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13 孤児救済計画




 朝だ! 起きた! うおお重い!


 僕は上に乗っているミーナを丁寧にどかしてベッドを出た。それに反応してフェルも歩いてくる。


「おはようお母さん」


「バウ!」


『お早うございます。マスター』


「アンサーもお早う。ふわわわ……」


 すやすや寝ているにゃんこの頭を優しくなでてリビングへ行くと、パイクが調理されていて皿に乗っていた。調理と言っても焼いて塩を振りかけただけだが、香しい焼き魚の匂いが前世の記憶を思い起こさせた。付け合わせはもちろんジャガイモだ。


 昨夜思い出してレイラに頼んでいたのだった。肉と続いて魚ときたら、これはもう貴族じゃないだろうか……って没落したけど一応貴族なんだったか。


「にゃにゃにゃ⁉ お魚の匂いがするにゃー!」


 僕が感慨に浸っていると、寝室からシュババって来たミーナが勢いよく隣に座り、魚をクンカクンカしだした。するとレイラががしっとその頭を掴んだ。


「おい泥棒猫。この家のご主人様を差し置いてなにをしている」


「いにゃー!! あだまが割れるにゃぁぁぁぁぁ! 助けてー!」


 レイラの怪力で五本の指が猫の子の頭に、ものっそい食い込んでいるので慌てて止めた。


 そんなこんなで賑やかな朝食を過ごして今後の予定をみんなに聞いてもらうことにした。


「昨日運良くウィリアム様と知り合いになれたのはでかかったな、思わぬ大金を手に入れることができた。これを使ってかねてから考えていた計画を進めていこうかと思っているんだ」


「と言いますと?」


「うん、リサイクル事業を始めようと思うんだ。現金をゲットできたことだし、周辺の孤児を集めてゴミの回収をしてもらうんだ、それを買い取って僕のスキルでナイスなアイテムを作って売る。我ながら完璧な作戦だ!」


「完璧と言いますか……普通ですね」


「ガウ」


「にゃ~?」


『妥当だと思います』


「う~んノリが悪い!」


「しかしアル様、あの小汚い小僧どもを信用して取引なさるのですか?」


「うん、彼らの現状をすぐに変えるのは不可能だけど、まずは仲良くなるところから始めていきたいんだ」


「アル様が大金を持ちえていることが分かれば良からぬことを考える輩も出て来るのではないのですか?」


「それは心配だけど、ある程度はクラフトスキルで自己防衛するしかないよね。レベルも上がったことだしなんとかなると思う」


「左様でございますか?」


「うん、実はもう作ってあるんだな、じゃじゃ~ん!」


「おぉ~」


名前:シールドバッジ*

効果:衝撃吸収(小) 

価値: ☆☆☆

装備する者のAPを補完して、傷害を受けるのを肩代わりしてくれるピンバッジ。攻撃の際の衝撃もある程度防いでくれる。許容量を超えると壊れる。


「こいつがあれば逃げる時間も稼げるし、囲まれなければ大丈夫だよ。はっはっは!」


 例のごとくレイラに白い目で見られて忠告される。


「私はスラムの貧民らを用いるのは反対です。私に貧すれば鈍すると教えてくださったのはアル様ご自身でございますよ」


 ぐぅ、また痛いところを突いてくる。


 貧すれば鈍する(ひんすればどんする)とは、貧乏になると生活苦に煩わされて物事の判断が鈍ったり犯罪行為に走ったり、誰もがさもしい心を持つことを言っている。だがそれは裏をかえせば環境が整えば誰しもが秩序を守って生活するようになるということだ。


「非行に走る誰しもが望んでそうしているわけじゃない、環境がそうさせている面も多いんだ。それに児童労働の悲惨さは目に余るよ。紳士を自認する僕としては見逃せないね」


 テーブルに手をついてニヒルに笑うと呆れたレイラは家事に戻り、フェルはふて寝を決め込んだ。ミーナはと言うと。


「ねーねーアル骨取って」


「あぁはいはい、あーん」


「あーん……おいち♡」


「はは、そりゃ良かった」


 魚を食べるのは好きだけど自分では骨を取りたくないというミーナの食事介助をしていたらやたらと時間がかかってしまったが、ようやく朝食を終えると、僕はレイラを伴って貧民街へと出かけた。ミーナとフェルはお留守番だ。


 僕が着ているのは布地をクラフト加工したいわゆる布の服なんだけど、レイラが着ているのはパリッとしたメイド服だ。これは謎の技術で管理されており、自動的に修復され汚れも落ちるという優れもので、安定の鑑定不能アイテムだ。うーんロストテクノロジー。


 僕達はスラムの広場へ足を進めると、周囲の視線が突き刺さった。周りにいるのは手押しポンプの周りで洗濯している子供やボケーっと空を見ている子供達がいる。親世代がいないのは工場に働きに出ているからだろう。


 気になるのは虎視眈々とこちらの隙を狙っている子供達よりもボケーと空を見ている子供達だ。普通子供といえばやかましい程にうるさいもんだが、よく見ると不気味なほどに静かだ。


 だがその理由にはおおよその予想がついている。地面に転がっている不審な小瓶の数々がそれの影響を物語っている。

 

 最初は信じがたかったが、こうして向き合うと疑いようのない事実として重くのしかかってくる。


 そう、これこそは前世の世界史でも戦争の発端ともなり国を滅ぼした原因となった悪魔の薬。


 アヘンだ。




阿片(アヘン)

 ケシの未熟な果実から取れる乳液を乾燥させたもので、麻薬の一種です。

 アヘンは、ケシから採取した液汁を凝固させたもので、黒褐色で特殊な臭気と苦みがあり、日本では「あへん法」により規制されており、医師による処方の他は違法です。

  アヘンの乱用は、精神的、身体的依存性を生じやすく、常用するようになると慢性中毒症状を起こし、脱力感、倦怠感を感じるようになり、やがては精神錯乱を伴う衰弱状態に至ります。使用を止めても強い離脱症状を起きるため、治療を困難にさせています。

 アヘンは古代ギリシャから鎮痛剤として使われていましたが、モルヒネなどの強い依存性がある成分が含まれており、使いすぎると禁断症状を引き起こす可能性があります。

 アヘン戦争は、1840年から1842年にかけて清(現在の中国)とイギリスとの間で行われた戦争です。

 イギリスはアヘンの密輸販売で大儲けしていたが、清はアヘンの使用を禁止していました。この戦争はアヘンの輸出入を巡る問題が原因で勃発し、イギリスが勝利を収めました。アヘンは煙草のように吸入することで口に入れるよりも早く強く効果が現れたので清国では問題となっていました。



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