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夜会への出席

 地上に戻ったアルフォンス殿下は、不機嫌そうに唇をへの字に曲げていた。


「……あの、どうかなさいました?」

「ガヤルドへ戻る事を、どうして勝手に決めた?」

「え? だって、私は元々スティード殿下の暗殺計画を阻止するためにここに来ましたので……それが達成できれば、留まる理由がなくなります。父も心配しますし」


 そう、元々は、夜会での暗殺計画を阻止できたら家に戻るつもりだった。

 二度と戻らない覚悟で家を出て来た訳ではないのだ。


 それに、アイズ殿下に私の居場所が知られている以上、ガヤルドに留まり続けるのも良くない。

 下手をすれば、ガヤルド王族がフリートウッド公爵令嬢を誘拐したと言いがかりをつけて戦争を起こしかねないからだ。


 私自身が戦争のきっかけになってしまうなんて、絶対にあってはならない。


「それに、テスタロッサへ戻ってもまた何か情報を得たら知らせますし」


 その言葉に、殿下はぴくりと反応する。


「本当か? 約束だぞ」

「は、はい」


 思った以上の反応に戸惑いつつも頷く。


「ところで、明日の生誕祭当日は、私はまた部屋で待機でしょうか?」


 そうなる可能性が高い事は承知の上で尋ねる。

 本音を言えば、私も私なりにスティード殿下の護衛のために動きたい。

 だが、レティア・フリートウッド公爵令嬢というテスタロッサ国民の立場では自由に動けないことも理解している。


 クレマンさんとアルフォンス殿下が、私の前世の話を信じてくれているとしても、今の私がテスタロッサ国民ある事に変わりはなく、何かあった際に疑われる立場である事は事実なのだ。


「……いや、お前には、俺のパートナーとして出席してもらう」


 何かを思案した後、にやり、と笑うアルフォンス殿下。


「は? 招待状もないのに、テスタロッサ国民である私が出席できる訳……」

「素性は明かさない。ステラ・カプリスと名乗って良い。俺の隣にいた方が、何かあった際お前は動きやすいだろう?」


 王子に向かって思い切り失礼な返答をしてしまうくらい、私は驚いていた。

 よもや、アルフォンス殿下が私をパートナーとして夜会に出席すると言い出すとは。


「何かあった際に、私を自由にしておいて大丈夫なんですか?」

「俺はお前が敵だとは思っていないからな。軟禁していたのも、そうでもしないとムルシエラゴの連中に示しがつかないからだ」


 そう言われてふと思う。

 私がアルフォンス殿下のパートナーとして夜会に出席したら、ヴァレリーに殺されてしまうのではないか。

 女の嫉妬は怖い。それはいつの時代も同じだろう。


「……ドレスもないのに殿下の隣に並ぶなんてできません」

「俺を誰だと思っている」


 言うや、彼は私の手を引いて歩き出した。

 戸惑いながらついていくと、とある部屋に入っていく。

 衣裳部屋のようで、中には百を超えるであろうドレスが掛けられていた。


「すごい……!」

「母上のドレスだ。どれでも好きなものを選ぶと良い」

「妃殿下のドレスなんて、恐れ多くて着られませんよ!」


 思わず吠えると、殿下は少しだけ切なそうに微笑んだ。


 そういえば、側妃殿下は少し前に病で亡くなっているはずだ。

 テスタロッサ国内の貴族たちの間でもそれなりに話題に上っていた。


「良いんだ。天国の母上も喜ぶ」


 そこまで言われてしまうと拒否し辛いが、殿下の婚約者でも何でもない私が、殿下の母上のドレスを纏って夜会に出席したら、要らぬ憶測を呼んでとんでもない事になるのは想像に難くない。


「……一つだけ、条件があります」


 私が苦肉の策を提示すると、殿下は苦笑しながら頷いてくれた。

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