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星霜のイヴ ~希望の詩と絶望の永遠~  作者: 二神 秀
CHAPTER.3 イヴ・ヨッドギメル A計画完了報告
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§ 3―6 調査艦ホルス



 これが調査艦ホルスか。おれが見てきたどの宇宙船よりも大きい。色は白く、流線型のフォルムをしており、艦の真ん中を中心とする円環えんかんがある。マチルダが言っていたように、プラズマエンジンが8基と、その両側にデトネーションエンジンが2基ずつ計4基搭載されている。


 マチルダが言ってたよりも速く、3週間で木星周辺宙域に着くらしい。後は、なんとか衛星イオに行くための小型船を奪取だっしゅできるかが問題だ。木星に着くまでに、情報を集め、突破口を開くしかないな。決意を新たに、マチルダとメルと一緒に艦に乗り込む。



 艦内での仕事の内容は、艦の点検がメインで、トラブルが起きればそれをチェック・修理する。同じような整備士は20人ほど乗り込んでおり、それぞれ個室が与えられていた。


 仕事をしていて、すぐにマチルダの仕事ぶりには驚かされた。手際よく点検を済ませていく手腕は、若くしてルナテックの整備チーフを任されるのにふさわしく、メルも淡々と作業にあたる。いつか、ルナテックの輸送船で、また仕事が一緒にできればと思わずにはいられなかった。


 途中、プラズマエンジンの1基にトラブルを示す警告音が鳴ったが、接続不良部位をマチルダが一早く探し当て、事なきを得た。マチルダの仕事ぶりを整備士全員が認めざるを得なくなっていた。




   ♦   ♦   ♦   ♦




 出発して20日後。就業時間を終え、待機時間になったので部屋に戻ってくると、ドアに手紙が挟まっていた。マリアからだった。時間が合うなら話でもしよう、という内容だったので、DVR端末からメッセージを送り、次の日に彼女の部屋で会うことになった。



 次の日、彼女のもとを訪れ、招かれた彼女の部屋に入ると、一匹の黒猫がいた。青い首輪にはニャルと名前が書かれている。

 昔、彼女が野良猫にパンをちぎって与え、頭をでているシーンを思い出す。


 そんなことを思い出していると、椅子に座っていたマリアが話し出す。


「こんにちは。アダム」


「あぁ。こんにちは、マリア」


 ぎこちなく挨拶を交わす。座るようにうながされて、ベッドに腰を掛ける。


 いざ話すとなっても気恥ずかしく、話題に困っていると、マリアから話しかけてきた。


「そっちの仕事はどう? 順調?」


「あぁ。大きなトラブルもなく、艦は順調に動いてるよ」


「そうみたいね。順調に進んでるって言ってたわ」


 疑問に思っていたことを聞いてみる。


「マリアはこの艦で、何をしてるんだい?」


「あぁ、言ってなかったわね。私はロボットの開発担当なの」


「ロボット? そんなもの、木星調査に関係あるのかい」


「んー、わからないけど、到着するまでには仕上げてほしい、て言われてて……」


「ロボットかぁ……。昔、一緒に作ったよな」


「ハイスクール時代ね。なんて名前だったかしら」


「『ジャスティス3号』だよ」


「そうそう。センスのない名前だったわ」


 彼女は思い出してクスクス笑っている。ちょっと笑った顔がメルに似ているな、と思った。


「あのときは楽しかったな……。好きなことを好きなだけできた……」


「今でもロボットを開発してるのだろ?」


「そうね……。でも、私が思っていたものじゃないわ」


「そういえば、昔は、もっと人の役に立てるロボットを作りたいって言ってたよな」


「そう……ね」


 彼女は視線を落とし、はかなげな顔をしていた。


「あなたはこの船に乗って、何をしようとしているの?」


 唐突とうとつな質問だった。彼女が何を意図して、そのようなことを言っているのか判断に迷った。


「どういうことだい? マリア」


「いえ、なんでもないわ。忘れてちょうだい」


 そう言うと、マリアは立ち上がり、机の引き出しから取り出した、キーカードを渡してきた。


「これは?」


「責任者用のパスカードよ。これを使えば、脱出用の小型船を起動させられるはずよ」


「どうしてこれをおれに?」


「なにかあったら、すぐにこれを使って、この艦から脱出して」


「マリア。何が起こるというんだ。マリア!」


「用はこれで終わり。もう帰って……」


 マリアは強い語気で言い放った。手も足も小刻みに震えている。これ以上、何を聞いても無駄であることが解かる。ここに居ても気まずいだけだろう。


「マリア……。きみに会えてよかったよ」


「私はあなたに会えないほうがよかった……」


「……そうか」


 去り際に、「ありがとう」とつぶやき部屋を出た。しかし、マリアは何を知っているんだ。もしかして、おれたちの目的を知っているのではないか?


 この艦に乗って、もう狙われることはないと思っていたが、今一度、緊張の糸を張り詰める。



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