが寄り添ってくれていた。僕はそんなことにも気付けないでいたんだ。


「アルぅ」


「バウ」


「あぁみんな、いたんだ。ごめんね心配かけて。でももう大丈夫だから」


「ミーナお腹すいた」


「そうだね。ご飯、食べようね」


 レイラが用意してくれていたけどすっかり冷めてしまった夕食を食べてからは、すぐにベッドへ入った。

木のフレームに藁を敷き詰めてシーツを被せただけだけど、藁は毎日クラフトを利用して清潔な状態にしているのでフカフカして気持ちがいい。キングサイズなベッドに寝転ぶと、やはりフェルとミーナも一緒に寝そべった。


 レイラやみんなにお休みを言ってから、暗闇の中で考える。これからどうしたらいいのか、どうしていきたいのか。


 青臭い理想だけど、僕はこの状況を放っておけない。奴隷として連れて来られた獣人達やその子供達、アヘンや重労働、医療や衛生問題、食糧不足、モンスターの伸張……あらゆる問題を僕やアンサーの力でできるだけなんとかしたいと思う。


 ウィリアム様や心ある名士達もいてどうにかしたいと思っているけれど、どうしたらいいかわからずに議会でも紛糾しているそうだ。僕には未来の知識がある。魔法科学やモンスターの影響についてはこれから調べなければいけないけれど、ある程度は改善していけるはずだ。


 前世の歴史と大きく違うのは、ここ数年来世界的な大型モンスターの出現で海洋貿易や国交が壊滅状態になったことだ。これを第一次世界災害と言うらしい。


 ブリスデンも数多くの植民地を持って奴隷貿易などを行っていたが、海に出現したクラーケンや艦隊クジラ、リバイアサンや空の王者、巨竜バハムルなどの国際的災害級モンスターによって良くも悪くも人々の交流とプライドはズタズタに引き裂かれた。当然ながら戦争どころの話ではない。


 人種同士の殺し合いが鳴りを潜めたのは良かったけれど、今世界の人々はモンスターの脅威から生き残るのに必死で、ブリスデン上層部では魔法技術を発展させて形成挽回しようとやっきになっている。


 特にブリスデンでは海を隔てたカナディアで塩タラを大量に捕り塩分不足を解消していたので、気軽に海へと漕ぎ出せない状況では需要の高騰を招き、塩は手に入りにくくなっている。


 今現在は足の速い船を用いては散発的に漁業をして、異変を感じたらすぐさま逃げ帰ってくるような状況らしい。このへんもいつかはなんとかしたいが僕にできるのか?


 とりあえずは薬害と食糧と衛生の改善だ。モンスターの脅威は誰でもわかるので国や町でも対応してくれるが、それ以外は割と放置されている。アンサーの言う世界連邦設立は夢のまた夢だけど、一歩一歩進んでいくしかない。


 ローナを含めスラムの子供達に渡したカプセル錠型のピンバッジは薬害含む状態異常に効果があるアイテムだけど、有害薬物を継続して接種されると意味がないし、スラムの子供達全員に行き渡らせるだけでも一苦労に違いない。


 食べ物の問題も深刻だ。満足に食べることができないから抵抗力も弱まるし、いざという時モンスターに襲われても抵抗できない。だからゴミのリサイクル事業と同時に毎朝の食事配布も始めたいと思う。どうかなアンサー。


『はい、よろしいかと思います。しかしクラフトによるアイテム製作は加減しなければなりません。いざという時に戦うこともままならなくなりますので。マスターの活動が大きく広がればそれだけこちらを利用しようとする勢力に対抗しなければなりません。LVの向上と共に信頼できる仲間が必要になるでしょう』


 仲間か、それは大事だけどおいおいかな。僕達の秘密を打ち明けられるような良い人がいればいいんだけどね。それはそうと、次クラフトするのはなにがいいかな……


 ひどい現状を見ると気ばかり焦ってしまうけど、まずは足元を固めないとな。脳内でアンサーと話していると、次第に瞼が落ちてきて眠ってしまっていた。




名前:カプセルピンバッジ*

効果:状態異常耐性(小) 免疫力強化(微)

価値: ☆☆

薬害対策、感染症予防用に作られたピンバッジで、付けているだけで効果が発揮される。離脱症状の緩和にも効果がある優れもの。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ