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ふ、ふ、ふ、

作者: ぐーたらさん

ふざけやがってぇぇええええ



俺は半ばやけくそに叫んだ。辺りには一般市民もいる街の街道でチケットを握りしめて叫ぶ。


生活費の大半を宝くじに変え、結果無一文になってしまう。


「このボケが!」


俺の頭に茶色のブーツが乗っかり踏みつけられた。パーティ仲間のユサだ。


「あんた!また使い込んだんか!ボケ!その金は私らの生活費も入ってんねんぞ。」


分かってる。だから倍にして、いやこれ以上は言うまい。


「陰謀だ。宝くじに当たりが入ったなかったんだ。」


俺は宝くじにはかなり自信があった。結果外れたもののリスクリターンを考えれば致し方あるまい。


「何言っとんねん。外れとるやろ。そもそもお前は何かにつけて運が悪いくせに宝くじ買っても無理や。」


「違う。何かにつけて運が悪い代わりにこの宝くじに運が収束するんだ。」


「そんなゆうなら当たったことあるんか?」


「ない。だから次は当たる。1等だ。」


有無を言わさずに頭を掴まれ僕は引きずられてパーティのいる酒場に連れていかれた。


「また、ヤンのアホが金使うたぞ。」


ユサが長い赤髪を揺らしてドンとテーブルに僕の顔を打ち付ける。


「なんだ、もう使ったんか?これで記録更新や。1秒あたり5百ゴールド、5分で15万ゴールドか腕を上げとるな。」


リーダーのガルドさんはわっはっはっはと笑いながら酒を飲む。


「あー!もう。この酒代を払う金もないんや。どうすんね。」


「おーい、マスター今日もつけてくれー」


べろんべろんになった短髪で黄色い髪の獣人トルサが寝言まぎれに呟いた。


「おう、それじゃ次のクエスト決めるか。ユサ楽で儲かるやつ取ってきてくれ。」


「そんなもんありません。たく、どうしてみんな危機感ってのがないの。」


「なぁ、次は当たると思うんだ。」


俺がそういうとユサは腹に蹴りを入れて俺が悶絶している間に依頼を受けにギルドへと歩いていった。



「なに!金がないだと。」


酔いが冷めたガルドは先程と違い驚いた末俺を見る。


「陰謀だ。俺じゃないぞ。悪いのは宝くじ屋だ。」


「たく、だから宝くじはやめとけと言っただろう。次は俺も呼べよ。」


ガルドがそういうとユサが剣を引き抜こうと鞘に手をかける。


「ヤン。賭け事はダメだ。今後1月はヤンのお金をユサに預ける。あと、パーティから盗むのもダメだ。」


「ちょっと待ってくれよ。俺は良かれと思って金を取っただけだぞ。倍にして返してやろうとしたんだ。信じてくれ。」


ごぶっ。ユサがさやに入ったまま刀を俺の頭に振り下ろす。


「ギャンブルで返すな。」


「あはははは。私のお金は利子つけて返してね。」


トルサは笑っているが目は怒ってる。今度うまい酒を渡しておくことを心にメモしておく。


「依頼はユーラシア森林に潜むヤングル盗賊の捕縛及び討伐。特にリーダーは注意して逃がさないように。」


聞いたこともないが商人の間では有名なのだろう。大抵盗賊の討伐はその街道を使用する商人たちによって出され、依頼額は難易度よりもやや高めである。商人ってのは金を持ってるもんだ。


「よし、いくぞ!」


俺たちは街の門をくぐり、少し離れたユーラシア森林まで移動する。


道中でゴブリン達と出会ったがガルドが持つ巨大なハンマー一振で飛び散った。


「あー、わたしがやろうと思ったのに。」


ユサは少し不満を漏らしガルドは悪い悪いと次を譲る約束をする。大抵の場合俺がやるのは索敵だ。敵の強さと来る方向を教えればあとは脳筋共がやってくれる。


「おい、この道を進むと近道できるぞ」


俺がそう言うとユサとガルドは何も言わずに街道を進む。


「ハイハイ。聞いてください。近道を発見しました。」


「うるさい。あんたの近道は大抵トラブルがあるのよ。行きたかったらあんた一人で行きなさい。」


ちぇ。俺の勘では近道を通れば半日は休めるのに。


俺たちの行くユーラシア森林を向かおうとすれば街道以外に洞窟と橋を渡る必要がある。山に穴を開けた洞窟と、崖に橋をかけたことで本来かかる時間は短縮されている。


「ちょっと!なんで通れないのよ。」


その洞くつが岩で塞がれている。見てわかる通り落石だろう。


「落ち着けよ。こんな時のために近道を用意している。さぁ、こっちだ! 」


俺がそういい指を指す。指の先は街道の外を示しでこぼことした足場の悪い道だ。


「こう生ったらしかないんじゃない?」


トルサがやれやれとため息をつく。おいおい失礼なやつだな。


「うむ、ヤン案内してくれ」


ユサだけが不機嫌そうに道を見る


俺は先頭にたち森を突き進む。この森はユーラシア森林と繋がっていて、山や川を渡るよりも森を進んだ方が早い。俺のスキル幸運探知に記された。


「えっと確かこの崖は渡れるな。」


「はあぁ。あんた道を通りなさいよ。崖なんて通らなくても迂回すればいいでしょ。」


ユサは気は強いが高所が苦手なところがある。やれやれ、仕方ない。


「じゃあこっちだね。」


俺は崖を迂回して崖に沿って歩くことにする。ユサはこれに関しては崖さえ登らなければそれほどしつこく問いただすことは無い。


「もう帰り道わからなく無い?」


トルサがつぶやく。幸運探知で分かることはユーラシア森林へと繋がる道だけだ。帰り道なんて覚える必要ないだろ。


「そんな心配はいらないよ。」


おれがそういうとガルドとユサはひと安心する。あれ、覚えてないんだけど大丈夫かな?と一瞬気にしたがまぁ大丈夫だろう。


崖を迂回するとその先もやはり森の中だ。


「そろそろ飯にするか」


ガルドがそう言い、道中拾った木の実を出す。ユサは肉を探しに俺を連れていった。


「さてヤン、あんたが1番活躍できる時だ。サッサっと探しな。」


盗賊のスキルはほぼ狩猟みたいなもんだとなめとやがる。よーし。


「ユサ、あそこの湖に鳥が集まってる。」


そくいうやいなやユサは森をかけた。ふふふ。


俺がユサの後を追いかけるとそこには這いつくばったユサがいた。


「あー、その鳥は電気を纏うから水場にいる時は注意しなよ。」


ユサは電気耐性もある程度あるが不意の痺れに足を崩しコケている。


「あんたなんで先に言わなかったの。許さない。」


真っ赤な顔で怒っているが電気で痺れたユサ程度なら逃げられる。俺は拾った小石を何羽かの鳥に投げつけ気絶させる。それを見て鳥たちはバタバタと遠くへ飛び立った。


「な?盗賊って便利だろ?」


俺がガルド達の方に戻る頃には相当な激戦の後になるほど汚れきっていた。ユサに追いかけられ逃げ続けるストレスはやばかった。電気が徐々に抜けていくユサは死のカウントダウンに思え、速攻でガルドの場所まで帰るのに時間がかかったものだ。


ドバシャーと水の塊が降って俺とユサに降り注いだ。


「衛生面的にアウト。雑さは罰の代わりだよ。」


トルサが杖をしまう。俺とユサは水浸しになり焚き火の近くに座る。こんな真夜中に水浸しになると全身がカチカチと震えてくる。ユサも震えてはいるが俺の首に腕をかけ締めてくる。寒いくるしい。ぱちぱちと火の粉が顔にあたり熱くもある三重苦だった。


「やれやれ。ユサもその辺にしてやれ。ヤンも悪いが何も考えずに突っ込んだのも悪い。街に帰ったらヤンはユサに危険な生物を教えとくこと。」


ユサは俺を手荒く解放し、ちっと舌打ちする。


「はぁ…」


ユサに教えるのは子供よりも手がかかる。反抗しない分子供は楽だが、ユサはどうしてかバカにしたなどと殴ってくるから面倒だ。


「ラブス、ヤンクル、マルジェラ何か知ってる名前あったか?」


俺が聞くとユサはなんのことかと聞き返す。ガルドも苦笑いしつつ木の実を貪り、解体した鳥を木の枝に指して肉を焼いた。


「まぁ、いい。明日にはユーラシア森林には着くよ。あと、気をつけなよ。わかってると思うけど盗賊たちはかなり狡猾だ。」


「恐らく橋も壊されてユーラシア森林には罠が散らばってるんだろーね。」


トルサがそう言い焼いた鳥を頬張る。はふはふと口に空気を入れて冷まそうとする。


「次も嘘ついたら雁字搦めに縛って森に捨てたるわ」


はっはっはと俺が笑ってるとユサが弾いた木の実が額にあたる。


俺たちは2時間交代で見張りをつけて眠る。この見張りは正直僕にとっては楽だがユサやガルド索敵が苦手なメンバーは嫌がる。トルサがそれを想って結界魔法を習得し、2人はトルサには強く出ないところがあった。まぁ、彼らも彼ら独自の敵意を察知する能力があって意味わからないけど便利なところもある。



「さてと行くか。」


俺は背伸びして行く先を指さす。半日もすればユーラシア森林に着くはずだ。


「晴れて良かったのだ。」


トルサは機嫌がいい時に特殊な語尾を使う。反対に機嫌の悪い時も語尾が変わる。


「トルサいぇーい」


俺がピースするとにまぁと笑って決めポーズする。トルサは通常時こんなポーズすることがないからレアなもんだ。


「遊んでないでさっさっと歩け」


ユサに睨まれ僕らは進んだ。


「見たところユーラシア森林とこの森は似ている気がするな。魔物や動物の分布も近いし、まぁ森なんてこんなもんだろう。」


ガルドがそう言い大股で歩く。魔物が出てもユサとガルドが一掃し、僕が索敵しなくとも突っ込んでいく。


そうこうしているとユーラシア森林に着いた。


ラシドボールの群が突っ込んできた。これがユーラシア森林の特徴で拳くらいのボールのような魔物が多数生息している。ユサは刀を抜き突っ込むボール全てを切り伏せるがガルドは遅ふりのためにいくらかの衝突を許す。僕とトルサはユサの背後に周り、ガルドの打ち漏らしたボールはトルサの追尾魔法で粉砕した。


「ガルドー訛ってるんじゃないの?」


「ぬぬ。小さい的は苦手じゃ。」


ボールの衝突程度でガルドが怪我をおうことは無い。ガルドの血が見たければガルド自身の攻撃力を上回るくらいの力が必要だ。


「こんなの喧嘩まえるだけで切れるわよ。」


パシパシと切り伏せ続けガルドが14体、ユサが32体討伐した。このボールは倒されると土の栄養になり、この森林を育てる肥料になる。

ユーラシア森林ではこの魔物を60体以上倒せば自然が味方すると言われる幸運のボールでもある。大群で来たのはラッキーだった。


俺はそのボールが地に落ちる前に1つキャッチする。そうそうこのボールは街で売ると肥料として高くなるんだ。


「ヤン…おまえってやつは。」


ガルドがはぁっとため息を着く。森の肥料を盗む悪者として俺たちはこの森で移動することになる。時折木の実や枝が頭の上から降ってくる程度で自然の力なんてそんなもんよ。


「無駄な敵意を買うつもりはなかった。ひとつぐらいいいじゃないか」


俺は森に向かって叫ぶと一斉に木々がザワザワと揺れだした。


「ヤンちょっと離れてくれない?私たちのパーティだと誤解されちゃう」


ニッコリとユサが俺に告げる。嫌だよ。俺らはパーティだろと言う顔をしてみるが、ユサの笑顔は変わらなかった。さっき泥が落ちてきた時に服が汚れたことを気にしていた。


「だめだ。この先にはもう罠が張られている。危険だから俺についてこい。」


まったくパーティってのは大変なもんだ。俺の頭に枝が落ちてくるのと同時にユサの蹴りが入る。


盗賊たちの罠は狡猾だった。一見見えないように隠された罠と見たら分かる罠をごちゃ混ぜにした分、より1層判別しずらい。


「トルサ見落としがあったら教えてくれ。多分ないけどね」


盗賊たちには余程うまい罠師がいるようだが、こっちは金欠で日常が冒険で磨かれたスキルだ。こんな程度余裕で看破してやったぜ。むしろ、罠の量で敵のアジトがより正確にわかる。アジト以外に罠を張る余力はなかったようだ。



この先の洞窟だね。どうやら片道を塞いだのは守りやすくするためのようだ。


俺の幸運察知はどうやらユーラシア森林へと向かう道標でなく洞窟の反対へと向かう道のようだった。その途中でユーラシア森林をニアピンしたようだが、うっかりしてたぜ。


「こんなとこに立てこもるなんて馬鹿じゃないの?」


相手を捕縛するには絶好だ。防衛戦力をこちらの戦力が超えてさえいれば追い詰め安くするだけだ。


「さぁいくぞ!」


俺は仁王立ちになりユサとガルドトルサが突っ込むのを見ている。盗賊の俺は言ってしまえば戦闘能力は少ない。罠や索敵、そういった部類でしか活躍できない。


ユサは真っ先に突っ込み見張りと思わしき盗賊2人を気絶させ、洞窟に突っ込んだ。ガルドとトルサはその後を追いかけ俺は気絶した盗賊たちから金品を漁る。


「ふむ、あまり持ってないな。やはり金庫に向かうのが1番楽だ。」



「雑魚は邪魔よ。あんたが大将ならかかってきなさい」


すでにユサは盗賊の半数を打ち倒し、リーダーと思わしき男と他のやつより強そうな部下の前に立つ。


「こいつは冒険者か。面倒だな。」


盗賊のリーダーは目配せして部下のひとりを奥に向かわせた。


ユサはそんなやつ気にせずリーダーの盗賊にしか興味が出ていない。


「あんたリーダーでしょ。少しは強いんでしょうね」


そう言って地を蹴り盗賊のリーダーに接近する。盗賊のリーダーは

腰からサーベルを抜きユサの剣を受ける。


「ぐおお、」


ユサの力任せの剣の押収に盗賊のリーダーは1歩ずつ後ろに下がる。足場が崩れ体制を崩した盗賊のリーダーに切り伏せようとした時、部下の1人が間に入って剣を防いだ。


「アニキ、ここは任せろ。」


「何こいつ?あんた強いんならさっさっと出てきなさいよ。後ろで引きこもっといてでかい顔すんじゃないよ」


ユサは鍔迫り合いになった剣をジリジリと押し込み始める。


「あんたにはわからんだろうが盗賊にも盗賊のルールがある。」


盗賊のリーダーは後ろへと下がり先程の部下の元に移動していく。


「はっ。盗賊がルール?面白いこと言うじゃない。」


「ルールってのは自由と引き換えに上を生かすことだ。それだけ守れれば悔いはねぇよ。盗賊って胸張って言えるんだ。」



「あっそ。じゃあ死ね」


ユサは剣に剣を当てながらスライドさせ根元へと近づける。その剣を相手の押し出す力に委ねる。相手は空を切るように剣がぶれ委ねると同時に件を引き抜き男の首元へと剣を突き出した。


剣の峰で首を叩き、気絶させる。



「あんたも所詮雑魚よ」


ユサは盗賊のリーダーを走って追いかける。


リーダーへと向かうとそこには洞窟の奥がなく穴があるだけだった。どう見てもリーダーはそこから逃げている。


「あーーー!」


ユサは苛立って地団駄をふむ。逃がしたことよりも、奥にはユサの期待した戦力が無かったことにイラついた。


睨んだ穴からひょこっと顔が出る。思わず刀に手がかかるが殺意がないことで紙一重でとどめた。


「あー、疲れたぁ。」


気づくと俺の頭の上に刀が乗っている。目の前にはユサがいて状況はある程度わかってる。


「この下に盗賊のリーダーと配下共々捕縛しといたから後で引張といて。」


盗賊の服を来て敵に潜入し、陽動役が暴れている間に逃走経路をたっておいた。真横を歩いていたがあどうやらユサは俺に気づかなかったようだ。


「あーあ、面白くなかったし手柄は取られるし最悪や」


ガルドとトルサも残党をある程度捕まえ、縄で縛り上げている。


「ちょうど抜け道もある事だ。ラッキーだったな。これなら半日歩けば帰れる」


俺たちは盗賊を捕まえ縄で1列に縛り列にして帰る。道中で仲間の盗賊に襲われることも無く安全に帰ることが出来た。


ギルドからの報奨金は50万ゴールドになった。


俺の金は全てユサに握られ散々である。


「なぁユサ?後で返すから」


ぷいと横をむいた。なんだよ。


「諦めろ。今日のところは俺が奢ってやるからギャンブルは中止だ。」


ガルドが奢るというので我慢することにする。常々思うがガルドがリーダーでよかった。俺たちは酒場に集まり、食事を共にしたあと解散した。ユサがこれといった依頼を見つけられずひとまず休息になる。


俺は個人商店として宝箱の解除をすることにした。冒険者ギルドの入口の横で盗賊職のスキルを推し売った。材料さえあれば罠だって作ってやる。半日で客はほどほど集まり4千ゴールド程儲けた。


「ねぇ、これ治せる?」


綺麗な服を着た少女が何やら不思議な道具を出した。手の平ほどに四角い鉄の塊が置かれ、よく見るとその中には配線が無数に結ばれている。


「なんだこれ?」


俺は少女に聞くとわかんないと答えが返ってくる。分からないものを治すのか…。面倒くさいな。だが少女の目は真剣で何もせず断るのは気まずい気分になる。


「よし、見てやるよ。」


俺の答えにパァっと笑顔になる。まだ治せるとは言ってないがもう根性で治してやろうと思った。メインボードにパルス信号を直接繋いでいるのか。だが、こいつは暗号化されても複合回路に通ってねぇな。


配線を繋ぎ直していると、バチパチと鉄の塊が光ることがある。正直スキルがなければ全く分からないが幸運探知によってある程度勘で動けた。


ピっと音がなり機械が青く発光した。


「ありがとー!」


光ることで治ったのだと思い手に握られた硬貨を渡される。まぁ、子供のことだからお菓子程度だと思って見てみると硬貨ではなくダイヤの宝石だった。


「これは、ひょっとすると面倒事になるかもしれないな。」


店をたたみガルドに伝えることにする。


「わっはっはっ。そりゃ考えすぎだ。お前さんは壊したわけでなく治したのだろう。感謝されこそすれ恨まれることなどないわ。」


それもそうだな。俺はそう思い、ギルドを出て宿屋で寝た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の日に冒険者たちに緊急依頼が張り出された。ギルドは時に冒険者たちに街の治安を守るため強制的に依頼を受けさせることもある。受けなければ冒険者の資格剥奪や厳しいペナルティが課せられる。それが緊急依頼だ。


「なんだ?」


緊急依頼の内容は拍子抜けで馬車の護衛だ。その護衛に街の治安を守る何かがあるのだろう。魔物よりも厄介さで言えば上だ。これじゃあ覚悟も用意も定まらねぇ。


「何よ!緊急依頼だと思ってきてみたら護衛だァ?」


ユサは当たり前のようにギルド職員に文句を言っている。ここの奴らもユサの凶暴性を知っており、半ば無関心を決め込んでいるがユサの発言は皆の内心に近かった。



「馬車の護衛には選りすぐりの冒険者に任せられます。特にユサさんやガルドさんのパーティには要請が入っています。」


ランクが高いことが嫌な意味で発揮された。護衛に抜擢されたのは俺らのパーティとこの街のギルドで最もランクの高い夜叉姫のパーティだ。2番目と3番目は別の依頼で抜けていて5番目のパーティに関しては俺たちと力が開きすぎている。1~4番目の実力はほぼ変わらないと思っているが、その差は単純なギルドポイントだ。僕達は加算もあるがユサや俺の違反行為による減点も多い。ちなみに昨日ギルドの目の前で商売してたことも減点された。


夜叉姫が俺たち、特にユサの前に立つ。


「これじゃあ勝負にもならないし、1戦やっとく?」


にっこりと笑いユサに伝える姿は恐ろしかった。


「いかん。いかんぞ。カグラ」


後ろからとてとてと小さい老人が歩いてくる。彼はかぐらの付き添い人であるドワーフだ。


「じぃ、うるさい。」


「かぐら1戦やってもいいし、やりたいけどやめとく。今回はうちの馬鹿が関わってるみたいだし、依頼が終わったら頼むわ」


「そう、またヤンの厄介事ね。」


おいおい俺を貶していいのは俺だけだ。もっと優しくしねぇと死んじゃうぞ?


「ようガルド。また強くなったのか?」


夜叉姫の騎士役であるガルティムが尋ねる。


「うむ、以前の3割増じゃ。そっちはどうだ?」


「同じく3割り増しだ。」


この3割は力の強さかとかじゃなく酒飲みの強さだ。2人は互いに拳を合わせ挨拶する。


「ヤンじゃん。元気だった?」


エルフでありながらアーチャーを選ばず盗賊になったユテがひょっこり顔を出す。昔は俺の方が盗賊が上手く金をとって教えていたのだが今じゃなかなかその機会もない。


「よぉ。ユテ金貸してくれ。」


「ハイハイ、」


俺の頼みに無邪気に答えるところは変わってない。夜叉姫の仲間が慌てて止めて俺を睨む。悪いのは盗賊のいろはを俺に教えさせたことだ。今となってはアーチャーと盗賊、魔術師と3つの職業を扱えるオールラウンダーだ。それ故に夜叉姫のパーティはじぃという戦闘能力の低いドワーフを装備の強化のため加入させた。つまり、下手に弱い味方よりも各々のレベルを上げることを優先している。ドワーフのじぃは罠のグレードを上げるし、野営をする時には木材やその辺の材料で鍋やテントを作り出し非常に便利であった。俺らも可能ならドワーフが欲しい。


ギルドの長であるおやっさんがごほんと咳払いして皆の注目を集める。


「集まったか。お前たちには素性は言えぬがあるお方の護衛をしてもらう。場所はここからノール帝国まで馬車を使ってもらう。」



それほど遠くはないな。歩いてここから3日程度かかる。護衛となると野営も必要だし、馬車を休息させる必要もある。せいぜい4,5日程度だろう。


「おやっさん。報酬は?」


俺を見て溜息をつき、1人あたり50万ゴールド。危険を回避すれば護衛対象者から褒美もあると伝えられた。


これはでかい。少女からのダイヤは売れば100万ゴールド程で今はまだ価値が低い。高騰して倍以上で売ってやろう。ほかのメンバーもその金額を見ていつも金欠の俺たちは歓声を上げた。夜叉姫のパーティはそれほど取り乱さないのは日頃の行いゆえだろう。



他の冒険者たちはここから護衛対象者を呼ぶらしく帰らされた。ギルドの密談用の部屋のドアが開く。


「あ、おにぃちゃんだ」


ああ、やっぱりそうか。出てきたのは白い短髪の少女だった。そうですよね。やっぱり僕が引いたジョーカーでした。でも俺は悪くないよ。、


「おう、元気だったか?」


スパンと頭がはたかれる。おやっさんだ。


「この方は次期ノール帝国の皇妃様だ。一切の不敬は万死に値するから気をつけろ。」


なんだ、お姫様だったのか。


「うぃっす。」


ユサが手を挙げて挨拶する。それに関してはおやっさんは注意しない。そうだね、あれは自然災害と似てるから無視でいいだろう。


姫も真似してうぃっすと返しているが悪夢に違いない。ユサと姫が仲良くなることに一利あっても百害だった。


「姫様。どうかこの身を捨て石にする覚悟で私を使ってください」


さすが腐っても騎士の職業を得ている。その態度は様になっているし、酒飲みのぐーたら男には見えない。


「うむ、その覚悟是として受け取ろう。」


え?姫様がニコッと差し出された手を掴む。子供と言えどさすが王族だ。もしかしてその無邪気な態度は俺たちに合わしているのかとさえ思えてしまうが、どちらも素で行ってるように見えた。


「えへへ、よろしくね」


姫の名前は非公開だ。故に彼女を姫と敬称で呼ぶことになった。俺たちは準備を終え出発する。


「堂々と出よう。なんせギルド長のサインがあるんだ。どこの街でも村でも入れてくれるわ」


ガルドが笑い馬車を動かす。ガルド以外は支給された馬に乗り馬に乗れないおれとユサとかぐらは歩くことになった。


「ヤン!遅い。さっさっと歩く!」


「ユテ後ろに乗せてくれ」


「いいですよ」


さすがのユテも少々困惑気味だ。


「いや、いいよ。よし、お前ら!俺は敵の意表をつくために隠れて警護する。俺のことは気にするな。」


「ヤン?あんたもし逃げたりしたら預かってるお金没収だからね。」


「もちろんだ。俺は嘘はつかねぇ。」


俺はユテに断り姫の馬車に乗り移る。呆然とそれを見ているパーティメンバー達は黙ったままだ。


「あ、おにぃちゃん!」


「やぁ。俺は馬車の中で直接警護することにするよ。指1本傷付けやしないから任せてくれ」


サムズアップしていると馬車の外からユサたちの声が聞こえた。


「あいつあんたらのパーティにやるからお金くれない?」


「いえ、私たちが貰ってあげるのでしたら月に100万ゴールド支払ってもらうつもりです。」


うーん、聞かなかったことにしよう。だいたいユサとかぐらが以上な身体能力を見せるからこうなったんだ。


馬車の中は快適だ。揺れが抑えられ外の景色は見えないが歩かずに座れるだけで良かった。


「これ治してくれてありがとう」


少女はあの四角い鉄を取りだした。


「しかし、これはなんですか?」


俺が少女に尋ねる。四角い箱は見ただけじゃただの鉄の塊だ。触ったからわかるがその箱の中身は相当複雑な仕掛けが施されその威力も効果もはなはだわかったものじゃない。


「これは王家の鍵なのです。ノール帝国には代々受け継がれている遺品があり、その封印を解くものです。私はこれを小さい頃から持たされる代わりに守り抜くことで王位継承権を得ます。まぁ、もっとも狙われたことなど1度もありません。」


姫も大変なんだなと思う。狙われたことがないからと言って何故1人でいたのだろう。護衛も俺ら以外には誰もいない。まぁ、いいか。首を突っ込むのは面倒だ。


その鍵とやらを大事そうに持って馬車にちょこんと座っているのを見ながら外の様子を伺う。感覚では敵はいないように見えたが、さすがに緊急依頼だ。少し本気を出して一時的に広範囲を索敵すると索敵の範囲外から伺っていることに気づく。


馬車をコンコンと叩きユサ達に伝える。独特なリズムでサインを決めているから俺たちのメンバーは理解し、俺の教えを受けたユテも気づいた。


「姫様ちょっと馬車が揺れるかもしれません。この先の道はでこぼこと街道が乱れております。」


コクっと姫は頷く。なるべく平穏を装ったのだがそれを察したのだろうか。だが、実際それほど心配することではない。敵も索敵にバレた以上撤退を選ぶのが常だが往々にして悪党というのは獲物を前に逃げることを嫌う。


外の気配では敵は既に接近し馬車を取り囲んでいる。ユサと

かぐらが別方向に突っ込み敵を一掃していき、馬車を狙う賊にはガルドとガルティムがその巨大なハンマーと白銀の剣で迎撃した。


特に強い敵も隠れていない。ふぅと息をつき背もたれに体をあずけると姫もほっとため息を着く。人の機微に敏感なのは疲れるだろう。そうでもしなくては王族などは務まらないのだろうか。


子供に悟られる程度のポーカースキルのレベルの低さに落ち込んだ。これでも盗賊だ。こういった小細工はユトの方が上手いのかもしれない。


襲ってきた賊は追いつけないように痛めつけ、放置した。今は賊を連行する余裕がなかった。


馬車はまた走り出し、やがて日が暮れたので狙われている現状夜の行軍は危険だ。このペースで行けば2日もすればたどり着くだろう。俺たちは1時歩を休め野宿することにした。


ユサがストレッチを始めながら呟いた。


「はぁ、襲撃が1回だなんて少ないわね。それに王族を狙うにしては弱すぎる。尋問するにも命令を受けた下っ端だけ。つまりこれは宣戦布告の捨て駒よ。」


「そうね。私もそう思うわ。明日か明後日が楽しい祭りになりそうね」


ユトはうんうんと頷き剣を触る。この2人が熱中し出すとどこまでも敵を追いかけるから困る。その時の状態は鬼神を上回ると思えるほど神がかる。2人が争うと毎度死にかけるからやめて欲しい。



「まぁ、俺に任しとけ。索敵だけならユトもいるし心配すんな」


「当たり前だ。あんたがミスったらそのダイヤも没収よ。」


ユトがあわあわとおれとゆさをみる。


ふと風が強く吹き抜けた。その風は爽やかとは程遠い死の臭いを運ぶ。強烈な殺意が場を埋めつくし、コウモリたちが何匹も集まって空に浮かぶ。


「敵だ。」


「ヤン!あんたサボったわね」


なぜ見落とした。これほどの殺意を持つ相手ならここまで結婚する前に必ず気づけた。


「人の前に姿を現すのは久しいな。我は吸血鬼の王ヘドルカ。汝らの中に鍵を持つものがおると聞いてここまで参った。差し出せば命は見逃すが?」


当たり前のように差し出すことが当然だと手を差し伸べる。その態度は2人の鬼をイラつけるだろう。俺が見るまでもなくユサが吸血鬼に飛びかかる。地面を蹴り空を蹴り20mはある吸血鬼に接近する。かぐらもその後を追いかけて空を飛ぶ。


「なっ?!」


来るはずもない人間が空を飛ぶことに驚く。吸血鬼はマントを翻し闇と同化した。ユサの剣が闇を切り裂いてもそこには何も無く、俺の索敵には少し離れたところに吸血鬼がいるのを確認した。


なるほど、テレポートか。ならば俺が気づかないのも道理である。


「小童どもめが。」


ユサとかぐらの背後を取り吸血鬼は真っ赤な魔法陣を作り出す。魔法陣から黒い木の枝が伸びぐにゃりと曲がり2人を捉えようとする。あれが魔族特有の魔法か。初めて見るなぁと思いながら2人が枝を切り刻みその枝を踏みつけて吸血鬼に接近する。吸血鬼は2人の剣で切り刻まれ真っ赤な血を噴出した。


「無駄じゃ」


血が集まり球体となり弾けると吸血鬼が無傷で存在する。服も元通り治り、時間が巻きもどるかのような再生力。やはり弱点を突くのが必須条件かと俺が思ってると2人はまたも吸血鬼に突進する。あー、これは飽きるまで斬り続けることになりそうだ。



「おい!無駄だ。」


「やめろ。」


「わかった。一旦落ち着こう。我は交渉に来たのだ。」


無理だ。スイッチの入った2人を止めることなどできない。それから1時間ほど切り刻まれ3人が地に落ちてくる



「おつかれ。どうだった?」


俺が聞くと2人は満足そうに微笑んだ。いい発散かできたようだ。しばらくは冷静なままだろうと俺たちは内心喜んだ。


「なんじゃこのもの達は。全く近頃の人間は常識がなっておらん。」


横になって地面を叩く吸血鬼は王には見えなかった。


「吸血鬼よ何の用でここに来た?」


ガルドがそう聞くと吸血鬼は咳払いして答える。


「お主らがノール帝国の鍵をもっといると聞いて面白そうじゃから奪おうとな。いや、命をとるつもりはなかったのじゃ。最初に言ったのは雰囲気っくりの為。私は攻撃魔法を持っておらなくて生存能力に全振りなのじゃ。じゃから他の吸血鬼たちより3倍は長生きしておる。」



「つまり、どれだけ滅せられても死なず大した害もないから見逃されていたら王になったと。嘆かわしいものだ。」


ガルティムがそう告げると吸血鬼はションポリする。まぁ、この姿を見て悪意があるようには見えない。まぁ、許してやるか…


「鍵は渡せません。この鍵は私が父から貰った大事な贈り物です。」


少女は先程の殺意を飲み込み吸血鬼の前に立つ。その姿は怯えなどなく胸を張り、真っ直ぐに見つめる。



「あ、そうなの。じゃあいいや。我も無理やり撮るつもりはなかったと言ったじゃろ。怯えて差し出すぐらいなら貰おうと思うが…」


サヤとかぐらに睨まれ縮こまる。これが王か。まだ少女の方がマシだなと思える。



「しかし、1度は脅迫した魔物をこのまま野放しにするのはどうだろうか。こやつは力もないのなら旅が終わるまで協力してもらう会う。」


ガルティムがそういい吸血鬼の頭を掴む。


「なぬ?我が人間に手を貸すじゃと。よかろう。」


「え?」


何言ってんだ?こいつ。


「我は元よりどちら側でもない自由な派閥を自負している。人間に味方するのもこれが最初ではないから気にするでない。」


まぁ、いいか。協力すると言ってるのだからしてもらおう。


「じゃが!報酬として血を分けてくれ。飲まずとも生きることが出来るがちと苦しい。血は倒した賊から頂くからの」


それぐらい問題ない。むしろ、下手にいたぶるより血を吸って貰う方が楽だ。


俺たちはとりあえず吸血鬼を仲間に迎え、食事をすることにした。その晩は賊に襲われることもなく眠ることが出きた。



「ぐわあぁぁ。」


同等な叫び声と共にはね起きた。なんだ?敵襲かと想い声の方を向くと吸血鬼が太陽にあぶされ苦しんでいた。とりあえず太陽を遮って影を作ってやる。吸血鬼は馬車の中に潜り込み、ゼェゼェと息を吐く。



「よく生きてこれたな…」


太陽が弱点など人間でも知ってるのに当の本人が馬鹿だった。


「つい、忘れておった。じゃが安心せよ。吸血鬼は太陽に焼かれる分再生力も増えるのじゃ。我の不死身はこういうトラブルあってこそじゃ。」


へぇー。でも大抵の吸血鬼は太陽に少し触れるだけで死ぬと聞くがこいつの話はどこまでが本当か分からない。


「さてと、我は日中は外に出ることは出来ぬ。賊をを倒したならここまで連れてきてくれ。」


却下だ。姫もいるのに連れてくるわけねーだろ。俺は無視することにして馬車の座席に乗る。


行軍を再開し賊よりも魔物が何度か襲ってきたがすぐにかき消された。


「」

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